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少年は画策する

「お、テル。今回はどこに行ってたんだ?」

「エルフィからさらに奥に進んだ森です。ボスも倒してきましたよ」

「・・・相変わらず、馬鹿みたいな攻略スピードだな...。まあ、南の草原のボス部屋も見つかったし、こんくらいなのか?」

「あ、見つかったんですね」

「らしいぞ。まあ、けっこう前から攻略されてたし、少し遅いくらいなんじゃないか?それに対して、お前たちときたら...」

「俺たちだって、けっこう攻略してましたよ。ボスを倒せたのだってギリギリでしたし」

「ボスの話は後で聞くとして、素材を見せて欲しいな」

「はいはい、素材ですね。今出しますよ」

___________________________________________


名前 クイーンビーの羽

レア度 4


女王蜂の薄い透明な羽。それ自体が魔力を帯びていて、加工次第では硬化する。


名前 クイーンビーの針片

レア度 4


女王蜂の針の切っ先。二重構造になっており、加工が難しい。


名前 クイーンビーの毒液

レア度 4


女王蜂の毒液。非常に人体に有害なため、扱いには注意が必要。

___________________________________________


「今回は少ないな」

「その分、取り巻きの素材が入ってますからね」

「そうなのか。そういや、罠の仕様が変わるみたいだが...。どうする、代わりの武器は決まってんのか?」

「まあ、それは後で追々話します。それより、この罠どうしましょう?」


使ってる素材は、かなり良い物だかんな。このまま売っちゃってもいいんだけど、それはやっぱりもったいない。使った素材に分解、とか出来ないのかな?


「じゃあ、分解しちまうか。どうしても量が減っちまうけど、そこは勘弁してくれよ」

「そうですか...。どうする、フォレグ。このまま売っちゃうか?」

「うーん・・・じゃあ、分解しちゃってください。レッサードラゴンの牙とか、売っちゃうのはちょっと惜しいかな」

「そんなら、罠をくれ。後で分解しとくから」

「はーい」


フォレグが罠を天火さんに手渡す。んじゃ、本題に入りましょうか。


「そんで、代わりの武器の当てはあんのか?」

「はい。クイーンビーから、初撃破報酬でドロップしたんですけど...」


女王蜂の針槍を天火さんに渡すと、


「おお、ずいぶんと軽い槍だな」

「そんなに軽いんですか?」

「元々短槍は軽いものが多いんだが、これはその中でもかなり軽い部類だな。完全に貫通一筋だし・・・でも、フォレグはこれを使えんのか?」

「突いたりは出来なかったです。抱えて突撃、なら出来そうですけど」

「なるほどな...。攻撃手段を、突撃一本に絞っちまうのか」

「シンプルイズベストです」


折角のAgiを活かさないのはもったいない、エンチャントアジリティーもあるから、槍でズドンしてもらいたい。


「まあ、今んところ出来そうな範囲なら、それが一番かな。エンチャントアジリティー以外にも、スキルを探しといたほうがいいな。武闘大会が開催されるらしいが、出る予定なのか?」

「ええ、一応。パーティー戦だけ」

「なら、色々やんなきゃいけないことがあるな」


そうなんだよなー...。ホント、色々やんなきゃいけないし。


「・・・天火さん。今、オーダーメイドの依頼は入ってますか?」

「いや、入っていないぞ。なんだ、武器を作って欲しいのか?」

「はい。バリスタを作ってください」


バリスタは古代ローマ時代からある兵器だ。クロスボウも、バリスタを小さくしたものだ。


「バリスタかー...。それは、クロスボウの範疇なのか?」

「さっき運営にメールを出しといたんで、近いうちに返信が来るはずです。大会で使いたい、とも書いといたので、早めに帰ってくると思うんですけど...。おっと」


視界の端っこに、メールの着信を知らせるウィンドウが開く。早いな、まだ1〜2時間くらいしかたってないぞ。大会関連だからかな?


「そう言っている間に、メールが返ってきました。えっと、『バリスタはクロスボウスに入っています。アーツも問題なく使えます』とのことです」

「よし、それなら問題ない。素材はあるか?」

「・・・やっぱり、木ですよね?」

「まあ、木だな。出来るだけいい素材を使いたいから、エルダーエントの枝とかがいいんだけど...」

「・・・このクロスボウを作るのに、全部使っちゃいました...」

「狩ってくるしかないだろうな」


うーん・・・一人じゃいくら何でも無理があるからな...。けど、皆を付き合わせるのは悪いし...。


「・・・また、倒しにいく?」

「いいのか?多分、買えなくもないと思うぞ」

「ん・・・ゴーレムの石、分けてもらったお返し」


ああ、そういやそんなこともあったな。来てくれるって言うなら、ありがたくお願いするか。


「んじゃ、頼むな。シルバ、明日も大学か?」

「そうだな。明日も五時にはログインするつもりだけど」

「それじゃあ、それまでひたすら狩り続けるか。量は多めがいいですよね?」

「出来るだけ多い方がいいな。最低でも10は欲しい」

「了解です、詳しい話はその時に。後は、フォレグのスキルだけか...」


槍を使うにしても、それだけじゃ物足りない。もう一声、攻撃を強化するスキルが欲しいところだな。


「んー・・・他のゲームとかでさ、槍で突っ込む時にこうブワー!ってオーラみたいなのが出て、敵を吹っ飛ばすよな?ここでも、そういうふうに出来ないのか?」


あー、何となくイメージ出来るな。どうなんだろ、あんのかな?


「範囲拡大はどうだ?槍なら攻撃範囲が小さな円になるから、多少は改善されると思うぞ」

「確かに、それならいけるかもしれないな。集団に突っ込んだら、とんでもないことになりそうだな...」


敵を蹴散らす姿が目に浮かぶな...。でも、そんなに上手くいくのか?


「そんなの、誰にも分かんないよ。とにかく試してみないと」

「それで失敗したらと思うと、尻込みしちゃうんだよな...」

「失敗を恐れてたら、何にも出来ないよ!どんどん挑戦していかないと!」


それは分かってるんだけどね。どれを取るかはフォレグの自由だし、あまり俺がとやかく言う必要はないか。


「今日中に決めて、明日の午前中に慣らしとけよ。大会で使ってもらいたい」

「了解!とりあえず、範囲拡大は取っておこうかな」


メニューに表示されている時計をみると、ちょうど18時前だった。特にやることもないし、ログアウトしちゃうか。明日はエルダーエントを何回も倒さなきゃいけないし、早めにログインしよう。


「ダート、明日は何時から入れる?」

「9時くらいから・・・途中、昼休みがほしい」

「俺も昼飯を食べるし、昼は少し休むよ。んじゃ、9時に噴水で」

「ん」






良さそうなスキルを探していたら、すぐに夕飯の時間になってしまった。感知系スキルを、どれか取りたいなーと思ってたんだけど、中々使えそうなものが見つかんないんだよな...。


「あ、孝昭君。お皿並べるの手伝ってくれる?」

「分かりました、これでいいんですか?」

「そうそう、お願いね」


食器棚から皿を取り出していると、仁美がリビングに入ってくる。・・・うん、問題ない。


「母さん、何か手伝うことある?あ、孝昭さん」

「お、おお。兄貴とはもう仲直りしたか?」

「仲直りも何も、あんな喧嘩はいつものことだし、仲直りするほどのことじゃないですよ」

「そ、そうなのか。兄妹ってのは不思議だな...」


その後も仁美と話しながら、夕飯の準備を進めていく。敬語なのは前からだし、距離を取られてるってわけじゃないよな、うん。


「・・・仁美、これとこれとこれをテーブルに並べてくれる?あと、孝昭君が持ってるお皿も」

「ええ!?ちょ、多すぎるよ!」

「いいからいいから。頑張って♪」

「手伝おうか?」

「あ、孝昭君には他の任せたいから、ここに残っててくれる?」

「もー、ホント兄さんにも手伝って欲しいよ...」


そう言いながら、両手一杯に皿を抱えてリビングに運ぶ仁美。手伝わなくても平気みたいだな。


「智美さん、料理はあれで全部はずですけど...」

「二人で話したかったの。孝昭君、仁美と何かあったのかしら?」


・・・この人もか。朝に何回も聞かれたから、そんな様子は見せないようにしてたのに...。


「そんなに様子が変でしたか?」

「うーん、あまりいつもとは変わってなかったけれど、何となく、ね」

「女の勘ですか」

「母親の勘、よ」


唇に指を当て微笑む智美さん。美人だなー、親父が惚れるのも分かるような気がするよ。こういう仕草が似合う人って、全然いないからな。


「それで、何があったのかしら?」

「そんな大したことではないんですけど...。兄貴と仁美が喧嘩してて、何が原因なのか聞いたんですけど、その時に仁美に関係ないって言われちゃって...。まあ、別に悪気があって言ったわけじゃないと思うんですけど」


我ながら分かり辛い説明だな...。ホント、何言ってんだろ...。


「だから、特に何があったってわけじゃないんです。俺の気にし過ぎなだけですし」

「・・・孝昭君がそう言うなら、私は何も言わないけど...。何かったら、すぐに相談してね?ちょっとしたことでもいいんだから」

「了解です。あ、親父が来たみたいですよ。早く行きましょう」

「そうね、待たせちゃ悪いわ」






翌日の8時半、ダートはかなり早く来るようなので、俺も早めに来てみた。噴水にはまだダートは来ていなかった、やったね!


それから15分後の8時45分、ダートが噴水にやって来た。俺に近づいてきたダートは、


「むう・・・早い」

「ダートも十分早いけどな。それじゃ、さっさとボス部屋に行きますか」

「エルフィから入れないの?・・・時短時短」

「どうなんだろうな。行ってみるか?」

「・・・後回し。もし行けなかったら、時間の無駄」

「だな。とりあえず、通常ルートで行ってみよう」



道中、戦闘しないようにしながら、北の森のボス部屋へ向かう。戦っても倒すのに時間はかかんないんだけど、出来るだけ時間を節約したい。タイムイズマネーって言うけど、実際は金より時間のほうが価値は高いと思うんだ。

20分もかからないで、ボス部屋へと到着。人はそこそこいるから、待ち時間のほうが長く取られそうだ。


「よし、ダート。攻撃パターンは覚えてるな?」

「枝、根っこ、葉っぱカッター・・・それと果物爆弾」

「そうだ。速攻で潰すぞ。アーツは・・・使わないほうが速いか」

「ん・・・テルは使ったほうがいい」

「だな、前みたいに目を狙うよ。果物も射るけどな」

「落とされたら面倒・・・必ず射て」

「了解。そういや、まだデカい大剣は作れないのか?二刀流だろ?」

「ん・・・中々良い素材がない」

「そうか...。んじゃ、このお礼に素材探しを手伝うよ。ダートの火力が上がれば、俺も楽になるしな」

「ん・・・ありがと」

「いいって。俺も好きでやってるんだし」

「ん」


早く順番が来ないかなー。さくさくっと何体か倒して、バリスタを作ろう!





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