表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
STEP!!  作者: 海原羅絃
第三章 文化祭でSTEP!!
31/40

第十話 「オムライス三つお願いします!!」

 「これ……まじかよ」

 「まじよ。燿平君にはこれを着てもらうわよ」

 「似合うかどうかは分かりませんが……」

 いやいや。

 屋上に堂々と掲げられた、一つの衣装。

 校内は文化祭熱で帯びている中、一人冷め切ってている俺。

 目の前に掲げられた衣装は……なんと、昔俺が着たことのあるものだった。

 「どこから持って来たんだよ」

 「買ったのよ。わざわざ原宿のほうで」

 「この前俺んちで広げていた服は?」

 「あの服ですと、燿平さんとのイメージがいまいち合わないのです。耀里さんに聞いてみたら、この服になったのです」

 それでわざわざ原宿まで、同じ服を買いに行ったわけか。

 それにしても……

 「本当にこれを着るの?」

 「それ以外、選択肢はある?」

 ないですね。すいません。

 にしても、よく同じような服あったな。サイズが違うし何年も前のデザインだから、売っているだけで凄い。

 「というわけだから、試着して」

 「……え?」

 「試着してください」

 「……はい?」

 訳わからん。

 この二人は何を言っているのかな? 試着? え?

 「今すぐこの衣装を試着して。今すぐ」

 ハードル高っ……

 今すぐかよ。

 「べ、別に試着する必要はないんじゃないかな? 当日のお楽しみっていうことで」

 「今すぐ着て」

 「見てみたいですわ。燿平さんの女装姿」

 待て待てお前ら。今すぐ女装しろと言われても、化粧していないし、女装って言わないし、ただの試着か女装かはっきりしろよな。

 「いいじゃない。楽しみが減っても」

 「いや、そういう問題じゃなくてだな」

 どこまで俺にこの衣装を着させたいんだよ。

 こうしている間にも、二人は目をキラキラさせているし、するにしたってこんな屋上でできるわけがない。

 かといって、場所を変えてもする気はないんだが。

 「試着だけでもダメ?」

 「無理」

 「かつらはないんだよ?」

 「あったらつける予定だったのかよ」

 「メイク道具もありませんわよ」

 「同じ質問には答えないぞ?」

 「……」

 「……」

 「なら仕方ないわね」

 そうしてくれ。

 こんなところで女装なんてしたら、男としてのプライドが廃れる。

 それだけは回避したいところだ。

 「そろそろ戻りましょうか? 私、お腹がすきましたわ」

 「私も。ちょっとどこかで買っていこうかしら」

 「え? お前ら何も食っていないの?」

 てっきり昼飯なんて済ませていると思っていた。

 「そんなわけないわよ。さっき帰ってきたばっかりなのだから」

 「帰ってきた?」

 どこから?

 「原宿よ」

 「あ……ああ」

 なるほど。

 どうりで皺ひとつ付いていないわけだ。

 「仕方ねえな。腹減っただろ? 俺が何か作ってやるよ」

 そうだよな。

 こいつらだって、苦労しているんだから。

 俺だってそれをサポートするくらいじゃなければ、ダメなんだ。

 俺がやらなければ、こいつらの努力は水の泡になる。

 それだけは、絶対に避けたかった。





□ □ □





 文化祭一日目が難なく終了し、軽い片付けが終わったのが六時半過ぎ。

 買い出し班に明日の分の材料を買いに行くよう頼み、俺は一人家に向かっていた。

 「へぇ、じゃあ思ったより大盛況だったのね?」

 「大盛況は大げさだけれど、思った以上に人は来たよ」

 帰宅してからは、姉ちゃんに今日のことを軽く報告。

 別に報告と言ってもたいしてするようなことではないが、姉ちゃんが文開催のことを聞きたいとせがんできたので、俺はしぶしぶ今日のことを話したのだった。

 「じゃあ、燿君も大変だったのね~」

 口でそう言ってくれるのだったら、料理してほしいよ。

 日中料理しかしていなかったのにもかかわらず、家でも料理。手際が今日とあまり変わらない。

 でも仕方がないことだ。姉ちゃんに料理なんかさせたらある意味終わる。

 手つきや思考がなぜか、オムライスという方向にあったため、今日の晩御飯はオムライス。……にしても、見飽きたな。

 「それじゃあ、本番は明日っていうわけね?」

 「……要するにそうなるな」

 明確には、午前中は普通に催しのほうに手を出す。

 午後からが『女装コンテスト』だ。

 「ところで、燿君は今回の『女装コンテスト』は何を目的に開催されるか知っている?」

 急に姉ちゃんが訳の分からない質問をしてきた。

 目的なんて、ただ一つしかないだろう。

 「あれだろ? 『ティーンズ』と『KIRIHARA』が提携してやる、『女装コンテスト』の余興みたいな……まあ、悪く言えば試運転みたいなものだろ?」 

 「そう説明されると、そうとも言えなくなるわ」

 「どういうこと?」

 「その様子じゃ、燐たちからは何も説明されていないようね」

 ……言っている意味がさっぱり分からなかった。

 本当のことと言われても、それ以外今回の企画の目的はないだろ?

 俺の怪訝そうな顔を見て姉ちゃんは、

 「これ、結果次第ではまたテレビに出るかもしれないからね~」

 「へ?」

 テレビに出る!? 何のことだ?

 「あの二人から何も聞いていないなら、私から言おうかな。でさ、燿君。驚かないで聞いてね?」

 その言葉は驚けっていうことだろ……

 半信半疑、そう思いながら俺は姉ちゃんの話に耳を傾ける。

 「今回の聖城祭での『女装コンテスト』の企画を立ち上げたのが、『ティーンズ』の一番偉い人なんだよ。それで、その人が聖城祭での『女装コンテスト』で優勝した人を、テレビに出すって言い始めたのがきっかけで……」

 その後、姉ちゃんの話は長々続いていき……

 気づいたら話は終わっていた。

 最後までしっかり聞いていたのだが……

 さっぱり状況を理解することができなかった。

 「それってさ……俺が優勝すればテレビに出て、番組の企画に参加するっていうことなんだよね?」

 「私がさっき言ったことそのままね」

 悪いな。容量の悪い弟で。

 にしても、あいつらの目的が何なのか……それが一番気になる。

 単に桐原美里に勝ちたいだけなのか……それとも俺をテレビに出演させたいのか?

 ……解せないな。

 「とにかく、あなたは明日の『女装コンテスト』に集中しなさいよ」

 「言われなくても、そうするよ」

 もっとも、集中したくするわけじゃないんだけどな。

 「衣装はあれのようね」

 「……知っていたのかよ」

 「私が知らないとでも思っていた?」

 「いないな」

 「でしょう?」

 「悪意感じるぞ、その返事」

 「あれ、私が提案したって聞いた?」

 「いや、そのことについては何も聞いていないけれど……」

 「私の服や、あの子たちの服でコーデするのも悪くはないけれど、それじゃあ新鮮味がないのよ。服装にも流行っていうのもあるでしょ? あれに乗るっていうわけじゃないけれど、それにあらがったやり方もありじゃないかなって」

 つまり、流行だけがすべてじゃないと。

 今日俺に見せた服は、明らか今の流行している服ではない。見た感じ、あんなもの着ている奴なんているの? と思わせるくらいだ。

 だが、あいつらはそんなことを気にしてない。

 流行がどうこうという話ではなく、その人に見合った服を選びだしている。

 姉ちゃんは、桐原美里のコーデをこう語った。

 「あの子、たぶん新しいものや流行に乗ろうとしているものは、すぐ欲しがるタイプだと思うんだよ。たとえば、誰かがはやりの服を着てきた。その服も自分ですぐさま買っては、周囲の目を引き付ける。確かに可愛いところもあるけれど、単純に利益泥棒ね」

 「利益泥棒……」

 ものすごい嫌な響きだな。

 給料泥棒を寄せ付けないほどの、芸達者な泥棒なんだろうな。

 「とにかく、『女装コンテスト』は一番かわいい男の子が選ばれるからね」

 「端的に説明すればそうなるよな」

 一番かわいい男の子って……

 美形の男子のほうが似合うだろ。

 どうみたって俺は似合わない。

 「それで、桐原美里は誰をコーデするのか、わかったの?」

 「そんなの、わかっていればとっくに……は教えていないけれど、なんで姉ちゃんがそんなこと聞くんだよ」

 「ちょっとねー。あの子があんたみたいな子を本気でコーデしようと思っていたのが、疑わしくてね」

 「今の言葉はどう見ても、俺をバカにしているようにしか聞こえなかったぞ」

 「あら、空耳よ」

 俺にはそう捉えられているのですが。

 「とにかく、あなたはあなたにできることをやっておきなさい。そうでもなきゃ」

 この時の姉ちゃんは、勝負の行方を知っているのだろうか。

 長年のキャリアはもちろん、血のつながった弟が出場するのだからか。

 妙に自信満々の表情をし、意気揚々とした声に俺は少しだけ、安堵を覚えた。

この話、どうやって終わらせよう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ