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STEP!!  作者: 海原羅絃
第三章 文化祭でSTEP!!
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第三話 「燿平君なら、料理はお手の物です」

くっそ。新しいパソコンにデータ移そうと思ったら、何も残っていなかった。

 喫茶店を出ても、まだ日は沈んでいなかった。

 九月に入ってもなお、蒸し暑い日が続く。

 そんな暑く、西日が照らす中、俺は燐と帰路を辿っていく。

 雨宮は送迎の車が来ていたから、現地で別れることになった。

 「にしても、女装とかメリットもない企画をよく考えたものだな」

 「いいじゃないかしら? 私としてはインパクトがあっていい企画だと思うよ」

 「お前の個人的感想は求めてない」

 くそっ、クラスの準備にうまく入り込めるかでも苦労しているのに、ここで『女装コンテスト』なんてめんどくさいものを織り込まれると、余計めんどくさい。

 ああ、まだ準備にも取り掛かっていないのに当日休みたくなってきた。

 「ゴスロリ」

 「……は?」

 無言が続くこと数分。

 一体何を思い当ったのか、燐は突然『ゴスロリ』といういかにも怪しい単語を口にした。

 嫌な予感がして来たんだが。

 「ゴスロリもいいわね……」

 「おいおい……」

 ちょっと神崎さん? いったいあなたの脳内では何が起こっているの? 革命でも起きているの?

 「でもフリルもいいわね……何?」

 「何じゃねえよ!? お前今すごい禍々しいこと言っていなかったか?」

 「ゴスロリの事かしら?」

 「それだよ!!」

 「衣装は何にしようか考えていたら、いろいろ浮かんできたのよ。着る物にもいろいろジャンルがあるわけだし」

 「そうだけれど、それは一体誰が着るの?」

 スッと、神崎の指が俺に向けられた。

 このやろう……

 「ゴスロリとワンピース。どっちがいいかしら?」

 「俺が参加する前提で話を進めるな!!」

 「あら? 違うの?」

 「真顔で聞き返すな……」

 それにしても、ゴスロリとワンピース……自分が来たところを想像するだけで吐きそうになる……

 「顔色悪いけれど、大丈夫?」

 俺の表情を察してか、神崎が聞いてきた。

 「ああ、ちょっと想像してはいけないものをした」

 「……?」

 気難しい顔をしているが、まあいってもわからないことだろう。

 文化祭……思っていた以上に手ごわいかもしれない。

 クラスの出し物もそうだが、『女装コンテスト』が何よりも鬼門だ。参加するしない関係なく、俺の心を抉ってくる。

 


□ □ □



 そんなことが起きたのが、ほんの数日前。

 生徒のみんなは夏休みの余韻に浸る余裕もなく、着々と文化祭準備に手をかけていた。

 そんな中、一日の最後の授業で各クラスに設けられたLHRの時間で、文化祭での出し物を決めることになった。

 出し物を決めるにあたって、必要経費や準備期間といった当日にやる以前の段取りも考えなければいけないため、こうして早々と決議をする必要がある。

 この場合、必ずしもクラスに貢献するやつしないやつが出てくるわけで。

 「じゃあ、何かやりたいことがある人は挙手して意見を言ってくれる?」

 教壇では、文化祭実行委員になった仁村君……だったかな。とりあえず、俺を怖がっている仁村君が進行を執り行っていた。

 「ここは定番のメイド喫茶でしょ!!」

 「いやいや、純情に抗うべく普通の喫茶店で!!」

 「恋が実予感のするお化け屋敷だ!!」

 教室内がざわめく中。

 以上、下心丸出し男子三人(光を含む)の意見。

 そのうちの光の意見に関しては、女子から反感を得られるような視線を向けられなかったが、ほかの男子二人の意見に至っては、催し自体悪くないけれど前振りがひどすぎる。

 「えー、ほかに意見が出ないですか?」

 仁村君が追加の意見がないか確認をとるが、誰も挙手するものがいない。

 しばらくすると、最前列に座る女子生徒が手を挙げた。

 「メイド喫茶っていうことは、女子だけがメイドの恰好をするのですか?」 

 「メイド喫茶っていうから、女子だけ変な恰好させられて男子のキモい視線を浴びるのもねえ」

 続いて違う女子が。

 「大体下心剥き出しじゃない?」

 さらに違う女子が追い打ち。

 なぜか、男子が痛めつけられている。

 「女子だけがメイドの恰好をするのは確かに不公平だよな? だからさ、男子もセバスチャンっていうのか? ああいう恰好をすればいいんじゃねえか?」

 キリっと、キメポーズみたいなことをしながら言い出す光。

 あとセバスチャンじゃなくて執事な。

 「羽鳥君の意見もいいわね!! それなら男子も女子も公平だね」

 「さすが羽鳥君。考えることがほかの男子とは違うわ」

 いやいやいや。メイドの恰好をする事はいいのか。光の意見が出れば、何でもいい女子の思考が全く持って理解できない。

 「じゃあ、多数決をとればいいね? この三つの意見の中から一回だけ手を上げてください」

 文化祭実行委員の促しによって、多数決が行われた。

 結果は良好。メイド喫茶となった。

 「お前もメイドの恰好するのか?」

 俺は隣にいる燐に話しかけてみた。

 別に、こいつのメイド姿を見たいという願望はあるわけじゃない。

 『女装コンテスト』という大事の準備もあるから、あまりクラスの方には顔を出せないようだけれど話は一応聞いているみたいだ。

 「番組で以前、着たことがあったわ。まあ、人前で見せるのは恥ずかしいけれど慣れれば簡単よ。もう一度着たいとは思っていないけれど」

 まあ確かに、こいつの顔ならメイド服を着ても男子女子関係なく反響がすごいだろうな。

 「その割には、うれしそうな顔しているぞ」

 「それは燿平君の妄想よ」

 「よからぬ妄想なのか!?」

 「そうね。私が女王コスしてあなたを踏みにじる妄想かしら」

 「もはやジャンルが違うじゃねえか!?」

 と、こんな感じで会話が続いていく中で催しの方は着々と進んでいるわけで。

 「問題は料理できる人なんだよね。メイド『喫茶』っていうほどだから、それなりのメニューを作れる人がいないと……」

 メイド喫茶のメニューって、大体痛い名前ばっかりだよな。普通にオムライスとかハンバーグでいいのに、下手に名前変えると客足が増えない気がする。

 名前どうこうよりも、味が大切だからな。

 「それじゃあ、こんな中で料理できる人……なるべく女子がいいけれど自信のある人いない?」

 しーん……

 さっきとは全く違う教室の雰囲気。

 おいおい、今時の女子は料理をやっている人がいねえのか!?

 何とか村君は、教室一帯を見渡した後、

 「じゃあ、この人は料理得意だよっていう人はいませんか?」

 でた、誰かできないか探してくれよ作戦。

 おそらく、料理できる人はいるんだけれどやれる自信はないかもな。まあ誰が料理出来ようと関係のないことだけれど。

 すると、隣の燐が手を挙げた。

 あれ? お前、料理できるんだっけ?

 「あ、神崎さん」

 「はい」

 席から立つと、一斉に視線が彼女に集中した。特に男子。

 お前ら、どんだけ過敏なんだよ。

 「燿平君なら、料理はお手の物です」

 「……」

 え?

 一体何を仰っているのかな? 神崎さん?

 燐の衝撃的な発言に、クラスがざわめくのは当然。

 「なあ、燿平君て……生野の事か?」

 「なんで神崎さんが、生野が料理できるって知っているんだ?」

 「二人って出来ているの?」

 「あの生野が料理……?」

 良からぬ噂が沸き立つのも当然なわけで。

 「なあ、何で余計なこと言うんだよ」

 爆弾を投下した燐に、小声で打ち立てるが、

 「強いて言うならば、あなたのイメージをアップさせるためよ」

 「それが余計なことだなんだよ……」

 おっせかいにもほどがありすぎるだろ……

 「じゃあ、生野君? 君に料理の方は頼んでもいいかな?」

 「待て!? まさかおれ一人でやらせるつもりか?」

 突然席を立ちあがり、反論の意を述べるが光と燐を除くクラス全員に「ひっ!?」という声を上げられた。お前ら団結力高すぎ。

 「確かに……生野君一人にやらせるのもあれだからね……」

 「当番制にして数人手伝いに回ればいいじゃねえのか?」

 すると、今度は一人の男子生徒が意見を述べた。

 「生野君、手際いいからさ。大丈夫だろ?」

 いつしか、俺が料理できるという疑念を抱いていた生徒は打って変わって、どういう風にローテーションをしていけばいいのか、話し合っていた。

 ってか、俺が手際いいってどこ情報だよ。

 「じゃあ、こういう形で回していくけれど、生野君いいかな?」

 「まあ、とりあえずいいよ」

 「それじゃあ、次の題だけれど……」

 催し物の話はいったん区切られ、次の話題へと変わって行った。

 「よかったわね。みんなの期待に応えられそうで」

 「一歩間違えば、クラスにいられない立場になっていたけどな」

 「その言葉には少し語弊があるわね」

 「どこにも語弊はねえよ!?」

 至って自分の思うがままに行っただけだ!! 勝手に暗中模索するな。

 「でも、これであなたも少しは変われるかもしれないわね」

 「何のことだ?」

 なんて、俺が聞いたところで燐は答えてくれるはずもなかった。

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