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少年は港街に向かう

森深部のボスである、女王蜂とその取り巻きたちとの戦闘は続く。シルバは取り巻きに引っ付かれて蜂玉に、ダートとフォレグは嫌がりながらも取り巻きの始末を、フルンはいつも通りシルバの回復を、ルージュはボスを魔法で倒そうとしているが、取り巻きの『かばう』コマンドによって中々ダメージを与えられないでいる。俺はクロスボウでちまちま女王蜂を撃っているのだが、ダメージ量が少なくてかなり大変だ。矢が尽きることの心配もあるけど、たまに取り巻きが襲ってきたりもする。


「テルさん、そろそろ取り巻きが全滅するよ!」

「全滅したら、全員で一気に畳み掛けるぞ!取り巻きが涌いてくるかもしれないから、すぐに仕留めるぞ!ルージュ、MPはまだ残ってるか?」

「あと少しならある。そろそろ切れそうだから、ここで決めないと攻撃なくなるな」

「私もMPがキツくなってきました。蜂、強化されすぎですよ...」

「まあ、それはしょうがない。どっちにしろ、次で決めないとヤバいってことだな」


そうしている間にも、フォレグが蹴っ飛ばした蜂をダートが叩き潰す。お、取り巻きは全滅したな。それなら、


「全員、攻撃ー!」

「どりゃー!」

「おりゃー!」

「・・・もう死んで...」


ルージュが魔法で燃やし、フォレグが突撃し、ダートは斬りかかる。俺も温存していたMPをフル活用し、轟砲を女王蜂の頭にぶっ放す。頭をのけぞらせて苦しんでいるが、そこにさらに矢を撃ち込む。見る見るうちにHPバーが削れていき、俺が与えていたダメージと合わせて、1本目のHPバーが消し飛んだ。


「キィイイイ!!!」


女王蜂が叫ぶと、奥にある巣から続々と取り巻きの蜂たちが出てくる。くそ、思ったより出てくるのが早いぞ!


「どうする、テル!?このままじゃ壁になられて、攻撃は届かないぞ!」

「ここでやられるか、後でMPが切れてやられるかの違いだ!力づくで押し切る!」

「やるしかない・・・やるしかないんだ...」

「はあ、結局無理をすることになるんですね」

「いいじゃん、やるかやれるかって感じで楽しそうだ」

「頑張っちゃうよー!」

「俺、あまりやることがないな...」

「いや、そんなことはないぞ。ダート、取り巻きが壁を作ったら、シルバを打って崩してくれ」

「え、そんなことできんのか?」

「どうせ、何もやることはないだろ。一発、吹き飛ばされてくれ」

「まあ、いいけど...。よし、ダート、頼む!」

「任せて」

「下から打ち上げる感じな。ルージュ、ファイアー!」

「おう、ファイアー!」


ルージュが火の玉を放つ、今まで通り魔法の軌道で壁を作る取り巻きたち。そのまま防ぐかと思われたが、下から打ち上げられたシルバにより、バラバラに崩される。そのまま火の玉は女王蜂に向かって飛んでいき、ボゴンボゴーン!と大きな爆発を起こす。HPバーが一気に減っていくが、残り5割くらいのところで止まってしまった。ここまでか!?


「まだ終わりません!」

「そうだよ!」


いつの間にか、フォレグが女王蜂の真下に移動していて、罠を設置していた。フルンが杖を振ると、女王蜂の羽にかぶるようにして風の壁が出現し、浮いている奴のバランスを崩させ墜落させた。

女王蜂が落ちたのは、フォレグが罠を仕掛けた場所ぴったりだった。ドゴーン!!!と爆音を上げて、大きな火柱が上がる。仕掛けてたのは、埋め火だったのか...。しかも特大バージョン、それなのに女王蜂のHPはまだ残っている。

爆煙が晴れると、そこには縄で体中を拘束されている女王蜂がいた。羽も縛られているので、空に逃げることが出来ない。


「括り罠も仕掛けてたのか。え、でもあれアーツだよな。再使用時間は?いくらなんでも、10数秒はかかるだろ」

「うん。テルさんが力押すって言ったときに、もう仕掛けに行ってたんだ。どいつも兄ちゃんや壁に集中してたから、僕のことなんて全然気にしてなかったよ」

「そうだったのか...。ナイスだ、フォレグ。よし、ダート!決めてくれ!」

「ん」


拘束を解こうとしている女王蜂に、ダートはステップで近づき、そのまま空へと飛び上がる。ようやく拘束が解けたのは、ちょうどアーツが発動するときだった。


「・・・メテオストライク」


ズドン!と剣が振り下ろされ、女王蜂の頭が凹む。少し均衡したが、すぐにダートの力が優ったようで、地面にまで剣が斬り下ろされ爆発が巻き起こる。HPバーは・・・0だ。

女王蜂の体に皹が入っていき、バキィンと音を立てながら砕け散る。取り巻きたちも同様だ。


『クイーンビーが撃破されました!報酬がパーティーメンバーに入ります!次の街へのルートが開放されます!』


ボスの素材と金が、ウィンドウで表示される。ここのところ色々使ったから、かなりありがたいな。部位破壊報酬はなかったけれど、初撃破報酬で女王蜂の針槍という武器をもらった。後でどういうものか、確認しとかないとな


「皆、報酬は受け取ったか?」

「ああ。そういや、初撃破報酬は誰がもらったんだ?多分、初めてだろ」

「俺だよ。女王蜂の針槍だってさ、後で見せるよ。全員もらったんなら、早く次の街に行くぞ」

「次の街って、どんなところか知ってる?」

「確か、港街って聞いたけど...。そうだったよな、ダート」

「ん・・・エルフィの門番が言ってた」

「港街ですか、海上のエリアとかありそうですね」

「そうだな。そんじゃ、行くぞー」






潮臭い風が俺たちの顔を撫でる。扉は森を抜けたところにあり、街道らしき道に俺たちは立っていた。街道の先には大きな街があって、その先には大海原が広がっていた。


「テルさん、海!海だよ!」

「そだな」

「テンション低いな!海だぞ、海!」

「いや、海なんて電車で数十分で行けるだろ。子どもか」

「「子どもだよ!」」

「さいですか...。なら、もっと近くで見に行こうぜ」


少し歩くと、すぐに街の入り口についた。どうやらどういう用事で街に入るのか、門で聞いているらしい。しっかし、大きな壁だな...。攻めて来る敵とか、そんなにいるのか?

案外回転は早く、10分くらいで俺たちの番になった。革の鎧を着た、ひょろっとした男性が話しかけてくる。


「それじゃあ次ー、職業を教えてくださーい」


職業?・・・まあ、無難にハンターでいいか。


「ハンターです。こいつらはパーティーメンバーですよ」

「どこから来たんですか?」

「エルフィです」

「え、でも森には大きなモンスターが巣食ってて、通り抜けられないはず...。もしかして、倒されたんですか!?」

「はい、そうですけど」

「そ、そうでしたか。おつかれさまです。このサハギの街で、疲れを癒してくださいね。どうぞお通りください」

「ど、どうも」


森が通れなくて困ってたみたいだな。まあ、整備されている道が通ってたし、サハギとエルフィの間で交易でもなされてたんだろう。というか、ゲートを使えばいいんじゃないか?人しか通れなかったりするのかも。

街の中は石造りの建物ばかりで、通りにはNPCの店がひしめき合っている。棒と布で簡単な屋根を作って、その下に新鮮な魚介類が一杯だ。


「魚が沢山・・・あれ、変な色」

「海中だとすごい目立ちそうですよね。何でああいう色なんでしょう...」

「おしゃれじゃないのか?」

「おしゃれして食べられちゃったら、どうしようもないんじゃないかな...?」


通りを真っすぐ進んでいくと、大きな龍の石像がある広場に出た。なんだろう、海神かな?

石像の側にあったゲートを開放する。さて、これからどうしようかね。


「海にでも見に行ってみっか?」

「そうだな、船とかも見てみたいしな!」

「乗せてくれるかな?」

「さあ、どうだろう。持ち主に会えたら、聞いてみたらいい」



港には多くの船が停泊していた。ほとんどが帆船で、映画にしか出てこないようなものが目白押しだ。

漁船以外にも、交易船が来ているらしい。見たことがないものが、どんどん運ばれていっている。逆に荷物を積み込んで、出て行く船もあるな。


「こりゃ、乗せてはくれそうにないな。どの船も、人には困ってないみたいだし」

「そうだね。残念だなー...」

「そうだな...」

「しょうがないよ。船が作られるまで待とう、そのうち誰かが作るだろ」


ぶらぶらと港を歩いていると、突然ウィンドウが開いた。運営からのメールだ、一体何の用事だ?


「あ、他の皆にも届いたんだ」

「運営からの一斉送信だな。内容は・・・武闘大会のお知らせ?」


メールには、グラーディーの闘技場でプレイヤー対プレイヤーの大会を行う旨が書いてあった、1対1と、パーティー戦があるみたいだ。1対1の大会は、予選で16人まで人数を絞り決勝トーナメントを行うらしい。16位以上になれば、必ず何かしらの景品があるみたいだ。パーティー戦では、大きなエリアで何組かに分けて戦わせて、勝者が勝ち進むって方式を繰り返すのだと。日にちは一週間後。1対1とパーティー戦、両方に出場しても構わないそうだ。


「PvPかー、ようやくって感じだな」

「そうですね。私たちはどうします?」

「そうだなー...。ダートは1対1に出るのか?」


いいとこまでいけそうだよな、ダートなら。極振りだけど、スペックが高いし。


「出ない・・・面倒」

「まあ、ダートならそういうと思ってたよ。じゃあ、パーティ戦も出ないのか?」

「・・・皆次第」


そりゃそうだよな。俺は・・・まあ、やりたいなら出るけれど。


「どうする、出てみるか?」

「やろうやろう!」

「ああ、やってみたいな!」

「景品もあるみたいですしね。挑戦するだけしてみましょう」

「PvPにも興味あるしな!」


皆やりたいのか...。んじゃ、やってみますかね。


「あれ、もう二通届いていますよ?」

「え?・・・罠の仕様変更に関するお知らせ?えっと『今までは罠を使用する際、特に制限を設けていませんでしたが、今夜0時から行うアップデートでDex制限を設けさせて頂きます、それに伴って、罠スキルとSPの交換を行います』?・・・運営って、俺たちに恨みでもあるのか?」


もう一通はさっきに通知にもあった通り、午前0時からのアップデートのお知らせだった。まあ、そんな夜遅くまではやらないから問題ない。それより、罠の仕様変更が大問題だ。・・・まあ、何で罠にDex制限をつけてなかったのか、不思議に思ってたんだけど...。


「・・・テルさん、どうする?」

「まあ、今日中は使えるみたいだし...。ぱーっと使っちゃう?」

「いや、そういう問題じゃないでしょう」


使い捨て罠なら使っちゃえばいいだけだけど、装備型はどうすりゃいいんだろうなー...。売るとか?素材はいいんだし。


「また短剣で通りがかりに斬り掛かるの?」

「うーん、それじゃあ意味ないしな...。いっそ、突撃一本に絞るとか」

「それなら、短剣よりポールウェポンのほうがいいんだよねー。何かないかな?」

「そうだな・・・困ったときの、天火さんだな」

「だね」


軽くて貫通性能が高い槍が作れないか、聞くだけ聞いてみよう。そうと決まれば、早く戻りましょうかね!


「・・・フォレグ、あまり驚いてない」

「そうだな。もっと衝撃を受けてもよさそうなのに」

「まあ、変わっちゃったものはしょうがないじゃん。色々バランスがあるんだろうしね」


いい子だな、フォレグ...。俺なら、運営爆発しろ、くらいは言うだろうな...。


「しっかし、運営も酷いよなー。最初からDex制限を付けておけば、こんなことにはならなかったはずなのに」

「まあ、SPと交換してくれるみたいだからいいじゃん。強者の風格の時よりは、全然マシだよ」

「・・・悪い」

「べ、別にテルさんを攻めてるわけじゃないよ!ほら、早くクレセントに戻ろう!」


はあ、さっさと天火さんの露店に行こうか。


「あ、テルさん。その前に、初撃破報酬を見せてくれませんか?」

「ああ、そうだったな。えっと、これだな」

_____________________________________________


名前 女王蜂の針槍

種類 槍

威力 61

特殊能力 毒 切断刺突

耐久値 1500/1500

レア度 6


クイーンビーの針を丸々使って作られている短槍。毒がそのまま残っており、刺さるとそのまま注入される。のこぎり状の針で、敵の体を切りつつ刺す。

_____________________________________________


「槍ですか...。使い道、ありますかね?」

「そうだな・・・フォレグ、ちょっと持ってみて」

「え?いいけど...」


フォレグに槍を持たしてみる。短槍だから、そこまで重くないと思うんだけど...。


「重いか?」

「やっぱり重いね。でも持てない程ではないかな?突いたりは・・・出来ないなー」


両手で槍を持って、黄色と黒の柄を小脇に抱えている。うーん、やっぱり無理があるかな...?


「どうしてこんなことをするの?もしかして、この槍を僕が使ったり?」

「どうせ誰も使わないんだからな。売るのももったいないし」

「うーん・・・まあ、決めるのは後回しだね。今は、とりあえず保留ってことで」

「そうだな。とりあえず、天火さんとこに行こうか」


毎回頼ってばかりじゃ駄目だよなー。何かお返しを考えておかないと。




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