少年の冒険はここからだ
すいません、これで一応の最終回です...。
「ミィ、どういうこと!?」
「多分隠形か何かで隠れてたんでしょうけど・・・罠だと思ってたんですよ!表示がほとんど違わないから!」
「それより、セイは大丈夫なのか!?」
「あ、ああ。何とかね...」
くそ、急所打ちは発動しなかったか。このまま押していくぞ、流れを保つ!
勇者は目に矢を刺したまま立ち上がる。HPもそこそこ削れていて、残り7割ちょいといったところか。
それを見た他のメンバーたちは、
「この下種野郎!」
「セイの顔を傷つけるなんて・・・万死に値する!」
「ぶち殺してやる!」
「皆殺しですわ!」
「せ、セイさん今回復します!」
うっわー...。めっちゃキレてるよ、復讐に燃えるバーサーかーといった様相だ。何か、見てるほうとしてはアホらしいな。
「どこですの、セイを撃った下郎は!?」
「ここだぞ」
攻撃したので、すでに隠形は解除されている。見りゃ奥を見れば分かるはずなのに、それが出来ないほど頭に血が昇っているんだろう。チャンスだな。
女騎士とレイピア使いが、俺に向かって駆け出す。が、その前にシルバとダートが立ちはだかる。
「「邪魔どけ!」」
「「(・・・)誰がどくか!」」
女騎士にはダートが、レイピア使いにはシルバが相対する。どちらもこちらにとっては相性が良く、相手にとっては悪い。入れ替わろうとするが、ダートとシルバは上手く立ち回ってそれを許さない。勇者がいなけりゃ、前衛陣はこちらが圧倒的に有利だな。
フォレグの罠を見破った弓持ちも俺を射ようとするが、フォレグが突進で肉薄する。避けながら攻撃するには難しいと判断したのか、とりあえずフォレグの相手をしている。そのまま引き付けといてくれよ。
「死になさい!」
攻撃役の魔法使いが杖を振るうと、突風が吹き始める。全体攻撃魔法!?やっば!
「ルージュ!」
「準備出来てるぜ!」
ルージュが風の刃を、今にも魔法を放とうとしている奴に向けて放つ。こっちのほうが、詠唱もスピードも速い!
刃が命中すると、相手の詠唱は中断させられる。ふう、危なかった...。全体攻撃なんて、1回でも使われたらアウトだぞ。気をつけないと。
「というか、ルージュは使えないのか?」
「使えるけど、詠唱が長くてあまり使わないんだよなー」
「いや、使ってくれよ。Dexないんだから、そっちのほうがいいだろ」
「そしたら、あいつの魔法を邪魔すんのは、誰がやんだよ」
「俺がやりゃいいだろ、目か口を撃っておけばしばらくは大丈夫だろうし」
「えげつねぇな...」
「俺にとっては褒め言葉だな!」
そうしている間にも、勇者の回復は終わったようだ。矢は抜かれていて、HPも全快。目を攻撃されたら、片目の視野が潰れるとか、そういう状態異常も実装してほしいね。今の場合じゃ、矢を抜いてしまえば今までどおり戦えるからな。
「ごめん、油断してたよ。この試合、絶対に勝とう!」
「ああ、もちろんだ!」
「当たり前でしょ!」
うわ、前衛2人の顔が勇者の復帰で180度変わったよ。さっきまでは般若のような表情だったのに、今は満面の笑み。何あれ百面相?気持ち悪!
前衛が3人になったからか、はたまた勇者が復帰したからか、今度はシルバたちが押されだした。元々いた2人の動きも、格段に良くなっている。これでアーツを使われたら、ちょい厳しいかな...。
「フルン、回復準備は?」
「即時発動可能ですよ!」
「よし、とりあえずシルバのHPを回復。勇者がアーツを使ってきたら、間をおかないですぐに回復してくれ」
「了解です!」
「ルージュ、全体魔法は?」
「もうちょいだ!それより、相手のほうはどうなんだ!?」
「向こうも詠唱中、俺が妨害するから詠唱が終わったらすぐに発動してくれ」
「おう!」
よし、とりあえず相手の魔法使いを潰しておこう。女の子の顔を狙うのは心苦しいけど・・・まあ、やるしかないか。すでに好感度はどん底だし、今更下がりようもないっしょ。気にしない、気にしない。
魔法使いなので口に狙いを定めて、チャージ・精霊魔法を使い、さらに轟砲を重ねる。放たれた矢は赤い光となって、相手の口を貫いた。一気にHPバーは落ち込んでいき、残り2~3割といったところで止まる。なんとか堪えたと思ったのも束の間、突進をかわされたフォレグがそのまま突っ込んできて、魔法使いを槍で貫く。その一撃で、HPバーは全て削り取られた。
「セルフィーユ!!!」
勇者が、まるで戦場で許婚が殺された兵士、のように魔法使いの名前を叫ぶ。・・・俺たちとあいつらの間には、大きな温度差があるな。
「くそ!許さないぞ、お前ら!」
「ええぇー...」
「何なんですか、あれ。一種のロールプレイングですか?」
「多分、そうなんだろうけど...。それにしても、役に入り込んでるなー」
「とりあえず、全体魔法を発動しとくぞ」
突風が勇者たちを襲う。その風自体が刃のようなものみたいで、衝突した勇者たちを切り刻んでいく。
女騎士と勇者はダメージを負っただけで済んだが、レイピア使いは速度を重視した軽装だったため、風にあおられて体勢が崩れる。それを見逃すダートではない。両手で持ち直した大剣を、レイピア使いの胴に叩き込む。もろに直撃したので、当然HPは一気に全損。残り4人!
「モコ!」
「せ、セイさん。ミィが!」
どうやらフォレグが弓持ちを倒してしまったみたいだ。こっちに比べて静かに戦ってるから、全然気づかなかったよ...。
「そんな、ミィまで...。う、うおおおおおお!!!」
残り3人になった時、勇者の身に変化が起きる。突如、金色のオーラが発生し爆発。光の柱となって立ち上る。え、何あれ?仲間がやられた怒りで真の力が解放される、っていうパターン?まあ、かなり強いから3人やられてなくても不思議ではないけど...。何で今なんだよ!?そういう仕様なの!?運営、絶対に俺たちに悪意持ってるだろ!
「これなら、勝てる!はあああああ」
勇者が力を貯め始める。剣にもオーラがまとわり、一振りの大きな光の剣となっていく。
せめて邪魔くらいはしてやろうと、轟砲を放ってみたのだが、女騎士が勇者の前に立ちはだかり攻撃が届かない。ダートも攻撃しているけど、さすがにガードが堅い上、回復役は未だ健在。さすがの倒しきれないか...!
その間にも、勇者の光剣は大きくなっていき、ついに完成する。天にも届かんばかりの、巨大な光剣だ。
「いっけーー!!!ビクティムブレイドォォォォ!!!」
光剣が振り下ろされ、あまりの眩しさに目を逸らす。ズドォォォォン!!!と大地を切り裂く音を聞きながら、犠牲剣って酷い名前だなー、と思いながら俺のHPは消し飛ばされた。
『パーティー戦優勝チームは、セイ選手チームです!』
闘技場へと死に戻った俺たちは、隅っこで優勝トロフィーらしきものを渡される勇者を見ていた。優勝したパーティーしかやらないみたいだな、良かった。あういうのはどうも緊張しちゃっていけない。賞品はもらえるし、トロフィーなんて置く場所はないからな。もらい損になっちまう。
「やっぱり釈然としないよー。何で、突然あんなに強くなるの?」
「そうですね、いくら何でも都合が良すぎますよ。大会の決勝戦で、真の力が解放なんて。あんなの、ゲームバランスが崩壊しちゃいます」
「いいことばかりではないみたいだぞ。何でも、使った後数日はステータス大幅下降だと。しばらく戦えないそうだ」
「でもー」
「まあ、肝心なところで都合よく話が展開するのが、勇者だからな。いまさら何を言っても、負け惜しみにしか聞こえないよ」
「ん・・・元々、優勝は狙ってない」
「別に準優勝でもいいだろ、十分良い物をもらえるはずだよ」
「俺は、あのアーツを体で受けられただけで十分だ!」
「ああ、確かギリギリ耐えたんだったな。よくあんなの受けきれたな」
「いや、まだまだだ。あのアーツを受け流せるくらいにはならないと!」
「シルバ。どこを目指してるんだよ...」
表彰式では、勇者が個人戦でも優勝した云々を話している。アルンの仇、取れなかったな...。それだけが心残りだ。
「テルさん!」
「おーい、テル!」
そう思っていると、兄貴とアルンがやってきた。
「悪い、アルン。負けちゃったよ...」
「いいんですよ、あれはしょうがないですって。途中までは絶対に優勝できると思ってましたもん」
「あれは最早チート級だよなー。運営もやりすぎたって思ったのか、攻撃範囲を縮小するらしいぞ」
「なら良かった。あれじゃ、ほとんど全体攻撃を同じだからね。かわしようがない」
「ですよね。それで、テルさんたちはこれからどうするんですか?」
「そうだな...。グラーディー以北のエリアも開放されるみたいだし、そっちに行ってみるとするよ」
「そうですか...。あの、後でお話したいことがあるんです」
「何?」
「その、この前関係ないって言っちゃったことについて...」
えーっと、兄貴がアルンの部屋に入って何かやってたことだよな。あれなら...。
「アルンがゲームとかマンガとかアニメとか、そういうのが好きってこと?」
「はい、そうです・・・って、何で知ってるんですか!?」
「いや、智美さんにアルンの趣味を聞いたら『孝昭君と同じやつよー』って言ってたから...。アルンに関係ないって言われた、すぐ後」
「お母さんめ・・・同じやつ?」
「うん、俺も好きだよ。いわゆるオタク系?」
「そ、そうだったんですか!?そんな素振り、全然見せてなかったじゃないですか!」
「義兄がオタクって嫌かなーって思って」
「嫌じゃないですよ!兄さん、知ってた!?」
「まあ、お前と似たような感じだったからなー。何となくは気が付いてた」
「じゃ、じゃあもう隠さないでくださいね!後で話しに行きますからね!」
「おう、待ってるからなー」
「テルも頑張れよー」
「兄貴もねー」
そうして、兄貴たちは去っていった。しまっておいたもの、全部ひっぱりださないと。
「テル・・・もう用事もないし、新しいエリアに行ってみたい」
「そうだな、早速確認しに行こうか」
「どんなやつらがいるんだろうな!?」
「兄ちゃん、あんまり飛ばしたら駄目だよ」
「むう、まだ納得できません」
「気にしたら負けだろ。ほら、さっさといくぞ」
「はぁい...」
「よし、そんじゃ気合入れて行くぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
まだまだCNWは始まったばかり、俺たちの冒険はここからだな!
前書きにも書いた通り、これが最終回と言うことになります。
色々と指摘されていたのですが、見切り発車で投稿してしまった為、どうにも収拾がつかなくなってしまい、とりあえず考えておいた武闘大会まで投稿しました。
私の都合で、こんな打ち切りマンガみたいな終り方になってしまい、本当に申し訳ありません。
VRMMOモノのリベンジはしたいので、また投稿することがあると思います。その時は、良ければ読んでください。二の轍を踏まないよう、しっかりと設定を考えておきます!
今度投稿する時はファンタジーのほうにしようと思っているので、そこのところは把握しておいてください。