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少年は猫と馬を狩る

兄貴と仁美、俺の三人で、南の草原へとやって来た俺たち。最初に戦ったジャッカルは、あっさりと倒すことが出来た。


「あまり強くなかったな。動きは速いけど、止めちゃえばどうってことないし。こんなものなのか?」

「ジャッカルは、草原じゃ最弱だよ。大きな猫は変な魔法を使ってくるし、馬はタフで力も強いし、動きもそこそこ速い。なめてかかったら痛い目をみるよ!」

「まるで体験したような言い方だな」

「体験したよ!馬がすごく強かったよ!」


なめてかかったのか...。義子はそんなことしないと思うんだけど...。


「フレアが調子にのって突っ走っちゃって、馬の群れに突っ込んだんだ。そしたら、見事に返り討ちにされて。そのまま私たちにも襲い掛かってきて、あえなく全員死に戻りだよ」

「ああ、あの子か。やりそうだなー、そういうこと」

「馬ってどんな攻撃をしてくるんだ?」

「突進と踏みつけ。パターンは少ないけど、そっちも威力が高くて危ないよ。エンカウント率もそこそこ高いし」


目を撃っただけじゃ倒せないかも...。近接戦闘も視野にいれておくか。出来るだけしたくないけど。


「あ、敵が来たぞ。あっちから」

「何か分かるか?」

「いや、隠れてて見えない。とりあえず、さっきみたいに出すよ」


ゴーレムを暴れさせると、ヒュンと五つの影が飛び出してくる。尻尾は長く、ふさふさの毛が印象的だ。縞模様で、色は地味目な緑と茶色だ。こいつが猫か、変な魔法を使うみたいだけど...。

猫たちはこちらを威嚇したまま、こちらの様子を伺っている。向こうから仕掛けてこないとは、珍しいな。大体のモンスターは、俺たちを見たらすぐに襲ってくるというのに...。何か狙いがあるのか?


「アルン、あいつらはどんな魔法を使ってくるんだ?」

「変な魔法だよ。私たちの攻撃が上手く当たらなくなるんだ」

「距離感でも狂わされてるのか?」

「多分、そんな感じ。攻撃するときは、少し中心からずらすようにしないと、しっかり当たらないから注意してね」


俺にとって、正確な攻撃というのは最大の武器だ。目とかの弱点を狙い撃つためにな。うまく攻撃が当たらないってのは、滅茶苦茶やりづらい相手だ。どうにかならないのか。


「その魔法は解けないのか?」

「まとまったダメージを与えることができれば、出来るはずだよ」

「おし、それなら二人は何とか猫たちに攻撃を命中させてくれ。魔法が解けたところで、俺が一発で仕留める。そんなにVitは高くないだろ?」

「うん、ジャッカルと同じくらいだから、テルさんならいけるよ」

「そうだな。待ってても仕方ないし、こっちから仕掛けるぞ!」


そう言って、兄貴とアルンは飛び出す。猫たちはすぐに飛びかかれる位置で俺たちを威嚇していたってことは、こっちからだってすぐに攻撃範囲に入れる。

最初に攻撃したのはアルン、抜刀したかと思った時には、もう斬った後。居合いって速いな・・・避けられるだろうか...。

一体を斬られて、残りの四体は二体一組でバラける。それぞれで、二人を相手取るつもりだろう。アルンが斬った一体は、HPを半分以上削られていて、ちょうど今立ち上がろうとしている。とりあえず目を撃ってみたところ、ちゃんと命中したので魔法は解けているみたいだ。よし、これなら何とかなりそうだな。


猫たちの攻撃方法は、爪ひっかきと飛び掛りだ。Agiはそこそこ高いみたいで、身軽なフットワークで翻弄している。アルンは慣れているから平気そうだけど、兄貴には大変かもしれない。なので、とりあえず最初は兄貴の援護に回ることにした。

二体の猫に攻撃されている兄貴だが、攻撃を捌きつつ隙をうかがっている。さて、俺にできる事はなんだ?矢は撃てない、装填に時間がかかる。魔法が解けたらすぐに撃たないといけないから、ここは取っておかないと。矢を撃つこと、以外で出来ることっていったら・・・ゴーレムで攻撃だな。

俺の後ろに待機していたゴーレムを、猫に向かって突っ込ませる。ヒラリとかわされるが、そのまま勢いを殺さず着地を狙って斬りかかる。ゴーレムだと無茶な動きもできるからいいよな。

着地した猫はそのまま横っ飛び、またもや避けられてしまった。着地を狙ったけれど、少し斬りかかる位置が後ろ過ぎたみたいだ。距離感が狂ってるから、間合いを取り違えたんだろう。だが、それで十分だ。


「兄貴!」

「任せろ!」


兄貴が大きく槍を振りかぶり、猫を薙ぎ払う。猫は槍の直撃を受けて吹っ飛んでいく。HPは・・・三割減ったってとこか。

着地した猫の体がぼやけ、パリンと薄い膜のようなものが砕け散る。あれが距離感を狂わす魔法だな、今のうちに!

構えていたボウガンを猫に向けて、狙いをつけて射る。


「ギニャ!?」


軽い音を立てて、猫の目に命中。HPバーが一気に0になり、ポリゴンになって消えていった。


「いいぞ、テル!もう一体も頼んだぞ!」

「オッケー、兄貴は猫の気を引いといてね!」



さっきと同じように猫を倒したときのは、アルンもちょうど二体目の猫を倒したところだった。やっぱ、慣れているだけあって早いな。


「お疲れ、援護なくて大丈夫だったか?」

「平気だよ、もっと沢山の猫とも戦ったこともあるしね」

「そうなのか。ビスカって子が壁をやってるんだろ?前見たときは、盾が小さいなーって思ってたんだけど」


壁をやる奴は、基本全員でっかいタワーシールドと剣か、盾だけを装備している。あの子のは普通のシールドみたいだったけど...。


「あの時はお金がなくて、大きい盾を作れなかったんだよ。今はちゃんと立派な盾を持ってるよ」

「そうか、ならいいんだ。壁がいないと大変だもんなー」

「心配してくれて、ありがと。テルさんたちのパーティーには、すごい壁役がいるよね」

「Vit極振りだからな、滅多に抜かれることはないよ。あいつがいてくれるから、こっちも安心して戦える」


シルバがいないと、強者の風格なんて取ろうと思わなかっただろうし。・・・まあ、屑スキルだったんだけど。


「おっし、マップを埋めるぞ!アルン、マップデータを送ってくれ」

「分かった。今送るね」


アルンからマップのデータを受け取る。さて、頑張って埋めますかね!






しばらく草原を探索していたあるとき、ようやく馬と出会うことが出来た。中々合わなかったな、ポップ率が低いのか?


「兄さんもテルさんも、十分気をつけてね!ちょっとやそっとの攻撃じゃ、怯まないよ!」

「分かってるよ!あまり大声出すな、バレるだろ!」


馬の数は四体、まだこっちには気付いてないみたいで、のんびりと草を食べている。馬は音に鋭そうだから、発見してからはジリジリと音を立てないように、身を屈めながら近づいていった。今は大体40mくらいのところまで接近出来た。これ以上進むと見つかりそうなので、ここから俺が先制攻撃を仕掛ける。


「いつも通り目を狙うけど、それでいい?」

「いいと思うぞ。他に目に見える弱点はないしな」

「私も。けど、ここから命中させられるの?的はすごく小さいよ」

「アルンは、まだまだ極振りを甘く見てるな。まあ見てろ、撃ったらすぐに出るんだぞ」


確かに、馬の目はかなり小さい。だけど、俺にはあの目を撃ち抜けるという自信がある。Dex極振りとしての意地とプライドがある。ここで外すわけにはいかない。

ボウガンを静かに構え、馬の顔に狙いを付ける。目の当たりに狙いをつけるが、このままじゃきっと目には命中しない。・・・よし、いくか。

息を大きく吸って、グッと止める。瞬間、ピタリと馬の目に狙いがつく。迷わず引き金を引くと、まっすぐに矢は飛翔し、馬の目へ突き刺さった。


「ヒヒヒーーン!!!???」


悲鳴を上げる馬。矢と同時に飛び出した二人は、既に馬たちを肉薄していた。


「「はあ!」」


俺が矢を射た馬に、アルンは閃光をともなった居合いを、兄貴は勢いを乗せた突撃をかます。馬のHPは俺の攻撃も合わせて、8割ほど削れていた。え、二人の攻撃ってアーツだったはずなのに...。それでも倒しきれないとか、どんだけタフなんだよ!


「おいおい、HP多すぎだろ!これでも倒せないなんて!」

「だから言ったじゃん、タフだって!」


急いで矢を装填しつつ、ゴーレムを突撃させる。二人は倒し損ねた馬を倒している、他の馬の相手は出来ない。残りの馬たちは、すでの突進してきている。しょうがない!

一番二人に近い馬に狙いを付けて、轟砲をぶっぱする。馬は横からの衝撃で倒れ、後続の馬も踏みつけて進むわけにもいかず、その場で立ち止まる。


「悪い、テル!そのまま援護を頼むぞ!」

「了解、そっちも気をつけてね!」


倒れた馬を、兄貴とアルンが追撃する。横から抜けようとしている馬たちは、ゴーレムを向かわせて牽制。反対側に回られたらどうしようもないけど、時間稼ぎくらいにはなるはずだ。

ゴーレムが邪魔な馬たちは、吹き飛ばして進もうとする。そうはさせじと、俺は突きを入れるようゴーレムを立て、何とか二人の邪魔をさせないよう押しとどめる。

兄貴たちは、馬が立ち上がらないようにしながら、首と横腹を中心に殴っている。もうすぐ倒せそうだ、こっちももう少し粘らないと。


ふたたびボウガンを構え、轟砲を放つ。今にも二人に突進しそうな馬の顔に命中し、左側の目に深々と突き刺さった。


「ヒヒヒーーンン!!!!」


大きくいななく馬、他の馬たちは浮き足立っている。元々、馬は臆病な生き物なはずだしな。立て続けに仲間が倒されれば、そりゃ怯えるだろう。


「いいぞ、流れはもうこっちのものだ!一気に押し切るぞ!」

「追う!アルン、遅れるなよ!」

「そっちこそ!」


まだ馬は二体いるし、手強い相手だけど、怯えた奴らなら俺たちの敵じゃない。時間とポーションはかかったけど、大きな損害無く倒すことが出来た。



「ふう、けっこう強かったな...」

「そうだな。北には、こういう単体で強いモンスターはいないからな」

「数で押してくる、て感じだしね。出てくる奴らは大体12、じゃなかった、96体だしね」


骸骨とか蜥蜴とか、一体一体は弱いからな。


「馬って12体でてくること、あるのか?」

「私たちは一回だけ遭遇したことあるけど・・・すごい辛かった...。半分以上倒せば怯えだすんだけど、六体も倒さなきゃいけないし...」

「ああ、それは辛そうだな」


俺たちだったら・・・ダートとルージュが一撃で潰してくれるだろうけど、大量の馬に囲まれて、それはそれで大変そうだ。


「あと見てないのは土竜だけだな。地面から攻撃してくるんだったよな?」

「地面から奇襲してきて、すぐに逃げ出しちゃうんだ」

「嫌な奴だなー。いい加減、襲われてもいいんじゃないか?」


兄貴がそう言った瞬間、魔力感知に二つの反応が出る。周りを見ても敵影はなし。・・・今のが、フラグを立てた、って言うんだろうな...。

どうやら俺を集中して狙っているようで、高速で俺の直下と移動してくる。さて、どうしようか・・・そうだな。

位置は変えないまま、ゴーレムの上に乗る。兄貴たちが怪訝な目をするが、説明は後回し。土竜がどうやって位置を把握しているのか、まだ分からないからな。

俺の真下で光点は止まり、数秒後にゴンゴン!と何かがゴーレムに下から衝突する。降りてゴーレムをどけると、そこにはふらついている土竜がいた。


「こいつらが来てたから、ゴーレムに乗ってたんだな」

「うん。音で感知してたら、狙いが俺から外れるかもしれないから、言えなかったんだよ」

「逃げる前に倒しちゃお。素材はけっこう高いんだよ」


兄貴たちが土竜を倒す。こうして襲われたら雑魚だけど、乱戦時に来られたら厄介だな。多分、対応できないぞ。俺たちの場合、大量の光点に埋もれちゃって見えないだろうし。


「こいつら、戦闘中にも下から襲ってくるのか?」

「そんなときもあったよ。戦闘が終わった直後にも来たりしたね」


今回のはそのパターンか。いやらしい奴だなー。


「まあ、テルさんがいれば奇襲の心配は無いね。今度は、来たら教えてね」

「分かってるよ。それじゃあ、馬に気をつけながら探索しようか」

「目標はセーフティーエリアの発見だな。いくぞー!

「「おー!」」


アルンの為にも、張り切ってまいりましょうか!



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