表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
aeon~アイオーン~  作者: トト
aeon~アイオーン~Ⅲ
21/30

~第十六話~

 一ヶ月後――


「明日からいよいよ、陛下が公務に復帰されるのですね。一時はどうなる事かと思いましたが、大事に至らなくて何よりです」


 クリソコラの言葉にジェムシリカとクロサイトは感慨深げにうなづいた。


 シェルはオニキス、セラフィナイトと共に王都レムリアン・シードに帰還した直後、意識を失った。

 即位してからの激務と、真実を知ってしまった精神的な衝撃。

 それはシェルの身体を思いの外蝕んでいた。


 彼はそれから二週間、高熱が続き床から起き上がる事は出来なかった。

 公務復帰の許可が主治医から下りるまで、それから更に二週間の時を要した。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 シェルが行方不明になり都を混乱させた責任は全て、ユーディア・ライトの総責任者であるブロンザイト・クリソベリルが被る事となった。

 それはクリソベリル自身が望んだ事だった。


 ムーカイトからシェルを連れて戻ったオニキスとセラフィナイトの様子から、それが徒ならぬ事態である事を感じ取ったクリソベリルは“真実”を語れない二人にこう告げた。


「この度の事は公にこそされてはいませんが、都の主だった方々は陛下が行方不明だったという事実をご存知です。事の真相をこのまま有耶無耶にする事は不可能でしょう。“真実”を語れない以上、皆が納得出来る“もう一つの真実”が必要だと思われます。責任の所在を、生贄(スケープゴート)になるべき者の存在を作らねばなりません」

「クリソベリル殿……?」


「陛下と貴方がた御二人がムーカイトへ行かれた事は隠しようのない“事実”です。ムーカイトに何らかの異常が発生し、陛下はムーカイトへ調査に向かわれた――それが最も自然な“言い訳”でしょう。ムーカイトの事は誰よりも陛下が一番よくご存知なのは周知の事実ですから。……しかし、その事実の報告を私が怠ったのです」

「クリソベリル殿! 貴方は……!?」


「全ては、この私が報告を怠った事が原因。全ての責任はこの私にあるのです」

「クリソベリル殿! そんな事はっ!!」


「……それ以上、何も仰いますな。人々に余計な詮索をされない為には、責任の所在を明確にするのが一番なのです。陛下を、シェルタイト様を護る為に!!」

「だが、貴方だけに罪を押し付けるような事は……」


「陛下には、貴方がた御二人が必要なのです」

「それは貴方も同じだろう!! このユーディア・ライトを熟知しているのは貴方しか居ないのだから!!」

「だからこそ、です! 私の事はご心配なさらず。都の主だった方々もそう思っていて下さっていると自負しております。私の処分は、そう重いものにはならないでしょう」

「しかし……」


「陛下は……シェルタイト様は『次代の王たる者は、都の全てを知っていなければならない!』そう仰られて幼い頃から、このユーディア・ライトにもよくお出で下さいました。私はシェルタイト様に、私の持っている知識も技術も全てお教え致しました。貴方がたには、貴方がたにしか出来ない事がおありでしょう? 私はこのユーディア・ライトの機能を維持し、ノンマルタスの都を陰から支える事。それが、この私に出来る唯一の陛下への忠誠の証しだと信じております」

「クリソベリル殿……」


 クリソベリルに下された処分は、謹慎一ヶ月だった。

 しかし、それは形式的なものに過ぎなかった。

 クリソベリルの予想通り、都の主だった者たちはクリソベリルの有能さを充分すぎるほど知っていた……というのが表立った理由ではあったが、彼が事態を治める為に自らが責任をとる事を買って出た事に薄々気づいていたからだった。


 この作品の中で唯一、挿絵を入れなかった話です。

 クリソベリルを描けば良かったなあ~と今更ながら後悔しています。

 でも、そのお蔭で読者様がクリソベリルを描いて下さって凄く嬉しかったりしたのですけれども。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ