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少年は本戦で戦う その1

次第に周りの景色が固定されていく。気がついたら、俺たちはどこかの丘の上に立っていた。どうやらここは草原みたいだな。

向かって右側の奥は途中で荒野になっていて、左手は森になっている。他にどんな地形があるのかは、実際に見ないと分からないかな?


まずはマップを確認、他のパーティーの位置を確認する。エリア全体に散らばっていて、ここからでは他のパーティーは視認できない。1番近いのは・・・森の中にいる奴らだな。距離はおよそ100m。


「マップにはどんな地形があるのか、載ってるんだね」

「え、ホント?それは良かった、わざわざ見に行かなくて済む」


マップを確認する。草原はエリア北部、荒野はエリア西部、森はエリア東部に位置していて、エリア中央には廃村、エリア南部は海に面した崖になっているみたいだ。1番近い位置にいるパーティーは・・・100m先の森の中だな。


「さて、どこで戦おうか。悩んでいる時間はあまりないぞ」

「ここは、バリスタを活かす戦いをしたほうがいいんじゃないか。他の奴らは知らないんだから、遠くから狙い撃ちできるだろ」

「森は駄目・・・私たちじゃ戦いづらい」

「魔法も木が邪魔で当たんないしな」

「崖の方は?海を背にして戦えば、後ろからの敵を気にしなくていいし」

「背水の陣ですね、それは1番最後の手にしたほうがいいでしょう。下手したら、戦わずして負けちゃいますし」

「森はなしとして、バリスタを使うなら草原も止めたほうがいいな。遠くまで良く見えるから、敵に見つかりやすい」

「なら、廃村?」

「だな。エリアの中央だからパーティーが集まりやすいけど・・・その分、沢山敵を倒せるっしょ」

「それじゃあ、早く移動しないと!廃村にいく前に、戦闘になったら大変だよ!」


廃村までは、大体3~400mってとこだから、そこまで行くのに数分はかかる。出来るだけ、敵を避けるようにして移動するか。






草原を突っ切り、敵を避けるよう森の中をこっそりと歩いていく。常にマップを表示させて、敵の動向には気を配る。多分、最初の数分は予選みたいに動きはないと思うんだけど...。


突然、エリアにバン!という音が響き渡る。空を見ると、空中に大きな数字が表示され、10、9とカウントが減っていく。そのたびに、バン!バン!と鳴る効果音。


「もうそんな時間か...。さっさと行かないと」

「ん・・・こんなところで戦いたくない」


ついにカウントが0になり、一際大きな効果音がなり、


『試合開始です!』


と司会の開始の合図がかかる。マップでも、3つのパーティーが動き出す。他のパーティーは、その場でとどまっているか、さっきから動いているかの2つだ。森にいるパーティーは、動いていない。待ち伏せてるな。


「森にいるのは1つだけですね。廃村にもいませんし、今のうちに陣取っちゃいましょう!」

「来ないことを祈ろうか」


それから数分で廃村に到着、今のところここに近づいてくるパーティーはなし。

廃村は、東西南北に通りが村を貫いていて、その周りに家が建っている。所々崩れているやつもあるが、まだ屋根があるものも多い。十分上に乗れそうだな。

村を通り抜けるには、その通りを抜けなければならない。迂回すればいい話だが、村を通ればかなりの時短になる。俺たちがいるから来ないかもしれないが、残ったパーティーが少なくなれば、そのうち向こうからやってくる・・・と思う。


「敵が来る前に、準備を済ませとくか」

「どこに設置するんですか?」

「2つの通路が交差する場所、村の中央だ。フルン、そのことでちょっとやってほしいことがあるんだけど...」

「何ですか?」


フルンにやってほしいことを伝える。多分、出来ると思うんだけど。


「まあ、出来ると思いますよ。けど、途中でそっちからも来たらどうするんです?」

「うーん・・・勇者ならぶっ壊すだろうなー。どっちにしろ、そうなったらどうしようもなくないか?」

「そうですね、来ないことを祈りましょうか」

「んだな。とりあえず、敵が来るのを待っていよう」


共有ボックスからバリスタを取り出し、設置する所を指定する。『設置完了まで残り3分』と新しいウィンドウで表示される。


「相変わらず、時間がかかるねー」

「それが問題なんだよなー。敵に攻撃されたらやり直しだし。女王蜂の時も大変だったよな」

「大変な分だけあって、見返りも大きいんだけどね」

「まあ、まだ誰も来てないし今回は大丈夫だよ。でも、ここじゃ両側から敵が来たら、囲まれちゃうんじゃない?」

「そっちはフルンに任せてる。ちゃんとやってくれるよ」


バリスタは、設置完了までこのまま放置。他のパーティーの様子を見ておこう。

マップを見ると、4つのパーティーが衝突していた。崖の方と荒野でだ。他のパーティーも移動を開始しているが、森にいた奴らは相変わらず動きがない。

草原のほうにいたパーティーが、森の方から南へと移動し始めている。このままだと、廃村を通るかも...。


「ダート、シルバ。北からパーティーが来そうだ、あっちで構えといてくれ」

「ん・・・他の場所からは、入ってこない?」

「どっかの通りからしか入れないし、他の場所はフルンに対策してもらう。気にせず、前にだけ集中してくれ」

「ん・・・頑張る」

「どいつらだろうなー!やっぱ、勇者がいいよな!」

「「「やめて!」」」


変なフラグが建っちゃうから!シルバが言うと、マジで来ちゃいそうだから!

バリスタが設置されるまで、後1分半。草原からのパーティーが来るまで、およそ1~2分ってところだな。ギリギリ設置出来るかどうか、ってとこだ。


そして、ついにそのパーティーが姿を見せる。俺たちのことはマップで確認していたみたいで、武器を構えた万全の体勢でゆっくりと近づいてくる。

廃村の通りは、横幅5mほど。シルバが盾を構えていたら、ダートは横には剣を振れないな。


どうやら、この通りは中心のほうが少し低くなっているみたいで、後衛から相手のパーティーの頭がちょい見える。ルージュは、敵が見えないと魔法が放てないだろうし、ちょうどいい具合だな。俺も、相手が見えたほうが撃ちやすい。でも、村としてこの地形はいいんだろうか?雨水が全部中央に流れ込んでくるぞ。・・・だから廃村になったのかな。


「よし、弦を引いてくれ」

『Yes master』


天火さんが作ってくれたバリスタは、クロスボウと同じく弦の張力を使ったものだ。もう1つ、カタパルトみたいにロープの回転力を使って弦を引っ張るものもあったのだが、クロスボウのノウハウを使えるのでそっちにしたらしい。台座の前方にはガードがついているので、相手が矢を射ってきても大丈夫。弦は蜘蛛の糸をいくつも紡いで、1本の太い弦にしている。いやー、蜘蛛の糸を集めるのは大変だったなー。強者の風格はドロップアイテムは増えないから、1人でこつこつと集めるしかなかったし。納期までに間に合いそうになかったので、わざわざ店で買ってきたりと。くそ、狩りで手に入るものを買っちゃうなんて...。悔しいわー...。

このバリスタはゴーレム仕様となっていて、弦を引くのと方向転換は全部ゴーレムがやってくれる。スピードはそんなに速くないけど、俺じゃあ出来るわけないし...。他にもレバーとか、色々方法はあったんだけど、これが1番スタミナ的にも効率がいい。核は台座横側のど真ん中についていてるので、壊される心配も少ない。見た目は悪いけどね。


ギリギリギリと引かれていく弦、前を見るとシルバが相手の前衛とぶつかっていた。と、同時に後衛は詠唱を開始。


「魔法には気をつけろよ!フルン、周りに他のパーティーは?」

「来てません!」

「なら、シルバに耐性支援をしてくれ!とりあえず、火・風!」

「了解です!」

「はい!」


出来るだけMPは温存したいけど・・・やられてしまっては元も子もない。魔法の効果はしばらく続くから、次の戦闘くらいまでは持つと思う。


ゴーレムが弦を張り終わったので、ボックスから矢を取り出す。クロスボウの矢とは、比べ物にならないほど大きい。これが人に当たったらと思うと・・・恐いわー。

矢を番えて、台座を起こしてもらう。発射までの準備はゴーレムが。そこからは、俺の仕事だ。チャージしとこう。

遠視で相手の居場所を捉える。まずは後衛を狙いたいのだが・・・前衛がうろちょろ動いて邪魔だ。


「シルバ、ダート!」

「おう!」

「ん」


シルバが後ろに下がったと同時に、ダートが前に出、そのまま一気に左から右へ薙ぐ。前衛の1番左、盾を持ったプレイヤーが受け流そうとするが、そこはダートのStr。力に任せて、無理矢理剣を振り切る。そのまま止められると思っていた他の前衛は、まともに横からの剣で吹き飛ばされる。

そのままダートは横へ転がり、俺の前方には後衛のみだ。こいつらもオーソドックスな編成で、魔法使い2人に弓持ち1人。予選と同じように、最初に潰すのは魔法使いだ。

今まさに、詠唱を終えようとしている奴に狙いをつける。まだまだ撃った経験自体が少ないため、安牌を切って胴を狙う。Vitは低いだろうから、わざわざ頭を狙う必要はない。魔法が発動する前に、ゴーレムに発射を命じる。


バシン!と乾いた音が響き、一直線に矢は飛んでいく。矢の軌跡を目で追っていくと、ちょうど魔法使いの腹に矢が突き刺さるところだった。

くの字に体を折り曲げて、吹き飛んでいく魔法使い。そのままゴロゴロと転がり、廃屋にぶつかって止まった。HPも一気に全部吹き飛んでいる。いよっし、命中!


「次射に備えて、張りなおせ!」

『Yeah!』


再びギリギリと張り直される弦。俺が射抜いたのは攻撃担当だったらしく、もう1人は前衛を回復している。弓を持ってた奴は・・・フォレグにぶち抜かれてるな。予選みたいに広さ制限がないから、かなりの助走を取れる。助走が大きくなれば、その分衝突ダメージも増え槍は深く相手を貫く。まさに突撃兵だ。

ダートに横殴りにされた前衛は、すぐに体勢を立て直して攻めかかろうとする。が、そこへ詠唱を終えたルージュの魔法が炸裂。使い慣れた火の玉で、前衛たちを爆撃する。盾を持った奴は耐え抜くけれど、さらにダメ押しのダートによる攻撃。前衛3人は、あっさりと全滅してしまった。

弦が張り終わり、矢を番えてまた後衛を撃とうかな?と考えていたが、フォレグが弓持ちを倒したことで、あのパーティーは敗北になってしまった。いや、勝ったのはいいことなんだけど、あまりバリスタが活躍しなかったな...。


「勝ったー!」

「こらこら、まだ気を抜いちゃいけないぞ。試合は続いてるんだから」

「そうだった。他のところはどんな感じ?」

「んーと、荒野のほうでの戦闘は終わったみたいだな。崖のほうでは、まだやってる。草原のほうで、残ったパーティーが戦闘を始めてるぞ。そんで、森にいた奴らがこっちに移動している。すぐに来るぞ」

「うえ、マジで!?もしかして、私たちが戦うのを待ってたのか?」

「おそらく、そうでしょうね。荒野で勝ち残ったパーティーが、どこに行くのかも問題です。ここに来る可能性も、十分ありますし」

「どうする・・・同時に戦闘するのは無理」

「とりあえず、先に来そうな方に備えるぞ。多分東から入ってくるだろうから、そっちで待ち構える。開幕一番で、バリスタを叩き込んでやる!」

「んじゃ、私も詠唱しておくかな」

「あまり飛ばしすぎるなよ?」

「分かってるよ。でも、放てる時に放っとかなきゃ」

「・・・それもそうだな。んじゃ、出鼻を挫く感じで」

「「「「「了解!」」」」」


人が戦闘を終えた直後、疲弊しているところに襲い掛かる。作戦としてはいいと思うし、出来る状況なら俺もしていると思う。やられるほうからしたら、たまったもんじゃないけどな。

これから来る奴らは、俺たちが疲れていると思ってるんだろう。確かに、気を緩めるまもなくすぐに次の戦闘で、HP的には大丈夫でも精神的には厳しい。だからこそ、相手の勢いに呑まれるわけにはいかない。機先を制して、戦いの流れをこっちに引き寄せないと!


東向きの通りにバリスタを向け、矢を番えチャージを発動。最初に見えるのは前衛だろうから、一撃で落とせるよう轟砲も即時発動できるよう構える。来るなら来やがれ、俺のバリスタが矢を放つぜ...。


相手の前衛が視界に入る、そいつは・・・全身銀色だった。

すぐに轟砲を発動し、簡単に狙いをつけてからぶっ放す。とてもじゃないが、のんびり狙いを付けられるような相手じゃない!

クロスボウだと、一筋の赤い光みたいな轟砲。バリスタで放つと、レーザービームというのがふさわしい一発だった。俺を視認する前に放った攻撃、見事わき腹を捉えたのだが・・・メイルさんのHPは、3割も残っていた。おいおい、鎧は貫通してるんだぞ!Vit高すぎるだろ...。


「まだまだ終わってないぞ!」


前もって詠唱を終わらせていたルージュが、メイルさんに火の玉を降らす。ルージュにしては密度の高い爆撃だったのだが、今回はしっかり盾を構えているメイルさん。1発は盾に当たったものの、1割ほどしか削れていない。


「テルさん!あの人、火耐性上昇の魔法がかかってます!」

「読まれていたってわけか、くそったれ!」


厳しい戦いになりそうだな...。


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