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少年はフォレグのスキルを探す


鬱蒼としたくらい森を、歩いていく。採取するのも忘れない。


「テルさん、敵だよ!けど、二団体に分かれてるよ!」


遠視で敵を捕捉する。真っ黒の団体が先行していて、後ろから蝶が飛んで来ている。毒と麻痺が半々だ。


「蟻と蝶に同時に攻められたら、いくらシルバでもキツいぞ!ダート、蟻は任せた!」

「任された・・・地面の敵は私がやる」

「ルージュ、今回は出し惜しみなしだ。MP赤字覚悟でやっちまえ!」

「おう!」


さて、俺も今から仕込みをしないとな。息を整えながら、意識を細く、密に高めていく。

段々と周りの音が消えていく。ダートがシルバに噛み付いてる蟻たちを吹き飛ばしているが、俺には何の音も聞こえない。っていうか、ダートシルバごと吹っ飛ばしてんじゃん。ダメージは入んないけど・・・まあ、シルバにならご褒美か。


意識を蝶のみに絞っていく。周りの気配も消え、俺の視界には飛んでいる蝶しか映っていない。

手元のクロスボウにちょっとだけ意識を向けて、嵐砲を発動。クロスボウを構えて、一体につき一回ロックをつけていく。

そして、最後の仕上げ。一気に集中して、狙いを急所の頭だけに限定、そのままの勢いで発射する。


空中に射出されて、ドドドド!と蝶に降り注ぐ矢の嵐。土煙が上がって、蝶たちの様子が分からなくなってしまう。


「まだ気を抜くなよ、どうなってるか分からないからな...。ぐううう...」

「ちょ、大丈夫ですか!?顔色、すごい悪いですよ!」

「ちょっと集中し過ぎたよ...。蝶は?」

「もうすぐ土煙が晴れます」


土煙が晴れるとそこには・・・全ての蝶が頭を射抜かれて地面に縫い付けられていた。


「・・・うわぁ」

「これはひどいねー...。写真撮っとこ」

「あれだな、ドラキュラ伝説を思い出すな!」


ああ、串刺し公ね。頭から生えた矢がそう見えなくもない。あ、崩れちゃった。


「ん・・・どうしたの?」


ダートが一人で蟻たちを殲滅して、俺たちの所にやってきた。逃げようとしていたやつを追っていたんだな。


「テルさんが、こんな惨状を作ったんだよ」

「ん・・・久しぶりに、テルがテルらしいことをした」

「え、俺ってこんなイメージ?」

「ん・・・目打ち、急所打ちとか」


何か、それだけ聞いたら、すごい嫌な感じだな...。


「でも、あんまりやったらダメですよ?撃った後、しばらく動けないじゃないですか」

「まあ、使うなら最後の決め技だな。よっこいせっと」


勢いをつけて立ち上がる。MPは・・・三割半分くらいだな。消費は普通の嵐砲を変わりない。ただ、意識を集中させるだけだ。


「そんじゃ、進みましょうかね」

「もう平気?」

「問題なし!さっさと進むぞ!」






しばらく進んだところで、ついに新しいモンスターと遭遇した。どんなモンスターかというと...。


『キィイイイイイ!!!』


なんと、目玉に羽がついた奴!名前のまんま、フライアイだ。これは・・・腕が鳴るなぁ...。


「さて、んじゃ、いつも通りで。どんな攻撃をするか分からないから、ダートは気をつけるよ」

「ん・・・」


シルバに向かって目玉たちが飛んでいき、少し距離をとってコウモリみたいな翼を振る。風の刃が発生して、シルバの周りを切り刻んでいく。


「おおおお!!!」ガンガンガン!

「むう・・・近づき辛い」


あれじゃ、攻撃した途端風でやられちゃうな。ダートには飛刃で攻撃してもらうとして、俺たちが数を減らしていこう。


バンバン矢を射っていく。ルージュは目玉に対抗しているのか、同じ風の刃の魔法で攻撃している。


「うーん、楽しいなぁ。あんだけ目が大きいと、黒目の真ん中を狙ってみるのも面白い」

「楽しそうですね、テルさん...。顔がすごい輝いてますよ」

「一番最初にやったことだからな。最近、目がある敵が少なかったし」

「ああ、そういえばそうでしたね。蟻とかは撃たないんですか?」

「ちょっと、それは難しすぎるな。まあ、あいつらは腹と頭が急所だから、そこらへんを撃っているってのもある」


虫の目は小さすぎて撃てないからな。もっと撃ちやすい敵が出て来て欲しいよ、撃ちやすすぎてもつまらないんだけどね。


「ふう、もう終わりか。早かったな」

「まあ、二人で撃ちまくってたら、こんくらいだろ!あ、MPポーション、切れた」

「え、もう?」

「今回はあまり節約しなかったからなー」

「あ、じゃあ僕のあげますよ!あまり使いませんし!」

「マジか!ありがとなー、助かったよ」


フォレグは索敵とか気を引くのには役立てるけど、イマイチ攻撃力に欠けるな...。どうにかできんものか...。


「ん・・・どうしたの?」

「いや、フォレグって、攻撃に威力がないだろ?何かいいスキルないかなーって」

「確かに・・・もう少し、Agi極振りを活かしたほうがいい」


エンチャントアジリティーの突進は、単体相手にしか使えないし、威力も特筆するほど高いってわけじゃない。今のフォレグの戦闘スタイルは、高速で動き回ってナイフで状態異常にするって感じだ。いっそのこと、スタイルそのものを変えてしまっても、いいかもしれない。ルージュのポーションも切れたし、昼飯を作らなきゃいけない。、一旦帰ろうか。


「おーい、一旦戻るぞー!」

「「「「「はーい!」」」」」


森深部での取得物:フォレストアントの甲殻&針 バタフライ・ポイズンの羽&鱗粉 バタフライ・パラライの羽&鱗粉 フライアイの翼&目 各種木材&キノコ






街に戻って、とりあえず昼食のために昼休みにする。さて、それじゃ作っちゃいますか。そうだな・・・ペペロンチーノでいいかな。必要な材料が少ないし、作るのが簡単だ。ま、その分だけ誤摩化しがきかないんだけどな。


作り方は単純、いっぱいのオリーブオイルにニンニクと種を抜いた唐辛子を入れる。スパゲッティーの茹で汁を加えて、そのままスパゲッティーも投入するだけ。うし、完成だ。味は・・・まあまあだな。これなら安心して出せる。


「お、いいにおいがするなー。昼飯は何だ?」

「ペペロンチーノだよ」

「洒落たもん作ったなー。多めにくれ」

「オッケー、はい」


皿に盛ったスパゲッティーを、兄貴に手渡す。すぐに仁美も食べにきた。


「わー、ペペロンチーノだ。ありがとうございます」

「辛いのは大丈夫?」

「平気です、むしろ好きですよ」


仁美に昼食を渡してから、俺もテーブルにつく。いただきますっと。


「孝昭たちは、今どこにいるんだ?」

「最初はドワールの奥の方に行ってたんですけど...。ミミズが大量に出てきたんで、エルフィの森の深部に変えました」

「ミミズって・・・96体?」

「ぶっ!しょ、食事中に変な事言わないでよ!想像しちゃったじゃん!」


うえ...。俺もまた思い出しちゃったよ...。しばらくは付きまといそうだな...。


「ふう、ごちそうさま。皿は軽く流してから、シンクの中に入れといてね」

「早いな!もう食い終わったのか、すぐログインするのか?」

「いや、洗濯物を取り込んで皿を洗ってからだな」

「皿は私が洗っておきますよ!全部やってもらうのは悪いですし」

「いいのか?俺がやっても大した手間じゃないぞ?」

「いいんです、やらせてください」

「んじゃ、頼むな」


皿洗いを仁美に頼んで、俺は洗濯物を取り込みにいく。皺にならないよう、丁寧にかごの中に入れていくのだが...。智美さんと仁美が来てから、干している物がカラフルになっている。下着とかもあるので、出来るだけ焦点を合わせないようにしながら、急いで取り込んでいく。はあ、怒られないかな...。


クローゼットの前で服を畳み、そのまま収納していく。下着は最後のほうにしておこう...。

黙々と畳んでいたら、すぐに下着以外畳み終わってしまった。・・・仕方ない、このまま放置するのも、気が引けるし...。覚悟を決めて下着を畳もうとしたその時、


「孝昭さん、こっちは終りましたよ。畳むの、手伝...」

「・・・」


仁美の視界の先には、女物の下着を持って固まっている俺。みるみるうちに仁美の顔が赤くなっていくのを見て、これは仁美の物なんだなーと、場違いな考えが思いつく。


「えっと・・・か、可愛いやつはいてるな!」

「イヤアアアァァッァーーーー!!!!!」

「ボゲブ!?」


仁美が、そばにあったキャリーバッグを投げつけてくる。見事にみぞおちに入り、ウエッとなる。


「あああああっち行っててください!あとは私がやりますから!」

「お、おう...。本当にごめん...」


這ってリビングに戻る。謝っとかなきゃ...。


「すいませんでしたー!!!」

「もういいです。わざとやったわけじゃないでしょうし。・・・わざとじゃないですよね?」

「違うよ!たまたまだよ!今思えば、取り込む前に仁美を呼べば良かっただけだけど!」

「はあ...。今度からは、私が取り込みますからね。孝昭さんは、近づいちゃダメですよ!」

「了解。本当にごめんな...」

「だから、もういいですって。気にしてませんから」


はあ、何かすごい疲れた。用は済んだし、もうログインしよう。






少し皆と相談したいことがあるんで、全員揃うのを待ってから切り出す。場所はいつもの喫茶店である。



「俺が相談したいのは、フォレグのプレイスタイルについてだ」

「え、僕?へ、変な所でもあったかな?」


フォレグが急にビクビクしだす。そんな緊張することじゃないのに。


「いや、そうじゃなくて。今のままじゃ、何かAgiを活かしきれてないような気がするんだよ」

「ん・・・私もそう思う」

「そうですか?今のままでも、十分だと思うけど...」


まあ、確かに今のままでも索敵とかで活躍出来ると思うけど...。


「フォレグも、ダートやルージュみたいに敵を倒したいだろ?」

「・・・そうだけど、Agi極振りだよ?どうやって倒すの?」

「それを今から全員で考えるんだよ。皆、いいかな?」


嫌だと言われたら、どうしようもないんだけど...。皆なら手伝ってくれるはず!


「もちろんお手伝いしますよ」

「敵を倒すのは楽しいもんな!」

「フォレグの為と言われちゃ、手伝わないわけにはいかないな!」

「皆・・・ありがとう!よーし、頑張るぞー!」


うん、やっぱり皆いい人たちだな。絶対にフォレグに合うスキルを見つけるぞー!






「「「「「「うーん...」」」」」」


皆で頭を捻って考えるものの、そう簡単には思いつかない。第一、簡単に思いつくなら困らないし。


「やっぱ、こういうのは苦手だー!全然思いつかん!」

「うーん、この突進って奴はどうだ?その名の通り、突進攻撃に補正がかかる」

「うーん・・・それは後回しだな。それじゃあ、今のままと変わんないし」

「それもそうだな...。はあ、中々いいもんがないな...」


さて、どうしましょうかね...。Agiが高いわけだろ?Agiが高けりゃ、移動速度が速くて攻撃速度も速い。・・・うーん。


「まず、いらないのから考えていこうか」

「消去法ってわけですね。ならまずは、生産系は当然除外です」

「魔法系もなしだね。Intに振ってないことだし」


ってことは、武器を変えるってのもありか...。どんなのがあるんだ?


「えーっと、Agiって攻撃速度も上がるんだよな?なら、投擲で投げまくるってのはどうかな?」

「重い物は投げられないよ?」

「なら・・・爆弾とか」


爆弾なら、Strが無くてもダメージは通るはず。


「それはありかも・・・でも、最善ではないと思う」

「まあ、そうだよな。金がかかるし、ボスとかには効きそうにないもんな」


はあ、いい案だと思ったんだけど...。他にはどんなものが・・・お、これはどうだろう?育てば敵も倒せるかも。


「これはよさそうだぞ。罠って武器スキルだ」

「罠?どういうのですか?」

「まんま、罠を仕掛けられるようになるスキルだ。基本は装備出来る何回も使える奴とアイテム扱いの使い捨ての奴だ。アーツで強力な奴や、特殊な罠が出るらしい」

「へー、面白そうですね!人気そうじゃないですか!」

「うーん、待ちの武器だからなー。そんなに人気ではないみたいだぞ」


引っかかってくれないと、罠は意味をなさないからな。


「でも、フォレグなら大丈夫だろ。敵の目の前に設置して高速で離脱したり、シルバの周りに設置したり...」

「うんうん!面白そう!」

「あー、でも設置数に制限があるのか。俺たちの戦い方だと、少し厳しいかも...」

「それならこれ・・・両手持ちとクイックチェンジ」


両手に罠を装備して、設置数が上限一杯になったら、クイックチェンジで武器を交換するってわけか...。いけそうだな。


「使い捨ての罠は、罠作成ってスキルで作れるらしい。これは俺が取っておくよ」

「いいの?」

「ああ、ちょうど生産もやってみたいと思ってたしな。Dex極振りに任せてくれ」


わざわざ買うのも、金がもったいないしな。後は外すスキルを決めるだけだ。


「短剣は外すとして、他にはどれにする?」

「うーん、毒は残しておこうよ。兄ちゃんっていう、立派な壁があるからね」

「ははは、そうだな!」

「SPは足りるか?」

「うん、ずっと取ってなかったしね。けっこう残ってるよ!それじゃ、取っちゃうね!」


フォレグが罠と両手持ちとクイックチェンジ、俺は罠作成を習得する。天火さんに、装備する罠を作れるか聞いておくか。


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