少年のパーティーが完成する
強者の風格の仕様がおかしいと指摘されたので、少し変更させていただきました。
今までは2倍を6回足した和で12倍でしたが、2倍を三回かける積に変更しました。そのため、敵の数も144体から96体に減少します。
自分の知識不足です、申し訳ありません。
翌日の12時。毎度恒例の中央広場が見える喫茶店で、メールをくれた極振りさん達を待つ。ルージュとフルンも一緒だ。
「テルさん、私たちもいていいんですか?昨日加入したばっかですよ」
「これから一緒に戦うかもしれないからな、自分の目で判断して欲しいんだ。嫌だったら、そう言ってくれよ」
「任せとけ!」
「もう、姉さんったら...。分かりました、遠慮はしませんからね!」
「ダートもだぞ」
「ん・・・分かってる」
そうしている内に、俺たちが座っているテーブルに、金属鎧を着た大男と忍者っぽい深緑色の衣装をまとった少年がやってきた。あいつらだな。
「あんたがテルなのか?」
鎧の人が話しかけてくる。イメージ通り、野太い声だ。これでオネエだったら、さすがにお帰り願ってたな。
「そうだ。あんたらが、シルバさんとフォレグさんでいいのか?」
「ああ、俺がシルバで」
「僕がフォレグだよ。よろしく、テルさん」
二人が真向かいの席に座る。メールにはパーティーに加入したいって書いてあったけど、一応確認しとくか。
「二人とも、パーティーに入りたいらしいけど...。極振ってるよな?」
「そうでなきゃ、わざわざここまで来ねぇよ。そっちは二人だと書いてあったんだが、増えたのか?」
「ああ、ちょうど昨日にな。二人ともInt極振りだから、あんたらとは被ってないはずだけど。二人がいたら
駄目か?」
「そんなことはないぞ。フォレグはともかく、俺にとって回復は欠かせないからな。・・・回復だよな?」
「はい、私は回復系や補助系、妨害の魔法を使いますよ」
「私は攻撃担当だ。細かいことは苦手だからな」
「周りが見えないだけでしょ、もう...」
姉妹漫才は置いておいて、
「で、どうするんだ?Vit・Agi極振りなら大歓迎だぞ。壁と遊撃担当になってもらうことになるが...」
「俺たちゃ、そんくらいしかできないからな」
「そうだねー、僕も高速で動いて通りがかりに斬ることしかできないしねー」
「なら、パーティーに入ってくれるか?」
「もちろんだ。そのために来たんだしな」
「うん、僕もいいよ。バランスとか考えなくていいのは楽だしね」
「皆もいいか?」
「いいぞ、壁は欲しいしな」
「そうですね。壁があれば、安心して魔法を使えますからね」
「ん・・・壁があれば、ずっと敵を殴れる」
「あれ、僕いらない感じ?」
こいつら...。壁しかいらないのかよ。まったく、フォローする身にもなれ。
「そうだな...。毒や麻痺とか、状態異常が付与された武器で攻撃すればいいんじゃないか?」
「そんな武器、持ってないよ...。ドクグモの毒液がすごい必要なんだよー」
「まあそれは後で集めるとして...。まずはパーティーに入ってくれ。誘うから」
二人に勧誘メッセージを送ると、すぐに二人がパーティーに加入した。これで極振りパーティーの完成だ!
「これでパーティーは完成だな。これからよろしくな。二人には、昨日も言ったけど」
「ん・・・よろしく」
「よろしくな!」
「よろしくお願いしまう」
「よろしく頼む」
「よろしくねー」
さて、極振りだけで構成されたパーティー。どんな方向に向かっていくのかね。今から楽しみだ。
「それじゃあ、まずはレベルとスキルを見せてくれ。ステータスは分かってるからな」
「テル達も後で見せろよ。私がとってるのは『杖Lv19 火魔法Lv18 風魔法Lv18 土魔法Lv17 分割思考Lv15 MP運用Lv7 早口Lv18』だ。レベルは20だな」
「私も似たような感じですね。『杖Lv19 風魔法Lv18 水魔法Lv18 土魔法Lv17 分割思考Lv15 MP運用Lv7 早口Lv18』です」
「ほとんど同じだな...。MP運用ってのは?」
「えっと、消費MP減+MP回復速度上昇+MP最大量上昇の合成スキルです。合成するやつの、効果上昇でしかないんですけどね」
「まあ、効果上昇でも十分強力だろ。三つも合成してるんだから」
「そうなんですけどね...」
まあ、二人は昨日も聞いたしこんくらいでいいか。シルバとフォレグに、聞かせたかっただけだし。
「じゃあ、次はシルバ、頼む」
「おう。俺のレベルは18だ。スキルは『大盾Lv17 挑発Lv17 踏ん張りLv14 ステップLv16 武器防御Lv8 範囲拡大Lv11 ダメージ反射Lv13 消費MP減Lv17 状態異常耐性Lv9 』だな」
「僕もレベルは18だよ。スキルは『短剣Lv15 蹴りLv13 アクロバットLv8 索敵Lv16 隠形Lv16 エンチャントアジリティーLv11 毒攻撃Lv16 麻痺攻撃Lv15 』だよ。あんまり発動しないが、悩みの種だよ...」
こうして見ると、スキルってホント個性的だな。よく分からないやつが、いくつか混じってるけど...。
「ダメージ反射ってのと、エンチャントアジリティーってやつはどういう効果なんだ?」
「防御の総合値と攻撃の威力を計算して、防御の総合値が上回ってた場合、その何割かをダメージとして相手に反射させるんだ」
「悪い、簡単に言ってくれるか?」
「自分の防御力が相手の攻撃力より高ければ、その高かった分の何%かを相手に反射できるんだよ」
「ふーん...。要は、堅い岩を殴ったら剣が欠けるって感じかな」
「そんな感じだ。そのスキルのおかげで、多少は戦えるんだけどな...。俺は基本、攻撃を受けるだけだよ」
「どうしてまた、Vit極振りなんてしたんですか?ほとんど、何も出来ないですよ」
フルンが尋ねることはもっともだ。いくらなんでも、ピーキーすぎやしないか?
「まあ、俺はMだからな。敵に殴られまくるのが、気持ちよくてしょうがないんだ。あまり痛くないのが、ちょっと残念だけど」シュン...。
・・・なるほど、マゾさんなのね。しかも、痛いのもいけるのかよ。
「おう!言葉攻めもいけるぜ!」
「分かりました、分かりましたからあまり言わないでください。女子勢が引いてます」
「お、おう...。やっぱり理解者は少ねぇな...」
「俺は理解がありますよ。おいそこ、引くな。理解があるだけですからね!」
「・・・そうかそうか!いやー、良かった!これでパーティー抜けさせられたら、どうしようかと思ってたんだよ!」
「よかったねー、シルバ兄ちゃん」
兄弟だったのかよ!?多すぎやしないか?
「従兄弟だけど、よく遊んでもらったんだ。だから、兄ちゃんて呼んでるんだよ」
「えっと、フォレグって幾つ?」
「13歳の中一だよ」
はー...。案外中学生もいるんだな。
「んじゃ、エンチャントアジリティーって?」
「スピードを乗せて相手に攻撃した時、Agiの何%かを威力に上乗せするんだって」
「交通事故みたいな感じか」
「例えが悪いよ!?せめて、捨て身タックルって言って!」
「ダメージをくらうのか?」
「ダメージはないけど、イメージ的にはそんな感じ。交通事故って・・・僕が悪いみたいじゃん」
「悪い悪い、気をつけるよ」
「さて、パーティー人数が六人になり、出てくる敵も12体まで増えたんだけど...。正直、少ないよな?」
二人の加入も済んだので、俺たちが直面している問題について話しておくことにした。
「そんなに少なくないだろ?」
「いや、少ない。俺たちのパーティーには、バ火力が二人もいるんだぞ?12体なんて、あっという間に殲滅できる」
StrとIntの極振り。この二人がいれば、ボス戦以外では壁なんかいらないだろう。
「本当!?ダートさんもルージュさんも、そんなこと出来るの?」
「出来る・・・今までが、少な過ぎた」
「そうだよな。魔法は範囲攻撃が出来るから、なおさら少なく感じるよ」
「私はあんまり仕事がなかったですよ...」
そうなんだよな。このままじゃ、バ火力二人以外の仕事がなくなる。それを防ぐにはどうしたらいい?簡単だ。敵の数を増やせばいいんだ。
「そんなわけでこんなスキルを見つけた。出来れば全員に習得してもらいたい」
スキル選択画面を開いて、『強者の風格』というスキルを見せる。仰々しい名前だが、効果は単純。任意のステータス一つを1.3倍して、出てくる敵の数を2倍にする。ソロプレイヤー向けに作ったんだろうけど、俺たちはパーティーで使わせてもらう。
「敵の数が2倍?それを6人でやったら・・・64倍になるんですか!?」
「全員はとらない。3人がとったら、8倍になって96体だ。どうだ、やってみないか?」
俺はいけると思ってる。というか、極振りならこんくらい出来るだろ。
「面白そう・・・私はやりたい」
「俺もやるぞ!96体の敵を相手取るなんて、かなり厳しそうだしな!」
「やってみたいな。いつもは敵が少なすぎて、思いっきり魔法を撃てなかったんだよ」
バ火力と壁担当のシルバは乗り気だ。ここまでは予想通り、残りの二人を説得しなきゃ。
「いくらなんでも、大変じゃないですか?回復が間に合いませんよ」
「それは問題ない。シルバ以外は、一発でも攻撃をくらったら終わりだからな。回復するのはシルバだけだ」
「敵が多いと、走りながら斬るのも大変だよー」
「ドクグモもいっぱい出てくるぞ。毒液集めが、すごい楽になるだろうな」
「僕もやるやる!毒液集め!」
ふっ、チョロいな。あとはフルンだけだ。
「どうする、フルン。フルンが嫌なら、別の方法を考えるけど」
「・・・はあー...。私一人で、反対なんて出来ませんよ。いいです、やりましょう!私も全力で敵を妨害してみたかったですしね」
「決まりだな。そんじゃ、誰が取る?」
「私と姉さん、フォレグ君でいいと思います。この3人だけ、所持スキルが8つですから」
「そうか、ならスキルは3人に任せるな」
よし、早速エントの森に繰り出そう。まずはフォレグのために、毒液集めだ。
エントの森に到着した。道中、一回だけ敵と遭遇したのだが...。
「思った以上の迫力だった...」
「かなり良かったぞ!」
狼と会ってしまったのが悪かったのかもしれない。まさに群れといった感じだった。
「満足」
「あんなに魔法を撃ったのは、初めてだよ!スッキリしたー」
「妨害しまくるの、気持ちいいなぁ...」
「敵多すぎるよー。何回も攻撃が当たりそうになって、怖かったよ...」
俺も細かく狙いをつけず、がんばって乱れ撃ちまくった。それでも全部命中していたのは、Dex極振りの力だろう。
「そういえば、クロスボウのレベルが20になってたな。新しいアーツが出てるんだっけか」
「私も・・・新しいのが出た」
次モンスターと遭遇したら、試してみよう。どんなやつなのかな?
「毒液はどんだけ必要なんだ?」
「25個」
「それはまた...。かなり多いな」
「まあ、一度に96体も出るんだ。1〜2回で出てくるだろ」
「そうだな。シルバが攻撃を全部受け止めるから、二人は全力で攻撃してくれ。俺とフォレグは俺に引きつけられないやつの始末、フルンはとにかく妨害だ。いくぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
*これから下は、全部スキルのまとめです。見なくても全然かまいません。
・テル Lv20
クロスボウLv20 ステップLv19 蹴りLv18 暗殺者Lv12 精霊魔法Lv19 チャージLv19 消費MP減Lv21 魔力感知LV16 分割思考Lv14 バディーアニマル
・ダート Lv20
大剣Lv20 二刀流Lv14 ステップLv20 強撃Lv19 飛刃Lv18 狂戦士Lv10 武器防御Lv11 バディーアニマル
・ルージュLv18
杖Lv19 火魔法Lv18 風魔法Lv18 土魔法Lv17 分割思考Lv15 MP運用Lv7 早口Lv18 強者の風格Lv1
・フルンLv18
杖Lv19 風魔法Lv18 水魔法Lv18 土魔法Lv17 分割思考Lv15 MP運用Lv7 早口Lv18 強者の風格Lv1
・シルバLv17
大盾Lv17 挑発Lv17 踏ん張りLv14 ステップLv16 武器防御Lv8 範囲拡大Lv11 ダメージ反射Lv13 消費MP減Lv17 状態異常耐性Lv9
・フォレグLv16
短剣Lv15 蹴りLv13 アクロバットLv8 索敵Lv16 隠形Lv16 エンチャントアジリティーLv11毒攻撃Lv16 麻痺攻撃Lv15 強者の風格Lv1
スキル紹介
:早口 詠唱スピードが上がる
:挑発 敵の狙われるようになる
:踏ん張り ノックバックし辛くなる
:範囲拡大 効果の範囲を拡大させる。シルバの場合、盾で防御出来る範囲が広がっている。透明な膜みたいな感じ
:アクロバット ステップ+ジャンプ+姿勢制御の合成スキル。柔軟な身のこなしで、ステップやジャンプをすることが出来るようになる。フォレグは高速で動く際にも、このスキルでコントロールしている。