少年は新武器を手に入れる
ハイペースで書き上げられたので、投稿します。
「そいや!」
「シャアアァァァ!?」
森に入ってから、三時間ほどたった。ただいまデッカイ蛇と戦闘中です。いや、本当にデカイ。絶対3mはある。
「せいや!」
「はぁ!」
俺が撃った矢が、蛇の目に命中する。暴れる蛇にクレイとセイレンが、アーツを叩き込む。
「シャァァァ...」
崩れていく蛇が断末魔をあげるのを聞きながら、魔力感知に目を移す。近くに動く敵はなし。一息つけそうだ。
「相変わらず、あの蛇と戦うのは緊張するな」
「本能的にね...。あの大きさは少し怖いわ」
丸呑みされそうで近づきたくない。クロスボウにして良かったと、改めて思いました。
「そういえば、ここにはテルの武器の素材集めに来てたんだったな。どのくらい集まってる?」
「うーんと・・・もう両方30個以上ずつあるから、十分なんじゃないかな」
こんだけあれば、多少は安くなるだろ。二人にドロップしたのもくれたから、けっこうな数が集まった。
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名前 まっすぐな木
レア度 1
ハードエントの胴体部分。強い個体ほど、太くて大きい。
名前 サーパントの皮
レア度 2
サーパントの皮の一部。ちょっとやそっとの刃物では、傷がつかない。
名前 セアカドクグモの糸
レア度 1
強靭なドクグモの糸。よく伸び細くして重ねれば、ワイヤー並みの強度に。
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ドクグモの糸は、弦に使えるかも。数個あるから一緒に渡しておこう。
「そうか、ならそろそろ戻ろう。レベルが上がったから、新しいスキルを選びたいし」
「少しは当たりをつけてるんだけど、実際に使ってみないと分からないしね。防具も買いたいわ」
「悪いな、俺の用事に付き合わせて。今度なんかあったら、俺も手伝うよ」
こうして、二人とのはじめてのCNWは無事に終わった。明日からは一人かな。今日のうちに、スキルを調べておこう。
クレセントに戻って、天火さんの露店に向かう。まだいると良いけど。
「お、戻ってきたな。首尾はどうだ?」
「けっこう集められましたよ!これならいけるはずです!」
「よし、じゃあ見せてくれ」
とりあえず、ドロップしたアイテムを全部見せる。しばらくそれを見て
「・・・こんだけあれば十分だな。そんじゃ、これらアイテムと3000エルでクロスボウを作ってやるよ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
エルとアイテムを、天火さんに送る。これでようやく初心者武器から解放される!
「出来るのは明日になるな。完成したら連絡するよ」
「あ、じゃあフレンド登録してくれませんか?まだ少ないもんで」
「・・・まあいいか。俺から出すぞ」
天火さんからのフレンド登録を受諾する。初めての知り合い以外のフレンドだ。
「ありがとうございます。それじゃあ、また明日」
「おう。9時にはログインしてるから、そんくらいに入ってきてくれ」
「はい。ここでログアウトしてもいいですか?」
「いいぞ」
そうしてCNWサービス初日は終了した。いやー、明日から楽しみだ。
「CNWはどうだ、おもしろいか?」
夕食の時、親父がそんなことを聞いてきた。まあ、自分が買ってきたものだし気になるのだろう。
「すごいですよ!景色がめっちゃ綺麗で、モンスターも本物みたいにリアルですし!」
「戦闘も自分で動かしてるから、臨場感も半端ないです!本当にありがとうございます!」
「いいって。買えたのも知り合いのコネだったし」
ズズズッとみそ汁を飲む親父。うちの夕食には、必ずといっていいほどみそ汁が出る。俺が好きだからだ。みそ汁うまー。このしょっぱさが堪らんね。
「コネって、そういえば何のお仕事をしてるんですか?」
「そんなことも言ってなかったの?最初に言っておけよ...」
「智美が教えてると思って、言ってなかったな。俺はデンタープロの広報担当なんだ」
「「デンタープロ!?」」
デンタープロはVR機(正式名称はDreamersって言うらしいが)を開発して、売り出している会社だ。親父はそこで働いてて、開発部にも知り合いがいるらしい。そこのコネで手に入れたようだ。
「そうだったんですか...。情報は」
「それはさすがに言えないな。ごめんね」
「いえ、当たり前です。ごちそうさまでした」
「俺もごちそうさま。美味しかったです」
「ふふっ、ありがと。頑張ったかいがあったわ」
翌日、8時からログインする。天火さんに会う前に、クレセントの街を見て回ってみようと思ったのだ。
その前に、昨日パソコンで調べておいたスキルを取得する。
昨日のエント狩りで俺のレベルは12まで上がった。LPはもちろんDexに全振り。スキルは『クロスボウLv13 精霊魔法Lv10 チャージLv10 遠視Lv13 MP消費減LV11 ステップLv9 魔力感知Lv10』となった。10から上がり辛いってのは本当だな。3Lvしか上がらなかったし。
取得するスキルというのは、『蹴り』というスキルだ。ソロで活動する時用の、近づかれても敵を捌けるようにするスキルだ。文字通り、蹴りにシステムアシストがかかるものである。クロスボウを持ったまま攻撃するには、もう蹴りしかない!って感じだ。これは1SP。
さらにもう一つ、『急所打ち』ってスキル。敵の急所があるところが分かるようになり、そこに攻撃を命中させると1%の確率で即死させるスキル。まあ、俗にいうクズスキルだな、俺以外には。ありあまるDexにより急所は狙い放題。これもレベルが上がれば確率は上昇していくらしいので、きっと役に立つようになると思う。これは3SP。
スキルを取り終わったので、散策を開始する。今までは中央広場から北門のほうにしか行ったことがないから、けっこう楽しみだ。南のほうはNPCの店が軒を連ねてるらしいし、東のほうには生産のための施設が。西は色々ごっちゃになってると、兄貴と礼二から聞いた。あとまだ回復薬を買ってなかったから、どこで帰るか見ておきたいってのもある。ずっと後ろで撃ってるだけだったから、皆にあげてしまった。今は有り金全部、クロスボウに使っちゃったから買えない。これからは計画的に使おう...。
「やばい、迷った...」
しばらく街を歩いて、ちょっと気になって裏路地に入ったのはいいのだが...。ものの見事に迷ってしまった。何で外国の街って、こうも路地が張り巡らされてるんだよ...!
今は8時40分前。早くしないと、天火さんと約束した時間に遅れてしまう!遅刻、ダメ、ゼッタイ!
どうにかして大通りに戻らないと!と、小道の角を曲がったところに、
『ハマン蹴術道場』
なる、いかにも道場らしい小さな建物がある。蹴術って蹴りのことだよな...?蹴りに関係した何かが学べるのかも。
・・・行ってみたいな。でも、時間が差し迫ってる。間に合わなくなるかも...。もう一度は来れないだろうし...。どうするどうする...!?
・・・ちょっと寄るだけ、道を聞くだけだ。ちょっと顔を出してすぐに戻れば、間に合うはず。ほんの少し、顔を出すだけなんだから!
「失礼しまーす...。誰かいませんかー?」
引き戸を開けて、少し顔を出して声をかける。シーンとして、誰の声も返ってこない。留守か?
「すいませーん」
「はいはい、何でしょうかー?」
再び声を掛けると、若い男性らしき声が返ってくる。すぐにひょろっとした男の人がやってくる。
「道場って書いてあるのを見て来たんですけど...。ここで蹴術を教えてもらえるんですか?」
「・・・もしかして、入門希望者?」
「そうですけど...。もしかして、やってません?」
「いや、やってるよ!ようこそ、ハマン蹴術道場へ!歓迎するよ!」
握手をして中に入れてもらう。って、そうじゃない!とりあえず道を聞かないと!
「す、すいません!入門はしたいんですけど、ちょっと用事があって...。後でまた来るんで、とりあえず大通りまでの道を教えてもらえませんか?」
「あ、そうなんだ。大通りには、うちの表から出られるよ。また来る時も、そこから入ってくれば良いよ」
表に行くと南の大通りに出た。大通りに面してる方には、『ハマン裁縫屋』という文字が。裁縫師が蹴りを教えられるのか?
「えっと、何とお呼びすればいいですか?」
「ハマンでいいよ。今度はこっちから入ってきていいからね」
「分かりました。それじゃあ、また後で」
「うん、待ってるからね」
よし、これでこっちは大丈夫だな。早く天火さんのところに行かないと!
「おー、来た来た。もう出来てるぞ。・・・どうした、ずいぶん息が切れてっけど?」
「はあ、はあ...。ちょっと遠くまで行ってたので、急いで来たんです...。ステップで来たから大変でした」
「極振りってのは、そういうとこが不便だよな...。まあ、その苦労のこれで報われるぞ」
「どうですか、上手く出来ましたか?」
「今の段階では、最高クラスの武器だと自負している。安心していいぞ」
そう言ってウィンドウを操作すると、俺の前に一つのクロスボウが出現する。
初心者のクロスボウに比べて少し長く、茶色の木肌が眩しい。弓の部分も今使ってるのより大きいから、威力が上がるだろうな。弦は白いから、ドクグモの糸を使ってんのかな。ストック(銃床)は近代的な銃の様な感じになっており、引き金もクラシカルなレバーではなくトリガーになっている。
「データはこんな感じだ」
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名前 未決定
威力 33
レア度 4
製作者 天火
エントの木材がふんだんに使われた、近代仕様のクロスボウ。ボディを長くすることで、威力が
上がっている。
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「・・・」
「どうだ、すごいだろ。めっちゃ威力が上がったぞ!」
「・・・こんなに上がるもんなんですか?」
「クロスボウだからだろうな。元々威力は高い上に、今回は材料もかなりあった。満足のいくやつ出来たよ」
「それは良かったです。俺もいい武器が出来て嬉しいですしね。名前が決まってないのは?」
「ああ、それな。折角のサービス開始初のオーダーメイドだから、使う人に決めて欲しくてな。そんなわけで、名前をつけてくれ」
俺の前に、キーボードが現れる。いきなり名前を決めろって言われてもなー...。うーん....。
パッと思いついた名前を、キーボードに打ち込んで天火さんに見せる。気に入ってくれるといいんだけど...。
「どれどれ・・・TW01エイムシューター?エイムシューターは分かるけど、TWって何だ?」
「Tenka's Weaponの略ですよ。天火さんが作ったんですから、のせときたいなって」
「・・・製作者のとこを見ればいいだろ。自分の作った武器に自分の名前をつけるなんて、恥ずかしいだろ...」
「そうですか?じゃあ、エイムシューターだけに...」
かっこいいのになぁ、TW。ブランド名みたいで。まあ、本人が嫌ならしょうがな
「ま、まあそんなにそれがいいなら、つけさしてやらんこともない」
「え?」
「だ、だからその名前で良いって言ってんだよ!早くしないと、俺がつけるぞ!」
早くしないと怒られそうだったので、さっさと名前を打ち込む。
「はい、できました」
「おう、これでこいつは今からお前のもんだ。大事に使えよ」
「はい、ありがとうございます。また新しいのを作ることになると思いますから、そのときはよろしくお願いします」
「ああ、作ってやんよ。そういえば、防具に関してなんだけどな。知り合いに腕のいい奴がいるから、そいつに作ってもらったらどうだ?」
「金が貯まったら考えます。じゃ、また」
「またな」
こうして俺は、新しい武器を手に入れたのだった。道場に行った後、試し撃ちに行こう。