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STEP!!  作者: 海原羅絃
第四章 テレビ出演でSTEP!!
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第六話 「とにもかくにも、お互い頑張りましょう」

 燐と燿平が立ち去ってから数分後。

 「いやいや。待たせて悪かったね」

 「いえ、こちらこそ、わざわざこんなところまでお越しいただいてありがとございます」

 「何、前回こそそちらからお越しいただいたのだから、当然のことでしょう」

 高梨誠の隣に座ったのは、彼と同じくらいの年ごろの男性。

 スーツに身を包ませ、どことなく紳士的なにおいを漂わせる男性。

 「それで、そちらのほうはメンツが決まりましたか?」

 「ある程度は決まったのですが、まだ一人固定したい人物がいるんですがね……」

 「星野輝夜……かね?」

 「ああ。ついさっき本人と話したのだが、聞いた感じまだ決意は固まっていないそうなんだ。そちらは?」

 「こっちは既にメンバーは決まっている」

 「そちらはイケメンアイドルが揃っていますからね。こっちなんて、事務所には女性しかいないので、ほぼ素人集団なんですよ」

 「それはそれは。まあ、うちも実際ステージに出すのはほんの一部であとは一般募集ですから」

 高梨と男が話している中、いつ頼まれたのか分からないコーヒーが運び出された。男は何の躊躇もなく、口にした。

 この男、芸能事務所『スターライトドリーム』の所長、引木恭弥である。

 『スターライトドリーム』はいうなれば、ジャニーズのような男性アイドルグループのようなもの。女性アイドル芸能事務所の代表が『ティーンズ』であるならば、男性アイドルグループの代表格は『スターライトドリーム』というべきだろう。

 何故、この二つの事務所の代表者が集っているのか。それには近々行われる『女装コンテスト』のためである。

 「最近はドラマ出演する方も増えていますね」

 「いえいえ。そちらに比べればうちはまだまだです」

 「いろいろ大変なこともある中、頑張っていると思いますよ」

 「それはそれは……」

 応援されているのか、それともまるで自分らの失態を待ちわびているのか、高梨にとっては複雑な心境であった。

 こちらはこちらで『女装コンテスト』というイベントで勝たなければならないし、そちらもそちらで事情があるのだろうが、勝たなければならないのかもしれない。

 「とにもかくにも、お互い頑張りましょう」

 「そうですね」

 

□ □ □




 「へえ、所長にあったんだ」

 「ああ、ばったりだけれどな」

 「それで、例の話をしてきたの?」

 「まあ、話すことと言ったらそれしかないからな」

 帰宅した俺は、早々姉ちゃんに今日のことを話した。

 今日の話だけで俺の決意は固まったとはいいがたいが、ある程度の考えはまとめることができたと思っている。

 「所長はあんたに出てほしいから頼んだからね。ごり押しされなかっただけでもましなんじゃない?」

 「ごり推しされるのか?」

 「するわよ。所長は目に留まった子はよほどのことがない限り、ずっと口説き通すんだから」

 「じゃあ、母さんもそうだったのかな」

 「うーん。母さんは違うんじゃないのかな? なんか昔はかなりのヘタレだったらしいわよ」

 誰情報だよ。

 とにかく、そろそろ俺は『女装コンテスト』への参加を決意しなければならん。いつまでも先延ばしなんかしてもらえない。……もともと先延ばしなんてしないのだが、参加するしないにしても、早めに連絡は寄越したほうがいいだろう。

 「私は何度も言っているけれど、最終的に決めるのはあんただからね。まあ、参加したほうがそれはそれでいい思い出だと思うけれどね」

 「思い出作りに行くとは思わないのだが……」

 ん? そういえば一つ気になっていることが……

 「所長にしても、桐原にしても、なんで俺をそこまでしてテレビ番組の『女装コンテスト』に参加させたいんだ?」

 「うーん……なんでだろう?」

 「……」

 なんかうまいことはぐらかされたような気がする。絶対なんか裏があるだろ

 そもそも、あの二人は俺が星野輝夜だっていうことを知っている。それを見据えているのかはわからないが、業界宣伝にでも使いたいのだろうか。

 いまいち、この企画が何のためにあるのか俺には理解できない。

 いや、俺だけじゃないかもしれない。姉ちゃんだって、燐だって雨宮だってこの企画は何を目的にして立案されたのか、本当の意味を知らないと思う。独断の偏見だとは思うが、おれはその部分がどうしても引っかかるのだ。

 「私だって所長が何を考えているのかはわからないけれど、出てみる価値は十分にあるんじゃないの?」

 「その根拠はなんだよ」

 「だから思い出作り」

 「思い出作りで女装してみようという気にはならないよ」

 「でも、ほかの事務所から女装したいっていう人は結構いるらしいわよ?」

 「ギャラが出るから出場するんだろ?」

 「そこらへんはお姉ちゃん分からなーい」

 貴様芸能人だろうが。

 ……とにかく、そろそろ決めないとな。

 俺はそんな思い悩んでいた時だった。

 インターホンが鳴った。こんな時間にだれだ? なんていうかよ。あいつしかいない。

 「あ、燐じゃない。こんな時間にどうしたの?」

 来訪者は燐だ。……いつのまに居間にきた。

 「燿平君、ちょっと話あるんだけれどいいかしら?」

 「え、別にいいけれど」

 「大した話ではないんだけれど、さっき事務所から電話来たのよ。そしたら、燿平君に是非テレビ局内を案内したいのよ」

 「は?」

 なんだその話。テレビ局内を案内って……

 「どんだけ俺をその気にさせたいんだよ……」

 「私もそこまでやるのって思うんだけれど、せっかくいい機会なんだから行ってみない?」

 「そうよ。テレビ局内なんてそうそうはいれるところじゃないんだよ? 今のうちに行っておきなって」

 「いや、俺何回もテレビ局行っているからいいよ」

 「せっかくなんだから行きなって!! 所長からの誘いなんだよ? 絶対燿君驚くって!!」

 驚くって何にだよ。テレビ局を案内されたところで、俺が番組に出るとは限らないだろうに。

 「それと、燿平君と話したい人がいるって所長が言っていたわよ」

 「誰だよ、それ」

 「いや、私も名前は聞いていないのよ。ただ所長がそういっていただけ」

 俺に話したい人って……そこまで芸能界に流通しているわけじゃないし、まったく目星がつかない。

 「……いったほうがいいのか?」

 「私は知らなーい」

 事務所に所属している人間だろ。

 続いて燐のほうを見る。

 「私は言ったほうがいいと思うわよ。決めるのは燿平君だけれど」

 ……。最近同じ言葉を聞いている気がする。

 にしても、俺と話したい人って誰なんだよ。

 「じゃあ、決まりね。で、いつ局のほうへ行くの?」

 「来週の土曜日です」

 「その日は私も燐も仕事入っていないからいいわね」

 「いや、もう行くっていうのは決定ですか? 俺の意思はどこへ?」

 「いいじゃないの。それくらい。どうせ燿平だって暇でしょ?」

 「……」

 何も言い返せねえや。

 ここまで来たら、行くしかないのか。

 文化祭が終わっても、俺の非日常な生活は終わらないのか……とほほ。

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