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少年はリベンジする

エルフィから森深部に入り、一気に真ん中を突っ切っていく。余計なモンスターとは戦わないで、ひたすらもマップの中間地点を目指す。


「よし、ここからマップの上半分に入る。多分だけど、ここからエントが出てくるはず、だと思う。俺は音を聞くのに集中するから、周りの警戒は任せたぞ」

「テルさんはどうやって進の?目つぶるんでしょ?」

「それは問題ない、ゴーレムに乗るからな」


よっこいしょ、とゴーレムに乗る。さて、進みますかね。


パーティーメンバーと同じ方向に進むよう言いつけてあるから、勝手にゴーレムは進んでくれる。風で草木が揺れる音や足音の中から、異音を探す。

不意にガサガサガサという音が、右方向から近づいてくる。いよいよお出ましだな。


「右からモンスターが接近中。数は分からないけど、最大数を想定しておけ」

「どうするんだ?」

「囲まれる前に、こっちから仕掛ける。もう次の団体が、時間をあけて左から来てる」

「なら、早くしないといけませんね。急いで抜きにいきましょう」


ゴーレムから降りて、戦闘体勢に入る。背後から襲われる前に、前方のエントたちを倒さなければ。

そのまま右方向に進み続けると、すぐにエントたちと接敵した。どうやら俺たちが気づいていると分かっているのか、擬態はしていないみたいだ。まあ、擬態している間は動けないからな。いい的だ。


「数は24体か。速攻潰して、次にいくぞ」


段々、聞こえてくる雑音が大きくなってきている。俺たちのほうに近づいてきているんだろう。あまり時間はかけられない。


「お前らの相手は俺だー!!!」


シルバが挑発を使い、エントたちを引き寄せる。シルバの構えた盾に、十数本の尖った枝が突きつけられる。カンカンカン!と軽い音が鳴り、シルバのHPが少し削られる。


「ふん」


横からダートが斬り掛かり、シルバに触れるギリギリのところを剣が通り過ぎる。細切れになって崩れるエントたち、奥から他のやつらが来るが、


「燃え散れ!」


ルージュの火の玉で燃やされ、あっという間に消し炭になる。よし、俺もやりますかね。こういう敵は苦手なんだけどな...。弱点がないし、矢が刺さり辛い。援護の範囲で手伝おうか。

外から回り込もうとするエントがいたので、比較的ダメージの通りやすい首に矢を叩き込む。わずかに怯むので、すぐに装填。もう動き出していたが、再び首を撃って動きを止める。フォレグの罠はどんな感...。


ドーーーーン!!!


突然響き渡る轟音。爆風が俺の頬をなで、シルバごとエントたちが吹き飛んでいく。


「・・・ちょ、シルバァ!?」

「ににに兄ちゃん!?大丈夫!?」


エントたちは全滅したけど、シルバのことが心配だ。味方の攻撃だとダメージは入んないけど、埋め火は使い捨ての罠。アイテム扱いだから、どうなるかはよく分からない。


「へ、平気だぞ...。ちょっと頭がクラクラするけど、ダメージ自体はそんなに入ってない」


ふらつきながらシルバが立ち上がる。確かにHPはまだ七割くらいあるけど...。


「ほら、こっちは全滅したぞ。次の奴らの相手をするんだろ」

「あ、ああ。フォレグ、埋め火を使うときは注意しようか。次は装備型の罠でいってみよう」

「うん。兄ちゃん、ごめんね。ポーション使う?」

「いや、フルンに回復魔法をかけてもらうからいいよ。俺だったから大してダメージはなかったけど、ダートだったらそれだけで死に戻りだ。気をつけないといけないぞ」

「うん...」


おお、シルバが年上っぽいことを言ってる。初めて見た。


「火薬が多すぎたのかもな。今度作るときは、小さめのも作っとくよ」

「テルさん、早く行きましょうよ!エント、来ちゃいますよ!」

「ああ、悪い。今行く」


聴音でエントの位置を探る。大分近づかれたようなので、すぐに戦闘になりそうだ。


「今、魔力感知に入ったぞ。動いてないから、多分擬態して待ち伏せてる」

「それなら、先に罠を仕掛けておくよ。ちょっと待ってて」


そう言って、フォレグが素早く前に移動し、エントたちに攻撃されないあたりに罠を仕掛けていく。設置速度がめちゃくちゃ速く、俺から見たらぱっと置いているようにしか見えない。

罠の設置を終えて、一瞬で俺たちのほうに戻ってくる。相変わらず早い、ちょっとうらやましいかも。


「おわったよー」

「それじゃ、眠りを覚ましてあげまようか」


嵐砲を使って、魔力感知に出ているエントたちを射抜く。カンカンと矢が衝突し、擬態が解けたエントたちが俺たちに襲いかかってくる。だが、少し進んだところでバチン!とトラバサミに噛まれて、エントたちの動きが止まる

そこへダートが接近し、剣でまとめて斬り飛ばす。即座にステップで離脱したところに、ルージュの火の玉が降り注ぐ。おお、これはいいな。雑魚戦でのシルバの負担が減りそうだな。もちろん、敵は全滅している。


「罠って強いねー。ダメージはそんなに多くないけど。というか、ダートさんたちがいるんだから、威力はいらなかったんじゃない?」

「まあ、ボス戦の時、アーツを使うときは威力が高い方がいいだろ」

「そうだよね。こんな小さいトラバサミで、ボスにダメージが入るわけないもんね」


エントがかからなかった罠を回収してから、次の敵のほうへ移動していく。ちゃんと回収しておかないと、自然消滅するまで残り続けるからな。


「次は括り縄を使ってみようか。まきびしはあまりエントじゃ相手が悪いから、また別の相手に試してみよう」

「敵は止まってる?」

「いや、俺たちに向かってきてる。気づくの早いな...」

「じゃあ、すぐに設置してくるね!」


エントの進路上になるだろう辺りに、フォレグが縄を設置していく。勝手に拘束してくれるらしいので、どんな風なのか気になる。大体仕掛け終わったところで、エントたちが木々の間から現われた。フォレグめがけて突っ込んでくる。


「ほらほら、こっちだよー!」


フォレグは慌てることなく、ギリギリまで敵を引き付けて、目の前まで来たところで真後ろへと下がる。Agiを活かして、数十mを一瞬で移動してる。そのままフォレグる追おうとしたエントたちは、すぐそこにある罠に気づかず、まっすぐに突っ込んだ。

地面に設置されていた罠が、蛇のようにエントの両足を括り転ばせる。そのまま立ち上がる前に、前もって近づいていたダートが斬って、ルージュが燃やす。勝ちパターンだな...。


「なんというか...。罠、チートすぎやしないか?」

「こんなものなんじゃないんですか?あの二人相手に動きを止めたら、一瞬で消されちゃいますし...。罠の設置スピードが早いのは、Agi極振りのおかげですし」

「そうなんだけど...。雑魚相手なら、負ける気がしないな」


油断は禁物だし、囲まれたらどうしようもないけれど...。まあ、設置できる数に限界があるから、一斉に出てこられたら止めようがないな。そう考えたら、バランスが取れてると言えなくもない。


「テル、残りの敵は?」

「右九十度方向に24体、擬態しないで進んできてる。このままだと、俺たちに横から突っ込んでくるな」


擬態しようよ...。隠れてないエントなんて、大した敵じゃないぞ。


「・・・また、罠を仕掛ける?」

「俺はどっちでもいいけど。二人は?」

「私もどちらでもいいです。MPが余っても、誰かにあげられますから」

「私もだ。シルバが止めるにしろ罠で止めるにしろ、やることは変わらないからな」


俺もそうなんだよなー。エント相手じゃ、足止めくらいしか出来ないし。


「ずっと僕がやってたし、次は兄ちゃんでいいんじゃない?敵の攻撃を受けるのが、兄ちゃんの役目なんだしさ」

「じゃあ、フォレグは何をするんだ?」

「兄ちゃんに敵が行き過ぎないように、数を調整しとくよ。罠の量を減らせば、いい感じに数を減らせると思うし」

「そうだな。そっちのほうが、フルンも忙しくないだろう。まあ、96体一気に来たら俺のことは気にしないで、罠を使いまくってくれよ」

「分かってるよー。それじゃ、早く行こっか」


次のエントの群れは、いつもの戦闘と同じように全滅させた。隠れてなければ、エントなんかに負ける気はしない。


「ふう、リベンジ成功!先に進もうか」

「なあ、テル。ここらへんから出てくるモンスターが変わるなら、エント以外にも違うモンスターが出てくるんじゃないか?」

「確かに・・・感知系スキルを全開にして、慎重に進んだほうがいい」

「んだな。フォレグ、索敵はいつも通りやってくれ。俺も聴音で探してみるから」

「分かった、エントは任せたからね」






森の中をズンズン進んでいく。新しいモンスター、気になるなぁ...。


「あ、モンスター来たよ!96体まとめて!」

「索敵に引っかかるってことは、エントじゃないな。索敵のレベルは上がってる?」

「上がってないよ」

「なら確実にエントじゃないな。ここで止まって迎え撃つ、罠を設置しといてくれ。シルバを前にして、全員戦闘準備だ!」

「「「「「了解!」」」」」


モンスターたちが来ている方向と、間に罠を挟むようにして、俺たちは布陣をしく。シルバが戦闘、俺とフルンとルージュはシルバから50mほど後方に、ダートはその間シルバ寄り。フォレグは自由に動き回ってもらう。

3分もしないうちに、モンスターたちは姿を見せる。かなり大きなカマキリで、俺の肩くらいのところに頭がある。体の大きさに比例するように鎌も巨大であり、死神が持っているもののように禍々しい。昔の映画で、こういうのがあったような気がするな。確かSFモノで、大量の虫が襲ってくるって感じ。

カマキリたちが、鎌をかかげて突撃してくる。だが、最前線の奴らはトラバサミに噛まれ、ルージュの火魔法によって焼き殺される。

黒こげになった仲間を乗り越え、後続のカマキリたちが大挙をなしてシルバに襲いかかる。ガインガイン!と甲高い音が鳴り響き、シルバのHPが少し多めに削られる。あのカマキリ、攻撃が強いな...。


「フルン、シルバの回復が最優先だぞ」

「分かってます、いつもより減りが早いですから」


フォレグは新しい罠を設置しにいった。俺も援護に回ろう、こいつらなら頭を撃てば倒せるだろうし。


しっかりと狙いを付けて、一体ずつカマキリを倒す。ダートはシルバに群がっているカマキリを、横から斬り飛ばして、着実に数を減らしていく。


「テルさん、罠仕掛けたよ!」

「どこだ!?」

「モンスターの奥!ダートさん、兄ちゃんをこっちに吹っ飛ばして!」

「ん」


ダートがシルバの後ろに回り込み、剣をフルスイング。放物線を描きながら、フォレグのそばに着地した。

シルバに攻撃していたカマキリたちは、こぞってシルバの後を追う。しかし、少し進んだところで前線にいた奴らが縄に絡めとられ、次々に転ばされていく。ふたたび飛んでくる火の玉、焼かれていくカマキリたち。何とか生き残ったカマキリは、しつこくシルバに襲いかかる。が、後ろから俺に射られ、ダートに飛刃で切り裂かれて全滅した。


「おわったか。やっぱ森なだけあって、虫っぽいモンスターが出てくるみたいだな」

「そうですね。他にもモンスターは出てくるでしょうか?」

「多分出てくると思うけど、どうせまた虫だと思うぞ」

「だな。虫は割と火魔法に弱いから、けっこうやりやすいし、私は虫で嬉しいぞ。気持ち悪いけど」

「あれがいいんだろ。大量の虫に囲まれてると、こう背筋がゾクゾクするぜ」

「気持ち悪いだけじゃね?」

「そういう感じじゃないんだよなー」


ドMのシルバの気持ちなんて分からんよ...。いや、分かりたくないな。


「罠の回収、おわったよー」

「よし、先に進もうか。セーフティーエリアを見つけるぞ!」

「「「「「おー!」」」」」


マップの半分までは探索し終えたから、そろそろ見つかるだろ。ドワールの洞窟でも見つかったんだから、こっちでも見つけちゃうぞー!



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