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少年は囲まれる


リザとゴーレムをつれて、洞窟の中を歩いていく。シルバは17時からログインするらしい。まだ昼過ぎなので、時間には少し余裕がある。少しでも鉱石を採って、金を稼ぎたい。ついでに探索もな。


洞窟内の道は狭くて暗い。クロスボウを使うには、厳しい条件だ。曲がりくねった道の死角に隠れられたら、どうしようもない。魔力感知は、範囲が狭いからな。

そう思いながら採掘していると、いくつかの魔力を感知する。またミミズか、さっさと倒しちゃうか。


ミミズは襲ってくる前に、一回地面に出てまた潜る。クロスボウで攻撃するには、そこしかない。魔力感知は点しか見えないから、場所を掴むのも一苦労だ。

ゴーレムは俺が動かしてるから、俺がどこにいるか知らないと攻撃出来ない。リザは大丈夫だと思う。


「お前は俺の前に出て、ミミズの攻撃を防いで。向こうからじゃ分からないと思うから」

「Yes」

「リザは自分で攻撃。どこに攻撃が来るか分からないから、回避にも気を配れよ」

「ぎゅ!」


ミミズの怖いところはそこだよな。魔力感知で場所とタイミングは掴めるけど、誰に攻撃するかはイマイチ読めない。場所で分かるんじゃないか?と思うだろうけど、遠いところからも突っ込んでくることもあるんだよな、これが。そんなわけで、ここではゴーレムは専ら盾として使われる。


二体のミミズが見える。左の壁と正面の床だ。左のミミズをクロスボウで射るが、一発では倒せずそのまま地面に潜られる。くそ、やっぱり頭を撃たないとダメか...。

一応クロスボウに矢を装填しておき、背中に背負っておく。持ったままじゃ、蹴りにくいからな。

ミミズが出てくるまで、魔力感知に集中する。出てくる位置が分かってれば、対処もまだやりやすいからな。

二体のミミズは地中で交差し、天井と俺の真下に移動する。そこから飛び出してくるのか、誰を狙ってるんだ...。俺はゴーレムに乗って、下にいるミミズに備える。

天井からミミズが飛び出してくるのと同時に、下からゴン!と何かが衝突する音が聞こえる。リザがゴーレムの下にもぐりこんだので、俺は天井のミミズに向けて矢を射る。頭に命中して、一発でHPを削り飛ばす。ゴーレムから降りて、リザの様子を見ると、


「ぎゅー!」


ミミズに噛み付きながら、ブンブンと頭を振り回している。口から火が漏れているから、ブレスもしているんだろう。

どんどんミミズのHPが減っていき、半分を下回ったところで壁に叩き付ける。俺はそのまま頭を射って、HPを全て削り切る。ふう、今回も何とか無事にやりすごせたか...。掠りでもしたら死に戻るから、一回一回の戦いが緊張の連続だよ。

ドロップアイテムを拾い、リザのほうに歩いていく。気に入ったようで、もぐもぐと一生懸命食べている。リザは美味しそうだからいいんだけど...。見た目がな、白い体液を巻き散らかしてるのが気持ち悪い。


「ぎゅむ」

「体中体液だらけだぞ...。ほら、拭いてやるからこっち来て」


布っ切れを取り出して、リザの体をゴシゴシ拭いてやる。ったく、もう少しきれいに食べて欲しいもんだよ...。


「ぎゅー!」

「こら、ジタバタするな!すぐおわるから!」


体を拭かれるのを嫌がって、リザが俺の腕の中で暴れる。ちょ、あまり暴れるとダメージが入る!死に戻っちゃうから!

口や爪に気をつけながら、さっさと拭いて離してやる。手のかかる子だこと。


「ふう...。お前もそろそろ研いでやるよ。リザは周りを警戒してて」

「ぎゅ」


あぐらをかいて膝の上にゴーレムをのっけて、ボックスから水差しと砥石を出す。砥石を水で濡らしてから、ゆっくりと均一に力を入れて刃を研いでいく。こうやってたまに手入れしとかないと、耐久値の減りが早くなってしまうのだ。

Dexが関係あるかどうかは分からないが、まあまったく振っていないよりはマシだろう。ダートがやり辛いって言ってたからな。研ぐのに力入らないから、俺がやってやればよかったよ。

10分ほどかけてゴーレムを研ぎ終える。途中でコウモリの邪魔が入ったが、リザが上手く引きつけてくれてる間に、俺が座ったまま射って倒した。砥石はアイテムだから、持ったまま武器を使うことが出来る。


「よし、おわった。こんくらいだろ」

「Thanks master」

「いいんだよ、武器の手入れは持ち主の義務だからな」


ちゃんと使ってやらないと、武器のほうが可哀想だ。こいつには意識もあるから、なおさらだ。


「そんじゃ、もうちょっと頑張りましょうか。シルバが来るまで、まだ時間があるしな」

「Yes」

「ぎゅ!」






16時半に探索を切り上げて、クレセントに戻る。天火さんに修復を頼もうとしたのだが、露店にいなかったので鍛冶場で生産でもしているんだろう。適当な露店で修復してもらい、鉱石やドロップアイテムを売りにいく。そこそこの金にはなったのだが、まだまだこの前よりは少ない。早く貯めたいなー。

矢を買い足してから、シルバがログインする中央広場に向かう。この後は、森深部での探索の続きだな。南の方にも行きたいから、さっさとクリアしてしまいたい。


中央広場に着いたのは、17時5分前だった。ダートとフォレグがもう来ていて、何か話している。


相変わらず早いなダート、フォレグは昼ぶりだな」

「あ、テル・・・お金、大丈夫?」


フォレグから聞いたのかな。フォレグも金は使うだろうから、あまりもらってなかったし。


「大丈夫だ、洞窟の奥に行って鉱石を採ってきたよ。普通に探索する分には問題ない」

「ならよかった・・・こういうのは、全員で割るべき」

「まあ、そうだよな。ここまで金を使うとは思ってなかったし、俺もけっこう素材を持ってたからな。どこか、保管する場所がほしいよ...」


アイテムボックスには、戦闘時に簡単に取り出せるものと、メニューを開かないと開けないものが別々に存在している。俺はDex極振りだから、HPポーションはあまり必要ではない。シルバを回復させるために、多少は持っているんだけど。他にはMPポーションと矢くらいしか入れてないし、かなり余裕がある。まあ、ゴーレムのための砥石とかスタミナ回復のための食べ物とか、必要なものを入れてたらすぐに埋まってしまうんだけど。メニューから開けるボックスはけっこう容量が多いので、まだまだ入る。だけど、そのうち満杯になってしまうから、どこか別の場所に保管しなければいけなくなるだろう。


「ん、私もほしい・・・どこかある?」

「そうですねー、家でも買いますか?」

「家?ああ、生産者が店にしたりギルドのホームにするやつだな。いくらくらいだろうな?」

「けっこうすると思いますよ、なんせ家ですからね」


ゲームでもリアルでも、家っていうのは大きな買い物だな。ゴーレムを買い換えるのは、もう少し後になりそうだ。


「そうだ、フォレグ。罠の使い心地はどうだ?というか、どんな感じなんだ?」

「すごかったよ!最初は狼で試してみたんだけど、穴に落ちてそのまま倒せたんだ」


へえ、雑魚は一つで全滅か。それは中々いい感じだな。


「けど、そう簡単に罠に引っかかるのか?仕掛けるところを見られてたら、いくらなんでも避けて通るだろ」

「最初は避けられちゃったんだ。だから、罠を仕掛けてから動かないで敵がくるのを待って、襲い掛かってきたらすぐに後ろに避けるようにしたんだよ。そうしたら、面白いようにひっかかってねー」


敵が襲ってくるのを待つか...。それってすごく怖くないか?かなり引き付けないといけないだろうし。


「そんなに怖くないよ?敵がたくさんいたほうが怖いよー」

「ん・・・強者の風格を使ってないと、少なすぎてつまらない」


とんだマゾスキルをつかまされたと思ってたんだけど・・・どうやらそうでもなかったみたいだ。いや、反省はしてるよ?


「天火さんから連絡はきましたか?」

「いや、まだきてない。作るのに苦労しているか・・・かなりこだわって作っているか。どっちかだろう」


初めて作るって言ってたし、苦労している可能性もある。まあ、たぶん後者だろうけど。天火さんだしなー、期待してます。


「そろそろ17時だな。シルバはちゃんと時間通りに来るのか?」

「テルさんが注意してたし、絶対に来ると思うよ。・・・もし来なかったら、どうする?」

「強者の風格をつけないで探索する」


シルバにはこれが一番効くだろ。遅れなきゃいいだけだ。5~10分なら、まあいいけど。


「・・・遅れたらシメる」

「それじゃご褒美になっちまうぞ」

「むう・・・どうすればいい?」

「頭だけを殴ればいいんじゃないか。いくらなんでも怖いだろ」

「ん・・・そうする」


そうはいっても、あのシルバだからなー...。それでも喜びそうだ。まあ、遅れて来なきゃいいだけだ。・・・ホント、遅れるなよ。





俺の心配を知ってか知らずか、シルバは遅れることなく17時ピッタリに入ってきた。ルージュとフルンも同時にゲートで広場に来た。


「ちゃんと遅れずに来たな...。これからもそうしろよ」

「もちろんだ!出来る時間が限られてるしな!」

「ならいいんだけど...。んじゃ、さっさとエルフィに向かいますか」

「テルさん、僕の武器はひとまず短剣でいいの?」

「そうだな、まだ連絡は来てないし。ひとまず短剣と蹴りで、いつも通りやってくれ。罠は使わずにな」

「入り切らないもんね、了解しましたー」


さて、そんじゃ探索に繰り出しましょうか。




エルフィにゲートで向かい、そのまま奥へと進む。この前は東の方に行ったから、今回は西に行ってみるか。

昨日と変わりなく、蟻や蝶たちが攻めて来るが、ガンガン倒して進んでいく。昨日戦ってるから、かなりやりやすい。

とりあえず西の端に行こうと思い、どんどん左のほうへと進んでいく。1時間半ほどで、マップの西端に到着してしまった。ひたすら横に行ってたからな、まあこんくらいなんだろう。


「ついちゃったけど、これからどうするんだ?」

「そうだな・・・とりあえず、このまま斜めに進んでいくか」


北東方向へ進路を変え、ひたすら真っすぐ進んでいく。どんどん真っすぐ進んでいき、あっという間にマップの中ほどへと着いてしまった。マップはまるで虫に食われたようになっている。


「こんなのでいいんですか?セーフティーエリアも見つかりませんし...」

「そうだな...。ちょっと探索したら、戻ってマップを埋めようか」


せっかくここまで来たんだから、少しくらいは辺りを見ておきたい。そう思って少し奥に進んでみたら、辺りの様子が変わってきた。鬱蒼と茂っていた木は、さらに緑を濃く暗くしていく。一応道らしいものはあるものの、下草に覆われ非常に歩きにくい。道がない場所はさらに草が濃く、足に絡み付いてくる。動き辛いから、前衛は大変そうだ。俺たちから見えないところも多くなっているので、奇襲にも注意しないと。


「フォレグ、気を抜くなよ。雰囲気が変わった」

「りょーかい。急に木が増えて、どうしたんだろうね?」

「ここからが本番、ってことでしょうか?」


そうだな、と答えようとしたその時、感知に大量の光点が表示される。ちょ、どういうことだよ!?


「全員構えろ!敵がすぐ側まで来てるぞ!」

「嘘!?索敵には引っかかってないのに!?」


慌てて全員が武器を構える。木々の間から出てきたのは、多くのエントたちだった。そういや、こいつらは索敵じゃ分かんなかったな!前はノンアクティブだったから、問題なかったけれど!

前のエントたちは木がそのまま人型になった感じだったけど、こいつらは違う。色は血を吸ったような朱色で、枝の先はピックのように尖っている。明らかに、凶器として進化している。出てくる敵の種類が変わるのかよ!?もうすぐそこまで迫ってるぞ!


「どうするテル!?」

「シルバは正面、ダートは右をカバーしろ!フォレグは急いで左に罠を設置!出し惜しみしてる場合じゃない!フルンはシルバを回復しつつ、ダートとフォレグに支援魔法!ルージュはフォレグのほうの敵を減らせ!」

「退路は!?」

「俺が確保する!」


そう言って、囲まれつつあった後ろのエントたちを、轟砲で吹き飛ばす。シルバがけっこうな数を引き受けてくれているものの、俺が戦っている後方にまで、エントたちが群がっている。ここを塞がれたら、退却出来なくなる、死ぬ気で敵をやっつけなきゃ!


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