少年はパーティー勧誘を行う
一気にメンバーが増える予定です
ゲートでエルフィに向かい道を尋ねる。どこがどこにつながってるか、分からないからな。
そうして聞いたところによると、東はドワールともう一つの街に繋がっていて、西は相変わらず海岸に行けるようだ。北は森の深部に行けるらしいけど、どこにしようか...。
「もう一つの街ってのは、特産品とかあるんですか?」
「特産って訳じゃないが、あそこにゃ闘技場があったなー。腕に自慢がある奴らが戦うところで、勝てば賞金と名声がもらえんだ」
エルフィの入り口で見張りをしていた兵士さんは、過去を懐かしんでいるようだ。顎に手を当て、思い出しながら教えてくれた。
「行ったことあるんですか?」
「ああ、あそこで俺は兵士になろうと決めたんだよーって、それはどうでもいいいな。まあ、そんなわけで、数多くの猛者が集まってるから、色んな物も集まってるぞ」
その街は娯楽の中心であり、ゆえに人が集まる。人が集まれば物も集まり、そこから交流・交易が生まれて発展していく。・・・行ってみたいな。
「森の深部には、何がいるんですか?森を抜けたら、どっかにつながったりしてるんですか?」
「ああ、この森の主がいる。向こうから仕掛けてくることはないから、これといった問題にはなっていなかったんだが...」
「だが?」
「昔、馬鹿な奴がちょっかいかけてな。それ以来、港街に繋がる道を塞いじまったんだよ」
港街か...。そこに行けたら、船でも調達して海エリアにも行けそうだな。
「強いんですか、その主って」
「かなり強いな。レベル25くらいはないとキツいな」
推奨レベル25以上、ってか。まだ17だから、先に闘技場がある街にでも行っとくかな。
「森を迂回して港街には行けないんですかね?」
「行けないこともないが、かなり遠いな。闘技場のある街を通り過ぎて、またもう一つ街を抜ける必要があるぞ」
「それは遠いですね。レベルを上げて、ここから行ったほうがいいか...」
「そのほうがいいと思うぞ。第一、そこまで行ってたらレベルも足りるだろうしな」
「それもそうか。その闘技場街に向かう道には、何かいたりします?」
「・・・そういえば、最近けっこう強いモンスターが住み着いたって噂を聞いたな...。どんな奴かは分からないが、そいつのせいで被害が出てるみたいだ。その街に行くなら気をつけろよ」
「ありがとうございます、それじゃあ行ってきますね」
ドワールからの道と合流するまでは、森が続いている。そこで出来るだけ木を採っておこう。いざとなったら、エルフィにある店で買えばいい。
「よし、行くぞダート!」
「ん・・・闘技場が楽しみ」
敢えて整備された道を避け、獣道を歩いていく。こういうところのほうが、木を採取出来るポイントが多いのだ。その分襲ってくるモンスターも多いけど、雑魚は俺たちの敵でない。出てくるモンスターは、レベルが上がっただけでエントの森と同じだからな。
「これは香木、こっちは家具とかに使う木だな。お、これはいいな、よくしなる。ツタも取れそうだから持ってっとくか」
手当り次第に木を採っていく。よく燃える木とか、そういう関係ない物もだ。何かに使うかもしれないからな。
「ふう、こんなものかな。数が多すぎて、俺でも何を採ったのか把握しきれてねぇな...」
「しょうがない・・・そこは、天火さんに任せる」
「そうだな。じゃあ、さっさと森を抜けちまおう。整備されてる道に行くぞ」
「ん・・・」
しっかりとした道を歩いていくと、すぐに森を抜けられた。見た感じは普通の道だな。まっすぐ進んでいくとT字路に出た。えっと、右はドワールに行く道だから、左に進めばいいんだよな。
「ちゃんとした道になってるよな...。こんなところに、モンスターが居着くのか?」
「先はそうなってるか分からない・・・行って見て確認する」
「そうだな、とりあえず行ってみるか」
歩いていくのも面倒いんで、剣に乗って飛んでいく。森の中は木が邪魔で歩くしかなかったんだけど、こんだけ開けている道なら大丈夫だろう。人もいないし。
ヒューンと飛んでいく。まわりの景色が、段々変わっていった。森に隣接していた道だったのだが、木が疎らになっていき、大きな岩がゴロゴロしている土地に出た。大きな一枚岩が沢山あるのが見える。荒野って感じだな。
「荒野の真ん中を、道を突っ切ってるな。とりあえず、ここでレベル上げでもするか」
「そうする・・・早く、25になんなきゃ」
どんなモンスターがいるのかね。ちょっと楽しみだ。
道を外れて、ゴツゴツした地面を歩く。岩が多く隠れる場所には事欠かないので、魔力感知が役立ちそうだ。
「お、何かがこっちに来るぞ。多分敵、戦闘準備」
クロスボウを構えて、俺たちに向かってくる奴らに狙いをつける。モンスターの姿が見えてきた。サボテンだ。人の形のサボテンが、二体走ってくる。
頭が急所だったので、とりあえずいつも通り撃ってみる。矢は吸い込まれるように命中し、サボテンは後ろに倒れる。HPは残っているので、倒したわけではないのだろう。だけど、それで十分。
ダートが石剣を一振りすると、撃ってない方のサボテンが真っ二つに両断される。そのままの勢いで、立ち上がったサボテンの頭を潰す。一丁上がり、俺はあまり働いてないけどな。
「やっぱりダートのStrに敵う奴はいないな。俺は一発で倒せなくちゃったし...」
「しょうがない・・・強化してもらえばいい」
「もうちょっと探索してからな。どんな敵が出るのか、把握しておきたい」
「ん・・・了解」
今度遭遇したのは、大きな蠍だ。長い尻尾の先の大きな針からは、毒液らしきものが滴っている。急所はまたもや頭。けど、クロスボウじゃ弾かれるな。そう考えているうちに、ダートが飛刃で倒していた。
「悪い...」
「ぼーっとしない・・・油断大敵」
「了解了解」
その後、大蜥蜴や骸骨が出てきたりしたが、順調に撃破していきどんどん荒野を進んでいった。蜥蜴が岩にへばりついて接近してきたときは、けっこうビビった。音が全然しなくて、魔力感知がなかったら危なかったぞ。
そうそう、さっきようやく卵が孵ったのだ。急に懐が光り出したのには、蜥蜴以上に驚いた。慌てて卵を取り出すと、ちょうど殻が割れて雛が出てくるところであった。
「みぃぃぃー...」
「ぐぴぃぃぃーーー!!!」
ダートの卵からは、白地に青の線が入っている猫が。俺の卵からは、背中に小さな翼を生やした小蜥蜴が出てきた。猫の爪はカミソリのように鋭く、蜥蜴は鳴くたびに口から火を吐く。おお、けっこう可愛いな。
「・・・」
「みゃう?」
ダートが猫を抱き上げて、むぎゅーっと抱きしめる。滅茶苦茶嬉しそうだ。抱きしめながら撫でまくってる。
「ぐーぴーいー!」
「おっと、放っておいてごめんな。よしよし」
袖を引っぱる蜥蜴を抱き上げて、頭をゆっくり撫でる。けっこうちっちゃいな、片手で持てるぞ。どのくらいまで成長するんだろう...。あまり小さすぎるのは嫌だな。
「テル、名前決めないと、こういうのは早い方がいい」
「そ、そうだな。ダートはもう決めたのか?」
「決めた。ソラにする」
「俺は何にしようかな。うーんと・・・リザでいいかな。凝ったのつけてもしょうがないだろ」
「安直・・・その意見には同意するけど」
ステータスを確認しておく。リザは、StrとAgiが高めでDexが低めだった。素早く動いて敵を倒すって感じだな。スキルは噛みつき・飛行・ブレスの三つだった。こんな小さな翼で飛べるのか?さっきの火はブレスだったのか...。
「ソラのステータスとスキルはどんな感じだ?」
「Agiがけっこう高め、Vitは低い・・・StrとIntは同じくらい。スキルは爪・風魔法だけ・・・今後に期待」
どっちも見た目通りだな。戦力になるかどうか・・・今後に期待だな。
「そんじゃあ、こいつらのレベルも上げちゃうか。一緒に戦闘してれば、勝手に経験値が入るんだったな」
「肩にでも乗せとく・・・落ちないか心配」
今日はこいつらのレベリングで終っちゃいそうだな。まあ、俺たちにも経験値が入るからいいんだけど。
「お、三体来たぞ。十時の方向だ」
肩にバディーを乗せて、敵を探しにいく。最初に見つかったのは、骸骨たちだった。
こいつらはボーン◯◯◯といって、ゴブリンみたいに職業的なものがある。プリーストはいないけどな。回復する魔法は、こいつらにとっては毒なんだろう。
「「「カタカタカタ...」」」
こいつらはStrとVitは高いようだが、Agiは低い。それに骨は硬いものの、
「ふっ」
「カタk...」
急所の首を落とせば、一発で倒せる。距離が離れてれば、俺一人でも倒せるんだな。
シュッ「おっと」バキッ!。
どうやら弓を使うやつがいたらしく、飛んで来た矢を蹴りで落とす。次の矢が飛んでくる前に、弓使いの首を落としておく。
最後の一体は、ダートが倒したようだ。これで終わりだな。なんというか、こう・・・味気ないというか、あっけないというか...。
「テル・・・もっと敵が出てきて欲しい」
「その気持ちは分かるけど、どうしようもないじゃんか。パーティーメンバーが増えれば、同時に出てくるモンスターも増えるらしいけど...」
「じゃあ、増やす?」
「うーん・・・別に今は、俺たち二人でどうにかなってるからな...。もし敵を大量に出すスキルがあったら、考えないでもないな。そして、出来れば同じ極振りがいい」
「賛成・・・他の人はパーティーを組んでくれないと思う」
「そうなんだよなー。とりあえず、掲示板で募集出来るらしいからやってみるか。どの街にもあって内容を共有してるみたいだから、どこかにでも書き込んどくか」
「それは後で・・・今は敵を倒して、ソラを育てる」
こうやって話しているうちに、感知にモンスターが引っかかる。話はここまでだな。
「三時から敵が来てる、また三体だ。結構早いから・・・蜥蜴だな」
即座に構え、矢を射る。一体の目に突き刺さり、そいつは脱落する。
「ダート、一体は俺にくれ。たまには、近接戦の練習をしないと鈍っちまう」
「ん・・・わかった」
一体が俺に接近し、飛んで噛み付こうとしてくる。横に一歩移動して、がら空きの胴に蹴りを入れる。着地した蜥蜴がまた攻撃してくる前に、頭を蹴って蹴って蹴りまくる。基本的には目、たまに首とかも蹴るぞ。
こいつも数分で倒せた。っていうか、一体じゃ練習にならないな。これならもう一体もらっときゃよかった。
「どうして、蜥蜴は攻撃しないの?・・・やられっぱなし」
「そうなるように攻撃してるからな。むしろ、そうなってくれないと困る」
振りは割と大きいが、スピードはけっこう速い。いや、距離が短いだけか。
「今度敵が複数で来たら、二体は俺に通してくれ。これじゃあ、ならないからな」
「ん・・・わかった」
その後、また蜥蜴が来たので二体相手取ってみたが、何とか倒すことが出来た。岩を投げてきたときは、ひやっとしたな。ちゃんと練習しとかないと。
「テル・・・これから蹴りの練習は、一人でやること。・・・待ってる間、暇」
「あ...。悪いな、ダート」
二体を倒すのに十分くらいかかってしまった。その間、ずっとダートはソラをモフってた。一緒にいる女の子を暇させるなんて、男として失格だ。
「はあ...。じゃあ、俺は援護に徹するよ。ちょうどモンスターも来たしな」
「ん・・・」
それから数時間、荒野で敵を狩りまくった後、エルフィへ帰った。ソラとリザのレベルは12まで上がった。身体も大きくなり、リザは両手サイズまで成長した。翼も大きくなって、今は俺の周りをパタパタと飛び回っている。さらに前足が退化して、後ろ足がよく育っている。うん、ドラゴンっぽく
なってきたな。ソラも結構大きくなって、子猫サイズから幼猫サイズまで成長した。前足のかぎ爪も大きくなって、引っ掻かれたらすごい痛そう。
エルフィに着いたら中央に向かい、掲示板を見てみる。見た感じ何も書かれていない。どうなってるんだ?と思って、掲示板に触ってみると、
『これはCNW内掲示板です。マナーを守って書き込みましょう』
というメッセージと共に、いくつもの項目が現れる。街やセーフティーエリアでなら、どこでも使えるようだ。
「メニューに掲示板が追加されてる・・・触るのが条件?」
「だろうな。さっさと確認しときゃ良かった。とりあえず、このパーティー勧誘スレッドってやつを見てみるか」
適当なベンチに座り、勧誘スレを覗く。どうやら、自分の名前と相手に対する条件を入れればいいようだ。実にお手軽、今流行のスマートだな。
「名前は俺のでいいよな?条件は極振り以外に何かあるか?」
「男は二人まで・・・むさ苦しいのはやだ」
「それは俺も嫌だな。じゃあ、男二人女二人でいいか?」
「ん・・・それでいい」
さてと、じゃあどういう文章にしようかな・・・こんなものかな。
『テル:どれか一つのステータスに極振りをしている人、募集中。男性二人、女性二人』
これでパーティーに入りたい人が来たら、俺のとこにメールが来る。しばらくこうして持ってみるか。