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STEP!!  作者: 海原羅絃
第三章 文化祭でSTEP!!
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第九話 「文化祭とか、学校でしか味わえないイベントは、楽しんだもん勝ちだよ」

 文化祭当日が着た。

 特にこれといった気持ちはなく、いつも通り朝起きてご飯を食べて、隣に住む誰かさんと学校へ行く。

 だが、学校内は違う。

 正門にはアーチがかけられ、綺麗なアーチを描いているそれは『聖城祭』とでかでかと書かれている。

 それをくぐる人は、いつも学校へ来る時のローテンションではない。ウキウキワクワクの状態だ。俺を追い抜いていく人はみんな今日が楽しみでしょうがなかったのだろう。

 これから行われる二日間の文化祭は、この学校の生徒にとって一年に一度の祭典だから、騒ぐに騒ぐだろうと思うが、俺にとっては地獄でしかない。

 「朝からやけにテンションが低いわね」

 俺の表情を見てか、燐が横やりを入れてきた。

 「いや……明日のあれが近づくにつれて、俺の胃がね」

 「本番では倒れないでよね」

 それ以外は倒れてもいいと。

 「おーい、ようへーい」

 すると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。

 振り返ると、スーパーのビニル袋を持った光とクラスメイト。

 そういえば、あいつら朝早くから買い出しに行っていたんだっけ。

 「燐ちゃんも、おはよ」

 「おはよう。朝からありがとうね」

 にっこりスマイル。そして、その何気ない一言。

 もちろん、光以下後ろの男子どもは、さっきまでの疲れ切った顔が一変した。

 「いよっしゃあ!! 今日から頑張るぞ!!」

 「やっべ、あと二袋……三袋は余裕かな!!」

 おいてめえら。何見栄張っているんだ。バカ丸出しだぞ。

 「みんな頑張ってね」

 最後、軽く一蹴されたかと思ったがにっこりスマイル発動のため、本人たちはのほほんとした表情だった。わっかりやすっ。

 「じゃあ、光。またあとでな」

 「おう、燿平もキッチンがんばれよ」

 ぐっ、あまり思い出したくないのに……

 光たちと別れ、俺と燐は教室へと向かった。

 生徒玄関前では、受付を準備している生徒会役員や来賓を接客する生徒が最終確認をしていたりと、文化祭らしい雰囲気がなんとなく出ている。

 「じゃあ、私はちょっと生徒会の人と打ち合わせがあるから」

 「なら先に教室に行ってるからな」

 靴を履いて、燐は教室とは反対方向の生徒会室へと向かった。

 さて、とりあえず教室に行って準備でもするか。

 閑散とした下駄箱を一瞥し、教室へ向かおうとしたとき。

 「あれ? 生野君かい?」

 また光か。と思ったが、明らかに俺を苗字で呼んでいるし声質も違う。どこかで聞いたことあるけれど……

 振り返ると、そこには文化祭実行委員長の佐内鉄平がいた。

 「あ、お久しぶりです」

 「久しぶり。今日は彼女とは一緒じゃないのか?」

 彼女とは燐のことを言っているのだろうか。突っ込みたいところあるけれどこの人にはある意味、誤解は解けないな……

 「今日は会議があるようなので、一緒じゃないです……って、先輩は会議に行かなくていいんですか?」

 「僕はいいんだよ。『女装コンテスト』は桐原さんが仕切るからね」

 やっぱりあの人が実権を握っているのか。

 「僕は今日の開祭式のあいさつをすればいいだけだから、あまり裏では仕事させてくれないんだよ」

 そりゃあ実行委員長だからな。

 「でも、大変じゃないですか? 委員長だからといって、ほとんどの生徒を統率するのは」

 「うーん。まあ大変といえば大変だね。でもやっていて苦ではないよ。僕だってやりたくてやっている仕事なんだから」

 「その割には暇そうに見えますけれどね」

 「ははっ。それを言われちゃ、僕も頭が上がらないな」

 笑っているけれど、汗流れているぞ……

 「そういえば、燿平君はあの企画に出るそうじゃないか」

 「さっきまでは思いっきり名前を出していたのに、今では指示語ですか」

 「いいじゃないか。相手を配慮している僕の気持ちだよ」

 「……まあ出るというなら、出ますね。あまり言いたくないことですが」

 「大変そうだね」

 本当に大変と思っているのなら、あの企画を中止してほしかったよ。

 「とにかく、文化祭は一年に一度しかないからね。ここで楽しまなきゃ、損するよ」

 「もう二年。あってもですか?」

 「今年は今年。去年は去年。いくら毎年同じことをやるとしたって、同じことは繰り返されないんだよ」

 「『女装コンテスト』も一緒ということですか?」

 「お、察しがいいね」

 いや、褒められても嬉しくないから。

 隣を歩く先輩に目を向けると、どことなく上機嫌だった。

 この人、どこまで文化祭を楽しむつもりだ……

 「とにかく……」

 一歩先に、委員長は前に踏み出した。

 「文化祭とか、学校でしか味わえないイベントは、楽しんだもん勝ちだよ」




□ □ □




 9時から始まる開祭式では、生徒会役員によって作られたオープニングムービーを筆頭に盛り上がっていき、文化祭実行委員長の宣言とともに、『聖城祭』は幕を開けた。

 そういえば、今まで気づかなかったけれどこの学校に生徒会長はいないのか?

 始業式の時にも姿を現していないし、それらしい人物や話もしていない。

 まあ、俺には関係のないことだろう。

 開祭式が終わると、10時から始まる一般開放に向けて、生徒たちは一斉に各持ち場へと戻る。俺も流れに乗って、自分の教室へと戻る。

 ある程度のメニューはちょちょいとやれば出来上がるから、焦る必要性はない。

 あとは、どれだけ客が入るかによるけれど……

 クラスの連中も、なんだかそわそわしているように見える。やっぱり緊張しているのか? 

 「ううううううううううううううう。客がきますように客がきますように客がきますように客がきますように客がきますように客がきますように客がきますように客がきますように客がきますように」

 朝から変なものを見た気がする。

 そこで変なことつぶやいている奴がいるけれど、気にしないでおこう。

 「燿平、調子はどうだい?」

 周りの様子を見ながら準備をしていると、買い出しまで暇そうにしている光がやってきた。

 「調子も何も、まだ客が来ていないんだし無いだろ?」

 「ははっ。そりゃあそうか。ああ。そうそう。燐ちゃんたちが呼んでいたから、休憩になったら屋上に来てだって」

 そういえば、あいつは元々喫茶店のシフトに入っていなかったんだっけ。

 くそっ。俺が頑張って働いている間にあいつらは休憩か!?

 「あと、時間があったら手伝いに行くと……って聞いてないし」

 許さん!! マジで許さんぞ!!

 「ダメだこりゃ」

 と、こうしているうちにも時間は過ぎていくわけで……

 「じゃあ、俺はまだ準備のほうがあるから」

 「オッケー、じゃあ買い出しが必要になったらいつでも言ってくれよ」

 「分かったよ」

 どこへ行くのかはわからないが、とりあえず俺は準備のほうを進めなくてはならない。

 ほかの調理班の人は難なくやっている……が、まだ客が入っていない状態だ。

 これでもし、客が入り多忙になっていくとどうなるのか予想できない。

 今のうちに、できるだけやっておかなければいけないようだ。

 今日はこっちのほうに集中していられるが、明日は『女装コンテスト』のほうもあるから、あまり顔を出すことはできないが、明日の分も働くつもりでやろう。

 『全校のみなさん、準備の方お疲れ様です。まもなく一般公開が開始されます。きもちよく一般の方を迎え入れることができるようにしましょう』

 やがてアナウンスが入り、10時を知らせるチャイム……つまりは一般公開が始まる時間になったのだ。

 このチャイムと同時に、俺は身を引き締めた。

 数分後、数人のお客が入ってきた。

 接客係りの生徒が応対し、オーダーを取る。メニューは大体固定されているから、待ち構える必要はない。

 「オムライス三つお願いします!!」

 最初のオーダーが来た。

 「1コンロはオムライス。2と3コンロはスパゲッティね。俺はオムライスやるから」

 あらかじめ、番号をつけておいた各コンロにはそれぞれ何のメニューが来ても大丈夫なようにしてある。

 まあ、作るものが変わるその都度洗い物をしなければいけないっていう欠点さえなければ、いいんだけれど……

 「ナポリタン二つ!!」

 「オムライスは三つ!! あと子供の用のお皿ってある?」

 一時間がすぎないうちに、注文は殺到。途中で作り間違えのハプニングがあったが、それ以外は難なく乗り越えた。

 買い出しの連中ともうまく噛み合えたし、午前はまあまあ合格だな。

 お昼時のピークを過ぎ、俺はようやく休憩に入ることができた。

 「かぁー、疲れた」

 まさかあんなに客が入ってくるとは思っていなかったな。買い出しのほうが少し心配だったけれど、元以上はとれたから午後もなんとかやっていけるだろう。

 顔をタオルで覆い尽くし、瞑想にふけようかと思っていた時。

 頬に冷たい何かの感触が伝わってきた。

 何事かと思ってみてみると、コーラの缶を持った燐がいた。

 「お疲れ様」

 「……ありがと」

 「大変だったようね。お昼時は」

 「飲食店とか大体そうだよ。こういうことは承知で経営しているわけだからさ」

 「すれ違うお客さんが言っていたわよ。あなたの作った料理は美味しかったって」

 「まあ、美味しいが美味しくなかろうがその人に食べてもらえさえすれば、俺はそれでいいんだけれどな」

 「じゃあ、私の料理も食べてみる?」

 「いや、俺が食べる場合は別だからな?」

 こいつの手料理はまだ食べたことないけれど、料理は得意じゃないとは聞いている。

 あまり期待はしないほうがよさそうだし……

 「あとは、『女装コンテスト』だけね」

 「……」

 そういえばそうだった。

 あまりにも催しのほうに集中していたのか、明日の大御所をすっかり忘れていた。

 まじか……俺、本当に女装するのかよ。

 「ある程度休憩できたら、屋上に来てくれる? 衣装を見せたいの」

 「別にいいけれど……」

 それじゃあまたと、燐はどこかへ行ってしまった。

 午後からは午前に引き続いて一般公開が行われるが、生徒間ではパフォーマンスの項目も設けられている。

 明日も同じ項目があるが、生徒だけの参加で一般の人たちは明日のほうになる。

 すなわち、『女装コンテスト』だ。

 一般の人たちが見に来るのもそうだが、人前で女装をするなんていつ振りだろうか。

 ……ざっと数えて10年ぶりか。

 免疫とかそういう問題ではない。人前に出ることができるかどうかが不安だな。

 缶のプルタブを開け、一気に中身のコーラを飲みほした。

 「さて、屋上にでも行きますか」

 あいつらが作った衣装。

 さてさて、どんなものなのかお手並み拝見を行きますか。


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