~前編~
「いよいよ明日、地上に帰られるのですね。小父様」
「ええ、貴女も17歳になられた。もう誰もが認める立派な“女王陛下”です。私の役目は、貴女が成人されるまでの後見。これからは地上で“私の成すべき事をしよう”と、そう思っています」
「それが、お父様との“約束”でしたものね」
王城から少し離れた場所にあるテラス棟に一組の男女が訪れていた。
一人は40代半ばの褐色の髪の男性。
一人は銀色の髪の美しい少女だった。
「まだ物心つかぬ前に母を亡くし、11歳で父を亡くして……早すぎるほど早く王位に就いた私を、ずっと陰から支えて下さった小父様には感謝しています。でも、私は一つだけずっと小父様にお聞きしたい事がありました。聞いてはいけない事だと分かっていましたから、今まで心に秘めておりましたが、最後に私の質問に答えて下さいますか?」
「私でお答え出来る事でしたら、何なりと」
その男性は子供っぽく笑いながらそう答えた。
「小父様はお父様を愛していらっしゃったんでしょう? その……“王”としてとか、“友”としてではなく“一人の人間”として、“男”として。セラフィナイトもそうですわよね?」
「……ご存知、だったんですか?」
「ええ。幼い頃から気づいていました。小父様もセラフィナイトも、お父様を見る目が私と同じでしたから」
「まさか、貴女もっ!?」
「はい」
「お父様の娘である事が私の喜びであり、誇りであり……同時に最大の哀しみでもありました。私はお父様の最愛の娘……それ以上にはなれませんでしたから」
(私は、お父様と同じ碧い髪で産まれたかった。一族の誰もがそれを望んでいたけれど、お父様だけは私が銀の髪で産まれた事をこの上なく喜んで下さった。『君が銀の髪で良かった。もうノンマルタス一族に碧い髪の王は必要ない。君の髪は誰よりも綺麗だよ。私は君の髪が大好きだ』と。だから私もこの髪が好きになった。この銀の髪を誇れるようになったのだ)
そして、そのシェルの言葉が、ノンマルタス一族の碧い髪の王への執着を断ち切ったのだった。
「私は小父様が羨ましかった。だから小さい頃よく、小父様に意地悪をしましたでしょ?」
「……あれは、そういう事だったんですか? 私はてっきり貴女に嫌われてるんだと思ってました。だから彼が私とセラフィナイト殿を貴女の貢献人に指名した時、セラフィナイト殿は兎も角、私には無理だと思ったんですけどね」
「セラフィナイトは同志でしたもの! 決して報われる事のない想いを抱いた者同士……。まあ、私が勝手にそう思っていただけで、当のセラフィナイトはそんな事を考えてもいなかったと思いますけど」
碧みがかった美しい銀の髪が風に揺れていた。
「三年前、セラフィナイトはユーディア・ライトの視察に訪れた私に同行していた。その時、サブ動力の一部が暴走して爆発! その爆風から私を護ってセラフィナイトは逝ってしまった……」
「私は大丈夫。お前が全身で護ってくれたから!」
「セラフィナイト殿っ!!」
クロサイトが駆け寄ってセラフィナイトを抱き起こした。
……その瞬間!
「…………」
クロサイトはセラフィナイトの傷の深さに絶句した。
(もう……目も見えていないのですね、セラフィナイト殿)
クロサイトは全てを覚悟した。
一枚目のイラストはシェル~28歳、アイフェ~10歳くらいです。
二枚目、三枚目はアイフェ~14歳、セラフィナイト~37歳です。
セラフィナイトは昔とほとんど変わってません。
この人は外見の変化はあまりないだろうなあ~と思ったので。
シェルを父親に持ったアイフェは、ある意味“不幸”だなあ~なんて思いながら書いてました。
他の男がかすんで見えるんではないかと。
全然違うタイプを探すしか手は無いですかね?




