少年は二人、メンバーを見つける。
一話でメンバーが見つかっちゃいました...。
中央にいてもやることがないので、木材を天火さんに渡しに行く。どうやら今日も勧誘は来てないようだ。
「よう、テル。ちゃんと木は取ってきたか?」
「いっぱい取ってきましたよ!関係なさそうなやつも、しっかりとね!」
アイテムボックス内にある木材をピックアップしていく。それを見た天火さんは、
「・・・うん、こんだけありゃ十分だ。クロスボウを貸してくれ」
エイムシューターを実体化して、天火さんに渡す。ウィンドウが出現し、しばらくそれを操作した後、
「よし、これで強化は終了だ。確認してくれ」
天火さんからエイムシューターを受け取る。名前の最後に、+5がついていた。思ったより簡単なんだな。
「強化はな。製造は、もっと複雑な工程を挟むんだぞ」
「失敗することもあるんですか?」
「ああ、あるぞ。失敗したら、素材の全損と強化の逆、マイナス補正がかかる。−1とか2ってな。鍛冶のスキルレベルが低いと失敗し易い。後、武器や素材のランクも関係あるな」
俺には、とてもじゃないが無理そうだな。細かすぎる。
「しかし、またたくさん採ってきたな。どこらへんで採ったんだ?」
「えっと、エルフィから東に向かう道中です。ドワールのほうに行く道ですね」
「ああ、あの道か。北には行けたか?」
「いえ、主がいるとかで行きませんでした。レベル25からが推奨みたいですし」
「そこはβテストと同じだな。そのまま荒野に行ったのか?」
「はい。そういえば、βテストではどこまで行ったんですか?」
「ちょうど荒野までだったぞ。あそこで時間切れになっちまったんだよなー」
「へー、ボスが強かったりでもしたんですかね」
「さあ、俺は行ったことがないから分からん。調べてもないからな」
そりゃそうか。兄貴たちにでも聞いてみるかな。今までは情報なしでいけたけど、これからは厳しそうだ。
「エントの素材はまだ使えないんですか?」
「まだ無理だな。もうちょい強化しなきゃな」
「そうですか...。素材は?」
「こんどはモンスターの素材なんだけど、見たことがないやつばっかりだ。βじゃ行けなかったところの素材だろう」
「そうですか...。ダートの石剣は、強化できますか?」
「出来ると思うぞ。ダート、見せてくれ」
今度はダートが剣を実体化する。これ、天火さんは持てるんか?
「よっと。相変わらず重いな...」
「持てるのかよ!?」
「まあ、鍛冶を取ってるからな。Strにはそれなりに振ってる。Dexにも振ってるから、ダートには負けるがな」
そりゃそうだ。
「お、強化出来るぞ。ゴーレムの岩ってあるか?」
「ありますけど...。ゴーレム倒した時に出た素材は、鉱石とその岩だけでしたから」
「ん・・・結構ある」
「よし、あるだけ出してくれ。ほら、テルもだよ!」
「え、俺もですか!?まあ、使い道はないですからいいですけど」
今度はゴーレムの岩をありったけ出す。またもやウィンドウが出現し、それを操作する天火さん。
「ほら、出来たぞ」
ゴーレムの石剣が、ゴーレムの石剣+3になった!もしかして、これから強化するにはゴーレムの岩が必要なのか?面倒くせぇ...。
「その・・・次、強化に必要な素材は何なんですか?」
「えっと次は・・・またゴーレムの岩だな」
「そ、そうですか...。はあ...」
「・・・面倒」
「まあ、しょうがねえよ。ボスドロップの武器なんて、そんなもんだ」
「そんなもんですか...。それなら、俺は天火さんの武器でいいです」
「私はこれでいい・・・もう一本くらいほしいけど」
そうなんだよな...。足りないStrはどうにかなるけど、石剣並みの重さと威力がある武器がないもんか...。
「作れませんかね?」
「うーん・・・今の段階じゃ、まだ厳しいかな。もっと素材が集まって、鍛冶レベルが上がれば出来なくもないけど」
「そうですか...。しばらくは、一振りで我慢するしかないな」
「ん・・・もしかしたら、またボスで出るかも」
ボスドロップを狙うってことか...。難しそうだけど、出来なくもない案だな。
「とりあえず、荒野のボスを倒しに行くか。目指せ、初撃破!」
「武器が出たら見せてくれよ」
「ん・・・頑張る」
さて、目標も定まったことだし、もう一度荒野に行ってレベルでも上げるか。ボス部屋探しも兼ねてな。
「つーわけで、レッツゴー!」
「おー」
中央広場のゲートに行くと、ちょうど帰ってきたところなのか、クレイたちと会った。
「おー、クレイ。久しぶりだな」
「テル、お前今までどこ行ってたんだよ!全然見かけなかったぞ!」
「お、テルじゃないか。後ろのが、パーティーを組んだって子か?」
「こんにちは・・・ダートです。大剣を使ってます...」
兄貴たちの後ろから、二人の男性がやってくる。どっちもローブを着てるから、魔法と回復担当なんだろうな。
「この人たちは?」
「ああ。うちの残りのパーティーメンバーだ。こいつがタトスで、こっちがトネルだ」
「よろしくおねがいします」
「よろしくな!」
タトスさんは、なんと言うか地味な感じだ。没個性とでも言えばいいのかな。トネルさんは眼鏡をかけているので、まだキャラが立っている。初対面の人に、何言ってんだってとは言わないでくれ。
「テルたちは、これからどうするんだ?」
「エルフィの先の荒野に行って、レベルを上げに行ってきます」
「なら一緒に行かないか?俺たちも、そっちに行こうとしてたんだよ。メンバー数的にも、ちょうどいいし」
大人数での狩りか...。興味はあるけど、ダート次第だな。
「どうする?人数が増えれば、敵も多くなるけど...」
「・・・別行動は、アリ?」
「ん?どういうことだ?」
あー、なるほど。確かにそうすれば、実質いつも通りだな。
「えっと、パーティーは組むけど、俺とダートは別の場所で戦闘してもいいかってことだな」
「いや、意味は分かってるけど...。それじゃあ、パーティーの意味ないだろ」
「・・・うん、まあ俺たち二人でも、別に問題ないからな。敵は多くても四体だし。多分、もっと増えても大丈夫だと思う」
「そうなのか...。まあ、どういう風に戦ってるか、見せてくれるんならいいぞ」
「俺はそれでOKだ」
「そのくらいなら...」
「よし、そうと決まったら早く行こうぜ!」
クレイがゲートに突っ込み、タトスさん達は苦笑いをしながら後を追う。俺たちも行くかね。
「ふんふんふん!」
「よっと、はっと、ほいっとな!」
12体も出てきた骸骨達を、ダートが蹴散らしていく。俺も次々に矢を装填し、連続で撃ち続けていく。
「いやー、楽しいな!こんなに敵が出てくるなんて、パーティーも中々いいな!」
「ん・・・モンスターいっぱい、楽しい」
次々に出てくる敵を、ばったばったとなぎ倒す。そんな俺たちを見た兄貴達は、
「なんというか・・・無茶苦茶だな」
「あのダートって女の子、すごい勢いであんなデカい剣を振ってるぞ...。どうなってるんだ?」
と、まあ予想通りの反応だ。しっかし、モンスター数がパーティー人数×2となるのは止めてほしいもんだ。俺たちじゃ、4体までしか出ないじゃん。
「終った・・・本当に、楽しかった」
「そうだな、かなりスッキリした。ストレス解消になるなー、これ」
敵を殲滅を終了したので、兄貴達のほうに戻る。惚けているけど、大丈夫なのか?
「兄貴ー、終ったよー」
「・・・お、おう!そうか!すごいんだな、二人とも」
「ま、ふざけて極振ってるわけじゃあないしな。ボスだって、二人で倒せるんだし」
「その人も極振ってるのか!?」
「Strだよ。俺と違って、かなりちゃんとしてるけどね」
「Dex極振りなんて、気が狂ってるとしか思えないもんなー。しっかりやれてるようで、俺も安心したよ」
「だから戦闘が見たかったのか。それならそうと、言ってくれれば良かったのに」
「恥ずかしいだろ!じゃあ、俺たちは他所で戦闘してるから、二人も頑張れよ!ログアウトしたいときは、勝手にパーティーを抜けていいからな!」
「分かった、兄貴達も頑張ってな!」
そうして、俺と兄貴達は分かれた。さて、せっかくの期待を無駄にしないよう、精一杯モンスターを狩りますかね!
どんどん出てくる敵を、がんがん倒していく。サボテンも蠍も蜥蜴も、みんな基本的に10体以上で出てくる。敵が多いのは経験値的にも戦闘的にも嬉しいのだが、さすがにちょっと疲れてきた。
「ここらへんで、一旦止めておくか?時間もいい具合だし」
「・・・もうちょっと、やりたい。極振りが集まるのは、きっと遅い...」
「そうだろうな。じゃあ、後数回だけだぞ」
「ん・・・分かってる」
ちょうど良く骸骨たちが見つかったので、ダートを剣に乗せつつ撃っていく。かなりの戦闘をこなしているはずなのに、まったく勢いが衰えないダート。あいつのスタミナは無尽蔵なのか?
ダートが骸骨に斬り掛かろうとした時、どこからかいくつもの火球が飛んでくる。ちょ、横殴り!?誰だよ、マナーを守らない奴は!?
火球が連続で爆発し、骸骨達は一撃で屠られていく。あれって、火魔法スキルで一番最初に覚える、ファイアーボールだよな?何でそんな魔法で、骸骨を一発で倒せるんだ?
「おっし、全滅!」
「きゅ、急にステップしださないでよ、姉さん!一体どうしたの!?」
「いやー、何か敵がいっぱい集まっててなー。レベル上げにちょうどいいだろ?」
「敵がいっぱいって...。あれ、他の人が戦ってた敵だよ?勝手に倒しちゃ駄目じゃん!」
「あー、そうだったのか」
こっちに近寄ってくる二人組。タトスだんとトネルさんみたいにローブを着てるから、魔法攻撃と回復を使う人たちみたいだ。
「悪い悪い、ちょうどいい獲物がいたから、ついな?」
「本当にすいません!姉がモンスターを倒してしまって!」
「もういいよ、謝ってくれたしね。ダートもいいよな?」
「ん・・・敵は他にもいる」
「ありがとうございます!ほら、姉さんも!」
「本当に悪かった!この通り!」
頭を下げる姉。まあ、元からそんなに気にしてないから、そこまで謝られても逆に困る。
「しかし、すごい威力の魔法だったな。一体どうやったら、あんな威力が出るんだ?」
「それは教えられな「Intに極振ってるんですよー」こら、フルン!何で簡単にバラしてんだよ!」
「そう簡単に真似なんてできないんだから、勿体振る必要はないでしょ。まったく、お姉ちゃんは...」
姉妹漫才に興じている二人だったが、俺には全く内容が入ってこない。こいつ・・・極振りだって?しかも二人。ダートと一緒に引き止めに入る。
「ちょっとお話、よろしいか?」
「事情聴取・・・人の獲物を奪ったことについて」
「うえ!?ゆ、許してくれるんじゃなかったのか!?」
「それとこれとは、話が別だ。エルフィまで一緒に来てもらうぞ」
「もー!だから、いっつも周りを見てって言ってるのにー!姉さんの馬鹿ー!」
「早く行く・・・悪いようにはしない」
エルフィにある適当な喫茶店に入る。こういう話をするときは、喫茶店が一番だ。
「さっきは横殴りについて問いつめるとか言ったが、あれはここに来てもらうための方便だ」
「ってことは、怒ってるわけじゃないんだな?」
「悪いな、嘘をついて。どうしても話をしたかったんだ」
「えっと、テルさんでしたよね。事情聴取じゃないなら、一体どんな用なんですか?」
「単刀直入にいうぞ。俺たちとパーティーを組んでくれ」
二人は驚いたようで、お互いに顔を見合わせる。んー、反応としては悪くないな。即拒否よりは全然マシだ。
「えっと、さっきフルンから聞いたよな?私たちは、Intに極振ってるんだぞ?一発攻撃を受けたら、やられるくらい紙装甲だぞ」
「そこらへんは、心配しなくていい。俺たちも同じだからな」
「え、そうなのか!?テルは何なんだ?」
「俺はDex、ダートはStrだ。だから、バランスが悪いとか考えなくていいぞ」
「そうなんですか。うーん・・・姉さんはどう?」
「そうだな・・・メリットはあるんだろうな?」
「もちろん。敵の数が増えるし、二人は後衛だろ?魔法に集中出来るぞ。それに、素材集めも楽になるし、金の融通も利く。情報も共有出来たり、メリットは多いぞ。多少、自由が利かないけど、そこらへんは我慢してもらうしかないな」
真剣な顔で考えてる姉妹。まだ時間もはあるし、焦る必要はない。考える時間はいるだろうし、こっちはのんびりと待っていよう。
五分ほど待っただろうか、どうやら結論が出たようだ。思ったより早いな。
「フルンと話し合った、その提案を受けるよ。これからよろしくな!私はルージュで」
「私がフルンです。よろしくお願いしますね」
「ああ、これからよろしく。極振り同士、仲良くやっていこう」
「ん・・・入ってくれて良かった」
こうして、ルージュとフルンがパーティーに加入した。そして、ついさっきパーティーに加入したいと言うメールが、俺の元に届いた。VitとAgiの二人組らしい。集まる時は一気に集まるんだな。会うのが楽しみだ。