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少年は協力して戦う


「それじゃあ、どんなスキルを取ってるか教えてくれるか?」


ダートとパーティーを組むことになったので、スキルを教えてもらうことにする。連携をするには、お互い何が出来るか知っておかなきゃいけないからな。


「ん・・・えっと、レベルは11でスキルは『片手剣Lv12 二刀流Lv13 ステップLv10 強撃Lv10 察知Lv12 受け流しLv10 パリィLv10 飛刃Lv10 根性Lv10 狂化Lv10』かな」

「物の見事に攻撃一辺倒だな。防御は無視か?」

「無視してない・・・パリィと受け流しがある」


パリィは武器で攻撃を弾くスキルだ。相手の体勢を崩すための、攻撃的な防御スキルだ。


「まあ、そんなもんだとは思うけど。折角の攻撃特化を活かさなきゃ」

「そうそう・・・次はあなた」

「ああ、そうだな。俺は『クロスボウLv13 精霊魔法Lv10 チャージLv10 遠視Lv14 MP消費減Lv12 ステップLv10 魔力感知Lv11 蹴りLv10 急所打ちLv9』だな」

「そっちこそ、攻撃一辺倒・・・防御スキルなし」

「いいんだよ、遠距離なんだから。ステップで事足りる」

「それもそう。そんなことより、早くクロスボウの製作者に会いにいく。・・・約束」

「分かってるって。今から行こうか」






ダートとの約束により、天火さんに会いにいく。勧誘どもがいなきゃいいけど。



天火さんの露店に到着する。幸運にも、勧誘どもはいなかった。天火さんが追い払ったのだろう。


「おう、テル。エイムシューターはどうだ?」

「すごいですよ!蹴りながらでも使えますし、威力が半端ないです!」

「ふふん、そうだろうそうだろう。大事に使えよ」

「はい!それはおいといて、今日は天火さんに紹介したい人がいるんです」

「ほう、客か?」

「はい。えっと、こいつです」


俺の後ろに隠れてたダートを引っ張り出す。何で隠れてんだよ、お前が紹介して欲しいっていったんだろ。


「・・・いきなりは厳しい」

「はあ...。ちゃんと挨拶しろよ」

「分かってる・・・こんにちは、武器作ってください」

「・・・まあ、いいが。ステータスはどんなふうに振ってるんだ?」

「えっと・・・Str、です」

「いや、Strだけじゃ分かんねぇよ。他はなんだ?」

「だから・・・Strですって...」

「・・・ちょっとこっち来い」


露店の裏へと引っ張られていく。何だ何だ?


「おい、テル。もしかして、あいつも極振ってんのか?」

「そうですよ。ちなみにStrです」

「・・・はあ。極振りは極振りに引き寄せられでもするのか?」

「さあ、どうなんでしょうね?」

「まったく...」


ブツブツ呟きながら戻っていく天火さん。最初に言っておけばよかったな。


「あー、ダートだったな。Strに極振ってるのか?」

「・・・はい」

「そうか...。今使ってるやつを出せ」


ダートが剣を差し出す。それを一目見た天火さんは、


「あー、駄目だわこれ。今すぐ別の武器に変えなきゃ駄目だ」

「え!?・・・どうして?」

「どうしてって、そんなん言うまでもないだろ...」

「?・・・(チラッ)」


え、何で俺の方を見んの?説明しろってこと?


「えーっと・・・その剣じゃ、ダートのStrを活かせないってことじゃないか?」

「ああ、そうだ。Strに極振ってるのに、普通の武器を使ってちゃ意味ないだろ」

「・・・どうすればいい?」

「んーっと、こいつはどうだ?」


天火さんは後ろに立てかけてある、大剣を二振り持ってくる。細めの剣だから、クレイモアってやつだな。


「大剣?・・・それだと、二刀流が出来ない」

「出来ると思うぞ。片手で持ってみろ」

「はい・・・あ、持てた」


普通の剣みたいに、軽々と大剣を持つダート。大剣二刀流なんて派手だな。俺とは大違いだ。


「ほら、出来ただろ。Strが高いと、重い武器を片手で持てるようになるんだ」

「はあ、そうなんですか。それじゃあ、鎧の重さはどうなるんですか?Strが高ければ、軽々動けたりするんです?」

「いや、それはないな。確か鎧はAgiにマイナス補正がかかるんだったと思う。まあ、鎧を着るような奴はAgiに振ってない奴ばかりだし、そんな欠点という感じじゃないな」

「へえ。そんな中で、Dexに極振ってる俺は」

「馬鹿だな。というか、正気の沙汰じゃない」

「ほんとそう・・・私の方が、まだマシ」

「マシなだけだからな?ダートも俺と似たようなものだからな?」






大剣を二つ買ったダートと一緒に、エントの森に向かう。来るべきボス戦に向けての、レベル上げと連携の練習だ。連携っていっても、ダートが抑えて俺が撃つだけだ。


隣を歩いているダートは、買ったばかりの大剣を嬉しそうに振り回している。それはいいんだけど、ダートはStrに極振ってるので、顔の近くを素通りするたびにヒヤヒヤする。


「えっと、ダートさん?嬉しいのは分かるけど、当たったら危ないから遠くで振ってくれるかな?」

「私がテルに当てるとでも?・・・そんなふうに思われてたんだ...」

「いや、ダートの腕は信用してるよ!」

「なら気にしないで、隣を歩いてて。大丈夫、ぶつけることは絶対にないから」


妙に饒舌だな。いつもなら、ちょっと溜めがあったりするのに...。そんだけ自信があるってことか。リアルでも何かやってるのかな。リアルのことを聞くのはマナー違反だから、聞きはしないけど。


「分かった、なら安心して歩いてるよ」

「ん・・・こんな大きい剣は使ったことがないから、早く慣れたい」

「ふーん。あ、敵だ。多分エントで50m先に二体、二時の方向。ここからじゃ木が邪魔で撃てないな」

「・・・なら、近づいて私が斬る」


エントとの距離が5mほどに近づくと、ダートが素振りを止めて構える。アーツを使うのか?そう考えていると、ダートがクルッと回り剣を振る。剣閃が走り、5m先にあった木を切り倒した。・・・はい?


「えっと、何をしたんだ?」

「飛刃を使った・・・効果知らない?」

「いや、字を見れば分かるが...。木って、普通斬れるのか?」

「飛刃の威力は、Str依存・・・私だから、出来ること」

「射程は?」

「5m。・・・短いから、遠くのは任せた」


これは・・・無双できそうだな。大量の経験値を稼ぎましょうか!







感知に引っかかったモンスターを倒し続ける。俺が先制して、倒しきれなかったらダートが潰すっていう感じでやっていたら、本当に経験値稼ぎが捗る。


「またいたぞ。50m先11時方向に三体、エントだな。狙えるから、撃っちゃうぞ」

「ん・・・いいよ」


精霊魔法を使って、エントがいる辺りを撃つ。隠れてると、急所が分からないから面倒だな。

今回は胴に当たったようで、擬態を解いて走ってくるエントたち。そんなに速くないので、もう一発、別の個体に撃っておく。今度は急所(エントの急所も目だった。眼球はないのに)に命中する。


「おし、交代」

「ん」


ダートが前に出て、剣を構える。近づいてきたエントたち目がけて、二つの剣から刃を飛ばす。


「「ギィィィ...」」


刃はエントたちを両断し、地面を切り裂いていった。俺たちが通った後には、こういう跡が多く残っている。・・・何か、噂になってそうだな。地面に残った謎の傷!新手のモンスターか!?って。


「ふう...。・・・あ、レベル上がった。今15」

「やっと追いついたか。俺はもうちょっとかかりそうだな。今日はここまでにしとくか?」

「そうしとく。もう七時」


あ、もうそんな時間なんだ。そろそろ止めといたほうがいいな。やりすぎて禁止にされても困る。


「街に戻るのも面倒だな...。セーフティーエリアのほうが近いから、そっちに行ってログアウトしよう」

「賛成」


そうして、今日はログアウトした。初めてのパーティー戦闘だったけど、割と上手く出来た。まあ、戦闘っていうより虐殺だったけど。ボス戦ならちゃんとした戦闘になるだろうから、それに期待だな。






「ボス部屋が見つかりました!」


またもや夕食の後、仁美が話しかけてきた。ボスが見つかったようだ。


「見つかったんだ。どこにいるの?」

「えっと、ここらへんです」


ノートPCを開いて、森のマップを指差す。ここら辺はまだ行ったことがないな。明日、挑んでみるか。


「お、ボスか?俺も明日倒しにいくんだよ。一緒にやらないか?」

「私のところも、まだ一人足りないんです。ちょうど遠距離攻撃が出来る人が欲しいので、一緒に倒しに行きませんか?」


二人が同時に俺をパーティーに誘い、睨み合う。なんか修羅場みたいだな。けどもうダートがいるから、断らなきゃな。


「あーっと、俺もパーティー組んだんだよね。まだ二人だけど。だから、パーティーは組めないや。ごめん」

「あ、そうだったんだ。良かったね、孝昭さん」

「でも二人か...。人数によってボスの強さは変わるとはいえ、ちょっと厳しくないか?」

「やってみなきゃ分かんないよ。かなり強いしね」


かなり扱いづらいはずのStr極振りを、ダートは上手くコントロールしていた。普通の戦闘も見せてもらったのだが、


〜回想〜


「普通の戦闘・・・見たいの?」

「さすがにボス戦は、ちゃんとした戦闘があるだろうしな」

「分かった・・・頑張る」


どうせどいつと戦っても、一撃で倒しちゃうんで、どうせなら複数の相手と狼三体を相手にしてもらったのだが、


「「「グルァアアア!!!」」」

「・・・どっせい」

「「「ギャアァァァン!?」」」


横薙ぎ、袈裟切り、逆袈裟と高速で一体一体に斬撃を叩き込み、瞬時に撃退してしまった。普段から矢を目で追ってなかったら、腕の動きさえ見えなかっただろう。


「どう?」

「・・・なんというか、同じ極振りとは思えないな」

「そっちも同じ・・・毎回目に撃つって・・・鬼、悪魔」

「ならダートは鬼神だな。Str極振りだと、あんなことが出来るのか」

「ただ極振ってるだけ無理・・・鍛錬の賜物」

「へえ」


〜回想終わり〜


やっぱり何かやってるみたいだ。あの強さも頷ける。


「へえ、会ってみたいな」

「兄貴のパーティーの人も見てみたいな。あ、仁美もだよ」

「じゃあ、今度一緒にやってみる?パーティー同士で戦うイベントもあるらしいし」


パーティー同士の戦闘か...。二人じゃ厳しい。もっと人を集めないとな。






「黒江、あんまりゲームばかりしてては駄目だぞ。程々にな」

「分かってる・・・けど、面白い人に会えた」

「ほう、面白い人か。どんな奴だ?」

「・・・秘密」

「なるほど、そういう関係なのか」

「違う・・・まだそんなに知らないだけ」

「まあ、そんなことだろうと思った。ちゃんと話してるか?黒江は昔か口下手だからなぁ...。小学生の時、祥子ちゃんとも...」

「そ、そんな昔のこと忘れた」

「じゃあ、中学の華さん...」

「ご、ごちそうさま。・・・そうだ、後で稽古つけて」

「ん、いいぞ。どうした急に」

「強い敵と戦うんだって・・・もっと強くならないと」

「その面白い人は、そんなに強いのか?」

「・・・強いというより、怖い」


黒江の脳裏には、モンスターの目を撃ち抜くテルの様子が浮かんでいる。


「ふーん...。じゃあ、皿を片付けたら道場に行くか」

「ん・・・」


二人ボスを倒すのは難しい。防御スキルを持ってないテルが攻撃をうけたら、即死するのは確実だ。私が気を引きつつ、ダメージを与えていかないと...。そう考えながら、皿を洗う黒江だった。


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