第二話 「断る!!」
※注意 予約投稿。
推敲は3/26 22:42
以上、回想シーン終了。
……なるほど。とりあえず暑さで頭がどうにかなっていたという、結末でいいかな。
それにしても気になる部分がいくつかあるわけで……
目の前に座る雨宮を一瞥した。
回想シーンから察する通り、なんであの時雨宮は壇上にいたのか。
「それでしたら、編入手続きをとってきましたわ」
「……左様でございますか」
気のせいか、心情を見透かされた気がする。
「あまり詮索はしないけれど、唐突だな」
「いえ、別に私情でこっちにきたわけではありません。神崎さんのあの一件以来、わたくしの事務所でもかなり厳重な防犯対策をとっていますので」
「その一環で、この学校に転校してきたのか?」
「うちの事務所は、思わぬ方向に考えを向けるからね。まあ、それが私たちの取り柄かもしれないけど」
「思わぬ方向に行くのが取り柄って……」
アバウトな事務所だな。
「文化祭の一件も多少は関係しているだろ?」
「そうですわね。ですが、それだけではなく神崎さんの学校生活のなれという事に関してでも、ありますわね」
「ずいぶんと愛されているんだな」
「その言葉、どうにも厭らしく聞こえるのはなぜかしら?」
え? 俺何かまずいことでも言ったのか?
「でも、文化祭の企画プロデュースだけの為に編入してくる人は、あなたくらいしかいないわよ。いうなれば、期間限定移籍ね」
「期間限定移籍。響きがいいではないですか」
「よくねえだろ……」
別に期間限定でもないし、そのサッカー選手みたいな言い回しはなんだよ。
それにしても……編入とは大胆な行動に出やがったな。
「それにしても、一年間にアイドルが二人も転入してくるなんて、学校側もいい宣伝になるよな」
「聖城学園とうちの事務所、実はゆかりがあるんですよ」
「え、そうなの?」
「何年か前に映画の撮影場所として使われたり、数年前、卒業生が女優デビューしたのよ。今人気沸騰中よ」
「あっ……」
「一番身近なのに」
燐に呆れられてしまった。
そうじゃん。姉ちゃんが聖城の卒業生なんだ。
「その伝手もあってか、今回の文化祭で『KIRIHARA』とうちの事務所が連携して、企画をやるそうね」
「それが、さっき話していた『女装コンテスト』になるわけか」
「まさか番組でやる企画の前触れを、文化祭でやるなんてね。学校も事務所もとんだぶっ飛んだ方向性を持っているわね」
なんか今日、やたらと燐がしゃべるけれど……
やはりさっき言っていた桐原美里のことと関係しているのだろうか。
まあ、あいつの性格からして負けず嫌いっていうのは分かるけれど、今回行われる『女装コンテスト』は単なる前哨戦に過ぎないはずだ。
本番が行われる前から本気モードになって、大丈夫なのだろうか。
「でも、こういう企画が今までなかったので少し楽しみですわ」
「そうね。ここの所仕事も立て込んでいたし、やっとこの企画が実行されるから、私も楽しみね」
「やっと?」
燐の言葉に、俺が首をかしげた。
「学校側の『女装コンテスト』は、前々から企画はされていたそうよ。けれど、進行がうまくいかなかったり、出場チームが少ない影響で、先延ばしされていたのよ」
「それで、今度芸能界の方で行われる『女装コンテスト』の余興を兼ねて、家の学校でもお蔵入りしていたその企画を掘り出そうという話になったのか」
たまたま学校でお試しをやるのかとずっと思っていた。
「察しがいいですわね。燿平さん」
「で、その立案者が件の人物か」
「そうなるわね」
燐が難しい表情をつくる。
よほどこの企画に対して熱を入れているのか、あるいは気になることでもあるのか。
「っていうか、お前らはいいのかよ? 仕事の方もこの時期は忙しくなるんじゃないか?」
「マネージャーさんが、文化祭はめい一杯楽しんできなさいって言われているから、大丈夫よ」
「私も、学校のイベントに関しては特に制約はされていませんので」
「ま、まじかよ」
「事務所関連のことだし、出ないわけにはいかないわ」
尚更この企画が無くなることはないな……
もう始業式からの悪寒が止まらない。
残暑どころか、いまだに酷暑が続く日々だ。肌寒いなんて言い訳できるはずがない。
そもそも俺がここにいる理由は、単に二人とお茶をしているからではない。
燐と雨宮のセット……この二人から直々にお誘いが来たのは始業式が終わった後だ。
教室の殺気が渦巻いたのは気のせいじゃないはず。もっと場を弁えてほしかった。
「そろそろ本題に入りましょうか」
「そうですわね。あまり長居はしていても、意味はありませんので」
「……」
この状況を打破するのは、おそらく不可能だな。
どこからどう見ても、二人にやるきスイッチのようなものが入った気がする。
「燿平君」
「は、はい」
「折り入ってお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「べ、別にかまわねえけれど」
急に改まれると、調子が狂う。
でも、分かっているんだ。何を言われるのか、何を頼まれるのか。分かっているのにこのドキドキ感。嬉しくねえ!!
「文化祭での『女装コンテスト』だけれど、私たちのプロデュース枠で出場してくれないかしら?」
「断る!!」
即答!! 俺最強!!
「やっぱり……」
「想定内ですわね……」
「え? 想定内? 俺の返事は最初から分かっていたわけ?」
「もちろんですわ」
「第一に、あなたが女装をするなんて頼んでも、『はい』なんていう返事は微塵もないと思っていたわ」
「あ、そうですか」
それはそれでいいんだけれど、諦めていない感じがするのは……
「そうだとしても、少々強引に参加せざるを得ないかもしれませんわ」
ですよね!? そう来ると思っていましたとも。
「今回の企画は、男子ならだれでもいいのよ。女装さえすれば評価の対象になるからね。でも、中にはふざけ半分面白半分で笑いを取りに来る知能レベルの低いサルどもが参加するけれど、今回は受けを狙うために企画をしているんじゃないわ」
知能レベルの低いサルは言いすぎじゃね?
しかし、燐の過剰な批評に対して雨宮も、
「そうですわね。女装という概念に、何の意味をもたらしているのか理解できていない低能な下等生物が、文化祭に出る? 笑えて来ますわ」
すごい。この二人の過剰すぎる罵詈雑言。
まだうちの生徒は何もしていないのに……・理不尽だっ!!
「お前らが何のために出場するのは、俺も話を聞けば分かる。だが、何でおれなんだ?」
ほかにも、学校内には眉目秀麗の奴がそれなりにいるはずだ。
それとも、唯一真面に話せる男子が俺だけだから……なんていう下らないオチにはならないだろうな?
「そんなの、簡単なことよ?」
あれ? 普通こういう言葉って笑顔で言うんだっけ?
「あなたが星野輝夜だから。何て言う理由じゃダメかしら?」
「……」
本心では思っていても、こういう時に限って表に心内を出せない自分が情けないとは、前々から思っている。
首を縦に振ろうとも、横に振ろうともすらできない。
重みのありすぎる言葉だ。たぶん、燐自身もそう思っているはずだ。
これだけで、いかに二人のプライドに傷がついたのか分かる。
「と、言うことで参加してもらうわ」
「話急展開過ぎるだろ!?」
一転。雰囲気ががらりと変わった。
いい雰囲気ではなかったけれど、こういう展開で話を持ってこられるとやりにくくなる。
「参加するのは、任意よ? どうしても出たくないというのであれば、過去をばらまくつもりでいるけれど」
「任意を通り越して脅しに入っているぞ……」
「焦らず考えなさってもいいのですよ? 必要経費も私の方から出しますので」
「いや、経費とかそういう問題ではないぞ?」
「雨宮の言うとおり、焦らなくてもいいのよ。ただ、私たちは燿平君にはぜひ参加してもらいたいとは思っているから」
なんだか、言葉からして俺に拒否権は行使されそうにないな……
俺にメリットがないのに女装は……うん、死んでも無理だな。
こりゃ、文化祭の準備以前の問題だな。
この後俺はどうなるのやら。
そんな文化祭前に、前途多難なSTEPを踏んだ俺であった。




