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aeon~アイオーン~  作者: トト
aeon~アイオーン~Ⅲ
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~第一話~

  挿絵(By みてみん)


「この事は他言無用! 生涯誰にも話さないと誓って頂けますね、オニキス殿? この私の懺悔の為に、貴方にこんな重荷を背負わせた事、本当に申し訳なく思っています」


     挿絵(By みてみん)



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 ノンマルタスの都は、遥か西の彼方に存在したと言われる幻の大陸の王都に似せて造られていた。

 白い石造りの美しい都──


 王都レムリアン・シードを見渡せる小高い丘の上にノンマルタス一族の王城は存在する。

 その城は、幻の大陸の王城をそのまま移築したものだと聞いた。

 ノンマルタス一族を支配するムーカイト王家は、幻の大陸を支配していた一族の末裔。


 だが都は、その表の顔とはまるで違うもう一つの顔を持っていた。


 遥か昔……自らが造った地殻変動兵器の暴走で滅びた、偉大なる大陸の遺産を受け継いだノンマルタス一族の都は、既に失われたその大陸の“科学”というものに支えられていた。

 ノンマルタス一族が水の中で呼吸出来ると知っていた俺は、ノンマルタスが地上と都を行き来する時はその身一つで移動するのだと単純に思っていた。


「それは不可能だ。生身の身体は水圧には耐えられないからな」


 シェルは笑ってそう答えた。


 “水圧”とは、一体どういうものなのか?

 どのくらいかかるのか?

 そんな事は俺にはよく分からなかったが、小型の流線型の乗り物で俺はシェルと共に都を訪れる事になった。

 しかし『その乗り物自体が水圧に耐えられる訳ではない』とシェルは言った。

 その周りに張られている防御壁(シールド)が水圧から機体を護っているのだと。

 それは都も同じだと。


 都を包むドームの更に外側にシールドが張られている。

 それはムーカイトのシールドと理論的には同じものだと聞いた。


 都を維持、管理しているのは地下に存在する巨大なメインコンピューター。

 動力炉は半永久的なエネルギーで動いているらしいが、それが何なのかも既に失われていて、伝わってはいない。


 コンピューターも動力炉も、都の中枢はそれ自体に自己修復機能が備わっている。


 都の生活は、地上の“それ”と変わらない。

 陸の人間でも充分に暮らしていける。

 ドームが透明に変わるのは夜のみ。

 暗い“空”に海底の雪(マリン・スノー)が降る。


 日中は透明ドームの内側にもう一枚のドームが現れ、時間によって都の明るさが変わる。

 気候の変化もある。

 ……風が吹き、雨が降るのだ。


 かつての偉大なる大陸(ムーカイト)が持っていた技術に俺は言葉もなかった。

 けれど、その科学技術のほとんどは伝わってはいない。


 ノンマルタス一族自体も存続の危機ではあった。

 しかし、“種の滅亡(それ)”は今日とか明日とか、そんな急を要する事態(こと)ではない。


 だが、いくら自己修復機能が備わっているとは言え(ノンマルタス一族もある程度、都を維持する為の技術は持っているが)中枢そのものに致命的な何かが起これば、ノンマルタス一族は都もろ共、一瞬にして滅びる危険性を孕んでいるのだ……とシェルは言った。『それでも共に来るか?』と。


「それは、地上に居ても同じだから。地震とか、津波とか。何処に居ても死ぬ時はそんなものだ」


 とあっさり答えた俺に、半ば呆れ顔で


「それは、確かにそうかもしれないけど。あんたって、動じない奴だよなあ~。大物なんだか、何だか……」


 そう言ってシェルは複雑な笑みを浮かべていた。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 陸の人間が都を訪れたのは前代未聞の事だった。


 ノンマルタス一族は動揺を隠せない。

 けれど、俺の存在を認めなければ、自分たちの存在を許さない地上の人間と同じ穴の狢となる。

 戸惑いながら、それでも彼らは俺を受け入れてくれた。

 彼ら(ノンマルタス)はシェルを、自分たちの“王”を救ってくれた恩人として俺を迎え入れたのだ。


 ただ一人を除いて――

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