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aeon~アイオーン~  作者: トト
aeon~アイオーン~Ⅱ
1/30

~第一話~

 この物語は読者様のご要望にお応えして、作者自身が二次創作したパラレルです。

「ノンマルタス伝説」の本編の第十九章で、シェルがオニキスの言葉でセレスの為に生きる道を選択していたら……という想定の元に創りました。

 ですから形的には「ノンマルタス伝説」の続編という事になります。

 でも、実際にはシェルは死んでいるので、別物として読んで頂けるとありがたいです。


 詳しくは、「ノンマルタス伝説」本編(全22話+おまけ2話)をご覧下さいませ。

 尚、この作品は三部作となっております。

 第一部にはR18が含まれますので、第一部のみ「ムーンライトノベルズ」様での掲載となっております。ご了承下さいませ。

        挿絵(By みてみん)



 その日はオルソセラス侯爵家で盛大な舞踏会が開かれていた。

 久しぶりに帰って来た四男坊の為に侯爵が開いた舞踏会だったが、侯爵の本当の目的は侯爵が選んだ花嫁候補たちとオニキスとを会わせる事だった。


 何時までもふらふらと諸国を旅して滅多に家には寄り付かない息子が戻る度に開かれる舞踏会だった。

 ……が、その都度オニキスは花嫁候補たちには見向きもしない。


「せっかく諸国を旅してるんだから、自分で花嫁を探して連れて来る……くらいの事をしたらどうだ? そろそろ私を安心させてくれ!!」


 それがオルソセラス候の口癖になっていた。


 だが、今回もオニキスは己が主役の舞踏会を抜け出して一人バルコニーで夜空を眺めていた。


 オニキスを見つけて話しかけてきたのは、この舞踏会で父から紹介された花嫁候補の一人

 ──ルチル・モルガナイト・クリソブレーズ姫──

 クリソブレーズ伯爵の一人娘で漆黒の髪とセピア色の瞳を持つ美しい女性だった。


「オニキス様は旅がお好きなのですか?」

「ええ」

「旅はいいですわね。私もオニキス様と一緒に旅がしたいですわ」

「……私の旅は姫が想像してるようなものではありませんよ。不審者と間違われて何日も牢に入れられた事もありますしね」

「まあっ!?」


 一瞬、ルチル姫は絶句したが「オニキス様は意中の方はいらっしゃいませんの? 旅で素敵な方に巡り会われた事とかは?」と話題を変えた。


「私はそういう事は苦手なので。でも……そうですね。一人だけいましたよ。他の誰よりも! 多分、自分の命よりも大切な人が!」

「過去形、ですのね?」

「ええ。二度と会えない、遠い処に行ってしまいましたから」

「…………」



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 長い沈黙の後、


「それは、亡くなられた……という事ですの?」


 聞いてはいけない事なのかもしれない……と思いながら、それでもルチル姫は、意を決してオニキスにそう訊ねてみた。


「いえ、そういう訳ではないんですが、私には行けない場所なので」

「行けない、場所?」

「ええ。遠い、遠いところです」


「今でも、その方を愛してらっしゃるんですか?」

「そうですね。忘れられない人です」


 そう言って微笑んだオニキスを見て、ルチル姫はため息をついた。


「オニキス様が、私たちに目もくれない理由が分かりましたわ。一体どんな方ですの? 今でもオニキス様の心を占めているその方は?」


「……綺麗な人ですよ。外見もですが、心が……まるで宝石のように綺麗でした。純粋で、不器用で優しい。私はその人の心を護りたかった。一人の人間には抱えきれないであろう重荷を背負って生きていた人でしたから。それが出来るほど強い心と、それとは裏腹の傷つきやすいガラス細工のような繊細な心と。その狭間で、その人の心は何時も揺れ動いていました」


 オニキスは星空を眺めながらルチル姫にそう答えた。

 だが、ルチルはオニキスが星空ではない別の何かを見つめているのを感じた。

 彼の瞳は限りなく優しく、そして哀しげだった。


 ルチルはその場にオニキスを残してそっと大広間へと戻って行った。


 交わした会話は短かった。

 オニキスには最愛の人が居る。

 でも、その人はもう既に“過去の人”になっていた。

 けれど己は決して、その人とオニキスの間に入る事は出来ないのだと、彼女は悟ったのだ。

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