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少年は荒野のボスに挑む


荒野のボス戦当日、十時に集合だったが俺はちょっと早く九時ログインした。天火さんに頼んでおいた、レバー式の装填機を見せてもらうためだ。


「おはっす、天火さん。装填機は出来てますか?」

「おう、取り付けもおわってるぞ。ほら、これだ」


エイムシューターの頭の輪に針金みたいなのをひっかけて、レバーを押すとそれの真ん中辺りにくっついてる弦を押す部分、入って文字を逆にした感じだな、が動くようになっている。言葉じゃ分かりにくい、詳しくはウェブで!


「これなら、取り外すのも簡単ですね」

「まあ、外すことはないだろうけどな」

「そうですか...。そういえば、最近勧誘が来ませんね。諦めたんでしょうか?」

「まあ、俺を勧誘しているうちに、最初のボスが倒されちまったからな。こんなことしてる場合じゃないって、思い始めたんだろ」

「なるほど...。専属鍛治師の利点って何なんですか?やけにしつこかったですけど」


パーティーには入れないだろうし...。武器を作ってもらうくらいっしょ。


「その鍛治師の武器を独占できるんだ。腕のいい鍛治師を専属に出来れば、他の奴より良い武器が手に入るってことだ」

「独占、ですか...。別にしなくてもいいじゃないっすか。優先して武器を作ってもらうくらいで、いいと思いますよ」

「俺も同じだな。独占はやりすぎだと思う」

「みんなで仲良くは出来ませんか。さすが人間ってとこですね」

「まったくだ」


分け合うことをせず、一部の人間が豊かさを独占する。人間の特徴だよな。他人を蹴落とそうとするところとか。


「そんじゃ、軽く身体を動かしてきますか。また後で来ます」

「やりすぎるなよ、これからボスなんだからな」

「了解です」






とりあえず荒野に向かう。あまり時間はないけど、装填機に慣れるくらいは出来るだろ。


お、骸骨が見えた。剣と弓の二体とか、迫力ねぇな...。すごい弱そうに見える。

隠形を使ってから近づいていって、弓骸骨の首を撃つ。やられた奴を気にすることなく、俺に向かってくる。装填してみよう!

レバーを押すと同時に、弦にかかっていた押し込み部分も動く。約二秒で弦を張り直すことができた。けっこう力がいるけど、一瞬だから負担はかなり軽い。手だと、ずっと引っ張らないといけないからなぁ。これはいい、作ってもらって良かった。

パシュっと撃って、戦闘終了。骸骨は急所が脆すぎるからダメだ。蜥蜴がいいな、HP多いし。ちょっとは蹴っとかないと、勘が鈍る


それからしばらくモンスターを蹴ってから、クレセントに戻った。もうすぐ十時、ポーションとかを買い足しておこう。



HP・MPポーションや矢を買ってから、中央広場に戻る。ダートとフルン、フォレグが来ていた。ルージュとシルバはまだなのか。


「おはよう・・・どこ行ってたの?」

「ポーションとかを買ってたんだよ。少し減ってたからな。フルンはルージュと一緒じゃないのか?」

「姉さんはまだ起きてなかったんです。昨日、楽しみで寝られなかったみたいで...」

「小学生か!?あいつ、高校生だよな!?」

「はい、高二です。あ、ちなみに私も高二ですよ」


高校生でそれって...。子どもっぽいな。


「ピーマンが苦手だったり、自分が勝つまでゲームを止めなかったり...。退屈はしないんですけどね...」

「まあなんだ・・・頑張れ。好きな人でも出来たら、少しは大人っぽくなりそうなもんだが」

「姉さんに好きな人!?そりゃ、姉さんはきれいですけど...。でも、あの姉さんに恋人...?」


フルンが頭を抱えて悩みだした。こっちが妹だよな?過保護だなぁ...。


「だって、あの姉さんですよ!?悪い人に騙されちゃいますよ!」

「まあ、純粋って意味ならな...。そこまで馬鹿ではないと思うんだけどな」

「そりゃそうですけど...。むむむ...」


シスコンって大変なんだな。


「ダート、調子はどうだ?」

「いい感じ・・・よく寝れた」

「そりゃ良かった。ダートとルージュは、俺たちの主火力だからな。期待してるぞ」

「ん・・・頑張る」


ダートは何時もと変わりなし。適度に緊張しつつも、気張りすぎてない。何というか、貫禄があるな。


「フォレグ、大丈夫か?」

「だ、大丈夫だよ!緊張してなんかないんだからね!」


緊張のあまりツンデレてる。このままじゃボスに突っ込む前に、転んで死に戻りそうだな...。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ。今回ミスっても、次があるんだ」

「でも、初撃破報酬は一回しかでないし...」

「おいおい、俺たちは極振りパーティーだぞ。皆がアンバランスだから、一周回ってバランスが取れている。一人一人が自分のやることをしっかりやれば、勝てない敵なんていない」

「・・・そうだね!僕、頑張るよ!」


いい感じに緊張が和らいだな。あとはシルバとルージュだけど・・・まあ、二人とも問題ないだろ。張り切りすぎないように、注意するくらいかな。






「うおおおお!!!ボス戦、やったるでー!!!」

「楽しみだな、な!」


残り二人は思った通り、むっちゃ張り切っていた。力が入りすぎて空回りしている。このままじゃ絶対やらかすだろうな。


「二人とも、そこに正座して」

「何だよ、さっさと行こうぜ!」

「そうだそうだ、初撃破報酬が取られちゃうぞ!」

「いいから」

「「・・・はい」」


二人が石畳に正座する。まったく・・・こいつらは...。


「なあ、俺は昨日、10時に集合って言ったよな?お前らが来たのは、10時半。30分遅刻とはどういうことだ?」

「い、いや、それはな...。ちょっと楽しんでたら、時間が過ぎちゃってて...」

「寝坊しちゃって...」

「フルン、ルージュを起こしたか?」

「起こしましたよ。全然起きませんでしたけど」

「え、そうなのか?」


気づいてすらないのか...。どうしようもないな。


「小学校で、五分前行動って習わなかった?今度からは遅れないよう、気をつけるように」

「「はい!分かりました!」」


これでいい感じになったな。皆がちょっと引いてるみたいだけど、何でだろうな?


「テルさんって、けっこう怖いですね...」

「怒ってるというよりは、ただ注意してるだけなんだろうけど...。妙に迫力があるね...」

「モンスターと戦う時も・・・真顔は怖い」


何か言ってるけど、気にしない気にしない。笑顔で怒るほうが、もっと怖いだろ。


「はいはい。とりあえず、荒野のボス部屋まで行くぞ!そこで作戦会議だ!強者の風格は外しとけよ!アイテムが買いたいなら、今のうちだぞ!」

「それじゃあ、ポーション買ってきます!」

「俺も行ってくる」


全員、ダッシュで荒野に向かう。スピードは遅いが、なにしろいつもは96体を相手にしてるんだ。12体なんか、軽い運動程度だな。MPが切れるまでルージュがばかすか魔法を撃ち、切れてからはダートが斬り飛ばし続けた。最短距離で移動したので、HP的な損害は全くない。


ボス部屋には一つだけパーティーがいた。チラッと俺たちを見たが、すぐに目を逸らし話し始める。俺たちも、さっさと作戦会議を済ませるか。


「ここのボスはレッサードラゴンらしい。翼がない、でっかい蜥蜴みたいなドラゴンだ。高いStrとVitが特徴的だ。主に爪攻撃と噛みつきと尻尾振り回し、それと炎ブレスをしてくる。どの攻撃も威力が高く、その中でもブレスがかなり脅威だ。後衛にも届くことがあり、しっかりと壁役が抑えなきゃいけないぞ」

「炎か...ろうそくより熱いか?」

「そりゃ熱いだろ。作戦はいつも通り、シルバが受けて他の奴らが攻撃と補助だ。ただし、ダートとフォレグは正面に立たないように。ブレスが危ない」

「了解」

「分かったよ!」


前衛はそんなものかな。次は後衛だ。


「ルージュとフルンのところには、ブレス以外あまり攻撃は来ないと思う。けど、今のはβ版の情報だ。変更点があるかもしれない。気を抜かないように」

「おう!」

「分かりました!」

「おし。ちょうど今、あそこにいたパーティーが部屋に入ったな。何時でも行けるよう、準備しとけよ」



ボス部屋の扉は、10分もしないうちに開いた。死に戻ったんだろう。


「うっし、行くか!まだ撃破されたってどこにも流れてないから、ここで倒せば初撃破だぞ!気張っていけ!」

「「「「「おー!」」」」」


そうして俺たちは、ボス部屋の扉をくぐった。






ボス部屋は真ん中に大きい岩がぽつんとある、荒野のどこかだった。最奥には、動物や人の骨らしきものが大量に落ちている。

俺たちが前に進むと、大きな岩がぐらぐらと揺れた。ニョキッと出てくる、男性の胴ほどの脚。ゆらゆらと揺れる長い尻尾。炎の吐息がもれる口からは、包丁ぐらいの大きさの牙が覗いている。俺が岩だと思っていた奴は、ドラゴンが丸まった姿だったみたいだ。


「GUUUUU...」


俺たちを見たドラゴンは頭を一振りした後、


「GRAAAAAA!!!」


と怒りの咆哮を上げる。それが戦闘開始の合図だったようで、固まっていた身体が動くようになった。


「シルバ、突っ込め!ダートも便乗しろ!」


剣にシルバとダートを乗せて、ドラゴンの前に飛ばせる。ゴーレムのレベルはいつの間にか19まで上がっていて、動く速さも少し速くなっていた。途中でダートは飛び降りて、ステップで接近していく。


「おらああああああ!!!こっち向けやああああ!!!」


挑発を使いつつ、シルバが大声を上げてドラゴンの注意を引く。ドラゴンは飛び降りたシルバに噛み付く。ガキィイン!と高い音を立てて、ドラゴンの攻撃を防ぐ。ゴーレムはダートのそばで、浮かせていよう。


「おりゃあ!」

「・・・ふん!」


フォレグが右側から突撃して蹴りつける。迫り来る爪を、ドラゴンの身体を足場にして躱すフォレグ。すっげー、空中で一回転したぞ。アクロバティックだな。

その隙にダートが攻撃、柔らかそうな腹を下から斬り上げるドラゴンのHPは・・・一割ほどしか削れてない!?堅すぎるだろ...。


「ダートの攻撃じゃ、今回は厳しいぞ。フルン、Agiを上げられるか!?」

「出来ます!ダートさんですよね」

「そうだ、少しでも動きを速めてやれ!ルージュ、土の魔法でドラゴンは狙えるか!?」


攻撃範囲が狭いらしいからな。大雑把なルージュじゃ難しいかも...。


「・・・なんとか。でっかいからいけると思う。ソイルボール!」


土の球を出してドラゴンに撃ち込むルージュ。背中の端っこに当たり、HPが二割くらい削れた。これならなんとか...。


「GRUUUAAAAA!!!」

「っ!ブレス、くるぞ!」


今ので狙いがルージュに移ったようで、大きく息を吸い込むドラゴン。やっばい!


「させるか!!」


ブレスが出される前に、ステップで前に割り込むシルバ。直後、灼熱のブレスがシルバを襲う。


「ぬおおおおお!!!けっこう熱くていい感じー!!!」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!フルン、回復頼む!」

「は、はい!」


Vit極振りのシルバのHPが、ガリガリ削られていく。半分を下回ったところでフルンが回復したところで、ドラゴンは口を閉じる。その間、ダートとフォレグが殴り続けていたおかげで、HPバーは残り三割といったところだ。HPバーは三本、エントたちと同じだ。生半可な攻撃じゃ、まったくダメージが通らない。アーツを中心に戦闘を組み立てるか。


ドラゴンの急所は目・喉・腹の真ん中の三点だ。喉と腹は狙いづらいので、目だけを撃つことにする。

精霊魔法・チャージを使ってから、嵐砲を発動。一箇所に撃ちこめる矢の数は15本だから、両目で30本の矢を使う。二つくらいの的なら、少し集中すればいけるな。戦闘には影響しない。

轟砲を重ねてから、シルバに当たらないよう少し上に向けて矢を射る。放物線を描いて飛んでいき、頂点を通り過ぎたところで矢が解放され、ドラゴンの顔に降り注ぐ。


「GAAAAAAAAAA!!!」


ドラゴンの一本目のHPバーが削り切られる。MPを半分以上使うだけあるな。狙いが俺に移ったようで、再びブレスの構え。連発出来るのかよ!


「シルバ!」

「応!」


シルバがドラゴンの前に移動し、ブレスを受け止める。さっきより威力が上がってるみたいで、HPの減りが早い。HPバーが一本、なくなったからか!

ブレスを止めたドラゴンは、そのままシルバに噛み付く。ダートたちは攻撃を試みたが、二人を見たドラゴンはシルバを離し爪で迎撃する。くそ、ダートの攻撃はマズいと学んだようだ。ルージュに魔法で攻撃させたらブレスが飛んでくるし...。長い戦いになりそうだな。


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