少年は掲示板に報告する
ダートと露店を眺めていたら、すぐに一時間経ってしまった。噴水広場に戻ると、もう全員戻ってきていた。シルバは遅れると思ってたんだけど、フォレグがちゃんと引っ張ってきてくれたようだな。
「遅かったなー、テル!時間ギリギリだぞ!」
「武器屋とか見てたら、遅くなっちゃってな。面白いものはあったか?」
「ああ、見たことがないアイテムがいっぱいあったぞ!買ってないけどな!」
「折角報酬でお金をもらったのに、すぐに使っちゃったらダメでしょ!私は新しい装備だって買いたいんだし」
「なら、フルンは買わなきゃいいだろ。何を買うかは、私の自由なんだし」
「いい加減、装備を変えようよ...。魔法の威力が上がるし、もっとカッコイイローブとか作ってもらえるよ?」
「そ、それは・・・作ってもらいたいな...」
「でしょ?後で、職人さんを捜しに行こ」
俺も作ってもらわなきゃなー...。シルバたちにも、話を聞いてみるか。
「シルバー、どのエリアに行ってきたんだ?」
「えっと、西のほうに行ってきたぞ!海岸で、カニとかフナムシのでっかい奴とかと戦ったぞ!」
フナムシ...。運営に苦情が殺到しそうだな...。
「フォレグはそういうの大丈夫なのか?」
「まあ、戦えないってほどじゃないけど...。さすがにキモかったよ...」
「よく頑張ったな...。とりあえず、クレセントに戻ろうか。天火さんに素材を見せなきゃいけないし」
「あの、テルさん。防具とかを作る分は、出さなくてもいいですか?」
「俺のだけしか見せないよ。ま、牙はダートから借りるけどな」
「ん・・・私の武器には、小さすぎる」
「分かりました。すいません、自分の都合で...」
「別にいいよ。俺も防具を強化する予定だしな」
どんな風にしてもらおうかな。作り直すには枚数が足りないから、所々補強してもらう感じになるのかな。
「おー、テル。倒せたかー?」
「倒せましたよ!フルンが上手くやってくれました!」
「そりゃおめでとう、新しい街はどんなとこだ?」
「グラーディーって街で、闘技場があるんです。色々新アイテムが売ってましたよ」
「そうかそうか。で、ドラゴンの素材は?」
「ここに」
クレセントに戻り、真っ先に天火さんのところに向かう。そのままの流れで、ドラゴンの素材を見せる。
「ほうほう、これはなかなか...。お、これはいい武器になりそうだな。・・・尻尾か...。どんな武器になるんだ...?」
素材を受け取った天火さんは、データを見ながら何やらブツブツと呟いている。こういう姿を見てると、天火さんって鍛治師なんだなー、と改めて思わされるな。普段の姿だと、ただ口が悪い子どもだかんなー。
「・・・なあ、テル。新しいクロスボウはいらないか?」
「強化じゃないんですか?」
「どっちかといえば、改造っていったほうがいいな。土台はドラゴンの骨にして樹皮を貼付ける、弓はエルダーエントの枝。弦は蜘蛛のを転用するとして、どこかに葉っぱと鱗でもつけるか...」
「細かいところは、天火さんに全てお任せしますよ。好きなように改造してください」
「おう、すごいやつを作ってやるぜ!金は受け取りの時にな」
「了解です。それじゃ、俺はこれで。皆、この後はどうするんだ?」
そういや、決めてなかったな。俺としては、ちょっとやりたいことがあるんだけど...。
「私たちは防具を新調してきますので、ちょっと抜けさせてもらいますね」
「ドラゴンの皮で、ローブを作ってもらうんだ!」
「それじゃ、僕たちもいい機会だし新しくしようかな。ねえ、兄ちゃん」
「そうだな!鎧も新しくしたいしな!」
ふむふむ、なら今日は解散ってことでいいかな。
「んじゃ、今日はこれで解散にしようか。ダートも防具を変えたらどうだ?」
「ん・・・作ってくる」
「じゃあ、解散!」
皆がバラバラになって散っていく。さて、俺もハマンさんのとこに行ってくるか。蹴りのレベルは・・・20になってるな。アーツはどんな風になってるのかなー。脚を見ている余裕なかったし。
「テル君!久しぶりだね、元気にしてた?」
「元気にやってますよ。ハマンさんから教わった蹴術、中々役に立ってます。敵の攻撃を防ぐのとかに使ってますよ」
「そりゃよかった、今日は何の用だい?あ、脚甲が強くなったの?」
「それもありますけど、服を作ってもらいにきたんです」
「あ、そっちか。んじゃ、まずは服のほうから済ませようか。今の服を改造?それとも、一から作る?」
「改造です。そこまで量が多くないんですよ」
ドラゴンの皮をハマンさんに渡す。鱗とかも渡したほうがいいのかな?
「へえ、ドラゴンか...。他にはどんなのがあるの?」
「えっと、鱗と骨、尻尾ですね。皮はそれで全部です」
「じゃあ、鱗を数枚と骨を一本ちょうだい」
ハマンさんに鱗を渡すと、すぐに実体化じて大きさを確認する。
「あー、思ったより大きいや。こんだけでいいよ」
1枚ハマンさんから鱗を返されて、俺の手元には5枚残っている。骨は残り3本だ。
「それじゃ、今の服をちょうだい。あ、これが代わりの服ね」
「はい。・・・これって、ハマンさんの私服?」
「手元にこれしかなくってね」
代わりの服と渡されたのは、灰色のつなぎだった。やばい、生産したくなってきた!
「明日には出来るから、それまで待っててね。それじゃ、脚甲を見せてもらおうか!」
「まだ俺も見てないんですよね。忙しくて」
「ちょうどいいじゃん、やってみてよ」
「はい」
魔力脚甲を発動する。今までは脚が薄く包まれてるだけだったが、20レベルに上がったからか、少し形が変化している。爪先が尖り、膝の辺りが丸くなって真ん中に小さなとんがりが出来ている。足首の部分も、何となく洗練された形になってきたし...。最終的には、どんなふうになるんだろう。
「おお、何かかっこ良くなってるね。爪先で蹴る感じなのかな」
「そうでしょうね。ここだけ、妙に攻撃的なフォルムですし」
「こんなふうになるのか...。見せにきてくれて、ありがとうね。これからもよろしく」
「もちろんです。服はお願いしましたよ」
「任せといて。立派な服に改造しとくよ」
さて、ハマンさんとの用事は終った。後やらなきゃいけないことっていったら・・・情報を流すことかな。皆はそういうの興味なさそうだし、俺がやっておくかね。そうと決まれば、早速、荒野ボススレに書き込むか。
CNW掲示板 荒野ボススレ
まぐろ『レッサードラゴン強すぎだろ!堅いのはともかく、あの火球はどうにもなんないだろ...』
トッレス『まったくだよ...。誰か倒せんたんかね』
テル『レッサードラゴンを倒しましたー!』
そーりょ『撃破報告キターーーー!!!』
トッレス『キターーーー!!!』
クレイ『どうやって火球を防いだんだ!?』
テル『土魔法の壁でガードしました。一回で壊れちゃいますけど、一気に押し切ったら勝てましたよ』
まぐろ『いや、一気に押し切るって...。魔法はある程度ダメージが入るけど、物理はあんま入んないぞ!』
クライド『土の壁か...。ようやく土魔法に、活躍の場が出てきたな』
ボルド『うちのパーティーに、土魔法が使える奴いねえよ...。新しく覚えさせるしかないか...』
まぐろ『え、また俺無視の流れ?』
トッレス『出来るだけMPを温存して、最後で一気に魔法を使うって流れか?』
そーりょ『そうなりますね。土魔法とっててよかったー』
テル『土魔法って、取ってる人が少ないんですか?』
そーりょ『少ない少ない。Vit上げるより、Str上げたほうが早く敵を倒せるからな。ボスの時は、Vit上げたほ
ういいってのになぁ』
まぐろ『だから、無視しないでよ!MP温存するにしても、一気に押し切るなんて不可能だろ!』
ボルド『だって極振りだし』
まぐろ『・・・はい?』
そーりょ『知らなかったのか?掲示板内なら結構有名だぞ。まあ、あのハーレムほどじゃないけど。詳しくは極振りスレで』
まぐろ『ちょっと待ってて、確認してくる』
トッレス『まぐろ、テルが極振りだって知らなかったんだな。どうりで五月蝿いわけだ』
テル『いや、俺も皆に知られてたって知らなかったんだけど...。・・・クレイの仕業だな』
セイレン『でしょうね。羽毛より口の軽い男だもの』
クレイ『ひどっ!エジプトで死ねば、天国に行けるぞ!まあ、俺が言ったんだけど...。マズかったか?』
テル『俺はいいけど、他のメンバーはどうかは知らん。あと、羽毛と比べるのは心臓。重さが等しくないと有罪だぞ』
セイレン『知ったかぶりね』
クレイ『公開処刑はやめてくれー!!!』
まぐろ『確認してきた、最近荒野スレしか見てなかったから、分かんなかったわ。というか、いつここはエジプトスレになったんだ?』
クライド『ついさっきだよ。どうだった?」
まぐろ『極振りなんてしてる奴、本当にいたんだな。しかも六人。全員、同じパーティーってのもすごい』
ボルド『お前がこの前見た、モンスターの群れもテルたちの仕業らしいぞ』
テル『クレイ、そのことまで言ってたのかよ...。せめて聞け』
クレイ『悪い悪い、極振りって中々人気なんだぞ。見てる分には、面白いし。女の子可愛いし』
テル『後者がメインだろ!ダートは怖いぞー。ナンパしてきた奴らを吹っ飛ばすし。フルンはシスコンだから、ルージュに手を出したら容赦がないぞ』
クレイ『マジか...。先に聞いといて良かった...』
テル『・・・言わなきゃ良かったかも』
クレイ『ひどっ!』
テル『それじゃ、倒した方法はもう伝えたぞ。頑張って倒してくれ』
ボルド『まあ、何とかなりそうだ。頑張って倒すよ』
クライド『そうだな、気張っていくか』
クレイ『よし!さっさと倒そうぜ!』
まぐろ『はあ...。極振りなら、一気に押し切れるよな。俺もコツコツやってみるか』
ふう、こんなもんでいいかな。思ったより長話してしまった。というか、極振ってるって皆知ってたのかよ。ダートとかフォレグたちは知ってるのか?まあ、今度聞けばいいか。
情報も出したことだし、もうやり残した事はないな。これから何をやろうか。えっとスキルは『クロスボウLv21 ステップLv19 蹴りLv20 暗殺者Lv15 精霊魔法Lv21 チャージLv21 消費MP減Lv22 魔力感知Lv17 分割思考Lv16 バディーアニマル』で、俺のレベルは22だ。
そうだな...。フォレグたちが行ってた、海岸の方にでも行ってくるか。久しぶりのソロ活動だ。リザも戦わせてやらないと、可哀想だしな。
「リザー、いるか?」
「ぎゅう?」
俺の影から出てくるリザ。え、そんなところにいたんだ。全然気づかなかった、いつもいつの間にか現れてたからな。
「今日は、リザを育てるぞ。レベルは上がったけど、スキルは全くレベルが上がってないからな」
「ぎゅうう!!!」
おお、喜んでいる。ずっと待たせていたからな、出来るだけ上げてあげよう。
グラーディーの街から、西の方へ出る。少し街道があったが、すぐに海辺の海岸にたどり着いた。
「そんじゃ、リザ。俺とゴーレムで敵を引きつけるから、隙を見て攻撃しろ。一回攻撃したら、すぐに離脱する事。いいな?」
「ぎゅう!」
「俺はDex極振りだから、ダメージは高くない。攻撃はお前頼りだぞ」
『All right』
おお、そんな言葉もしゃべれたのか。レベルが上がったからかな?
「お、ちょうど良くモンスターが出てきたぞ。フナムシか・・・気持ち悪いな...」
『?』
「まあ、分かんないよな。よし、いけ!」
ゴーレムを飛ばしながら、俺もステップで近づいていく。二匹いたので、一匹ずつ相手にする形になるな。
「きゅー」と言いながら、飛びかかってくるフナムシ。くそ、声は可愛いな!
空中で蹴っ飛ばす。蹴りが当たる直前に、精霊魔法をかかとにぶつけて加速させる。
「ぎゅぴー!?」
「おりゃおりゃおりゃ!」
地面に転がったフナムシをひっくり返し、腹に爪先を蹴り込んでいく。俺に蹴られ続けて、まったく動けないフナムシ。もう片方の奴も、ゴーレムが上手く立ち回っている。が、
「ぴー!」
「うおっと!」
ゴーレムの攻撃をかいくぐり、俺に飛びかかってくるフナムシ。ステップで躱したが、攻撃は中断してしまった。ダメージも三割ちょいしか入っていない。やっぱりDex極振りだと大変だな。
『I,m sorry master』
「気にすんな。二対二だよ」
やっぱりサシで戦わせるのは、まだ無理があったか。近接戦闘をしながら、上手く操作出来るか?
「「きゅー!」」
「っち!やるだけやってやる!」
「ぎゅー!」
フナムシたちが襲いかかろうとしたその時、隙を伺っていたリザが飛んできてブレスを吐く。まともにブレスを喰らって、慌てて後ろに下がるフナムシたち。
「そいや!」
そこをすかさず攻撃する。まずはゴーレムを、俺が攻撃していたフナムシに突き立てる。残りHPは四割、俺はチャージをしておく。蹴りにも使えるんだよな、このスキル。マジ便利。
そのままゴーレムの柄頭を、前宙しながらかかと落とし!精霊魔法で加速させるのも忘れないよ!
「きゅぴ...」
HPバーが減っていき、全て削り切る。よし、直接攻撃したのがゴーレムだったのが良かったな。
「きゅー!」
怒って俺に突撃してくるフナムシ。まったく周りが見えてないようで、上からリザに襲いかかられた。
「ぎゅぎゅぎゅー!」
甲殻に噛みつき、直接ブレスを喰らわせる。ガンガンHPが減っていき、リザのMPがなくなるころには0になった。
「ふう、何とかなったか...」
「ぎゅぎゅ!」
「頑張ったな、リザ。助けてくれてありがとな」
「ぎゅー!」
リザがいなきゃ死に戻ってただろうな。ホント、助かったよ。
「ゴーレムは俺が操作した方がいいな。俺の視界から外れないように。流石に視界の外だと、動かしようがないからな」
『Yes master』
さて、リザのスキルのレベル上げ、頑張りましょうか!