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少年は意外な関係を知る


『GRA!』

「っん!」

「ほい!」

『GRAA!?』


ゴーレムがダートを踏むつけ、ダートはそれを剣で受け止め、俺はがら空きの胸に轟砲を撃ち込む。倒れそうなのを踏ん張って、俺を攻撃しようとするゴーレムだったが、膝をダートに斬られて否が応にもダートを相手することになる。いやー、勝ちパターンですね。油断はしないけどな。


もう何回も、このパターンで攻撃している。今の攻撃で、ゴーレムの二本目のHPバーが全損した。あと一本!

そこで突然、ゴーレムに変化が起こる。今までは殴ったり蹴ったりと、近距離攻撃しかしてこなかったのに、地面をつかみ取って、俺に向かって投げてきたのだ。


「うお!?いきなり攻撃が変わったな、HPが少なくなってきたからか?」

「そうみたい・・・気をつけて」


近接攻撃も攻撃が変わってるみたいだ。攻撃スピードが上がり、蹴りも混ざって予想しづらくなっている。隠形が効かなくなったらしく、俺に向かって岩が飛んでくるようになった。感知できるようになったか...。面倒だな。

胸の急所は、ゴーレムのコアみたいなものらしい。黄色い宝石みたいなのが、岩におおわれていたようだ。何回も攻撃したことで、その岩が剥がれたのだ。あれを潰そう。


飛んでくる岩を避けながら、胸のコアに狙いをつける。チャージして・・・撃て!

赤光の矢は胸に向かって飛んでいき、命中する前にゴーレムの拳にたたき落とされた。あいつ、こっちを見てるのか?確かに意識は、俺とダート両方に向いてるけど...。くそ、これじゃあ当たらない!ダートも決定打をうてないようだあし、戦況は硬直してしまった。ダートが一旦、俺のところに戻ってくる。ゴーレムは追撃してこない。様子見ってとこだろう。


「どうする、テル・・・このままじゃ、勝てない」

「消耗戦になったら、俺たちに勝ち目はないからな...。どうしようか」


二人そろって、考え込む。ふと、一つ良さげな案が浮かんだ。


「なあ、こんなのはどうだ?」

「どんなの?」

「えっと、まずは・・・」






「・・・って感じだ。出来そうか?」

「出来ると思う・・・けど、テルが危ない」

「大丈夫だって。エントのときも、ちゃんと躱してただろ?」

「・・・分かった、やってみよ」


ゴーレムの正面に、俺とダートが並んで立つ。そのまま俺はジャンプして、ダートが構えている剣の上に飛び乗る。


「せーっの!」

「ん!」


剣をカタパルトとして、俺をゴーレム目がけて打ち出す。ってか速!想像以上に速い!チャージしなきゃ!

これは予想外だったようで、殴られることなくゴーレムの胸の上に着地する俺。そのままコアにクロスボウを突き立て、轟砲を発射。衝撃で俺は、後ろへ吹っ飛ばされる。どうだ、零距離からの轟砲は!?


『GRAAAAAAAA!!!???』


矢は奥まで突き刺さり、コアは粉々になって落ちていった。あれ、こんなに効く予定じゃないんだけど...。せいぜい、コアに矢が刺さるくらいだと...。

コアを失ったゴーレムは、制御を失ったロボットの様に暴れ出した。ちょ、危ね!うわ!?


「テル!」


ダートもステップでやって来て、拳を迎撃する。両手で殴り合ってるのに、少し押されてる?このゴーレム、リミッターが外れでもしてるのか。


「HPはあと4割だ!俺も援護するから、一気に押し切るぞ!」

「でも、テルは...」

「いいからやるぞ!」

「・・・分かった」


MPポーションを身体に叩き付けて、回復させる。ポーション系は、身体の一部に触れれば効果を発揮するから便利だ。ダートも、HPとMPの補給をしている。

ダートはゴーレムに斬り掛かり、俺はチャージをして狙いを定める。ゴーレムは右手でダートを殴ろうとするが、俺に肘の急所を轟砲で撃たれて大きな隙を作ってしまった。


「ナイスアシスト・・・これで、終わり」


袈裟、逆袈裟から回転しながら二発当て、下から縦斬りで宙に浮く。そのままサークルエッジを使い、合計六連撃をゴーレムに叩き込むダート。着地すると、ステップで後ろに下がる。ゴーレムのHPは・・・今ので0になっている。


『GRAAA...』


ガラガラと、登場とは逆に崩れていくゴーレム。完全な土塊となった所で、


『ストーンゴーレムが撃破されました!報酬がパーティーメンバーに入ります!次の街へのルートが開放されます!』


と。エントの時と同じウィンドウが出て来た。素材とまたもや10000エルを入手する。他には『部位破壊報酬 ゴーレムのコア』という物がもらえた。ダートは部位破壊出来たのか?


「追加報酬はあったか?」

「あった・・・初撃破報酬だって」

「おお、よかったじゃんか。何だったんだ?」

「ゴーレムの石剣・・・かなり重そう」

「ダートにピッタリじゃんか。良かったな、後で装備して見せてくれよ」

「ん・・・分かった」






ボス部屋を出ると、前に洞窟がある道に出た。あそこに行けばいいのかな?


「そんじゃ、行くだけ行ってみようか。装備は?」

「問題ない・・・けど、ポーションの残量が心許ない」

「あー、それは俺もだ。MPポーションは、もう使い切っちゃったからなー...」

「雑魚なら問題ない・・・けど、早く行くに越したこともない」

「そうだな、急いで行こうか」



洞窟の中は思った以上に明るく、道も広かった。ちゃんと整備されていて、いつも使われているのが見て取れる。

だが、ところどころ分かれている道は別で、暗い上にモンスターも多い。入る時は、気をつけないとな。


しばらく歩いていくと、大きな穴が見えてきた。大きな空間が広がっており、そこには一つの街があった。


「・・・洞窟の中に街か。ファンタジーだな」

「ドワーフが住んでそう・・・エルフィといい、そういうコンセプト?」

「ありえるな。まあ今はどうでもいいな。ゲートを起動させとこう」


坂道を下って、街の中に入る。どの家も土や石で出来ており、中には壁を削って出来た家もあった。すごいな、ホント。


街の中央には、大きな石像が置いてあった。鎧を着た男性が、ドラゴンを剣で突き刺しているものだ。そばにゲートがあったので、起動しておく。この街の名前は、ドワールというらしい。やっぱりそういうコンセプトなのか。


「俺は街を見てくけど、ダートは「一緒に行く」さいですか」


さて、ここにはどんなもんが売ってるのかな?予想はつくけど、実際に見てみないと分からないからな。一通り、見て回るか。






「お、テルにダート。東の山はどうだった、ボスは倒せたか?」

「はい、倒してきましたよ。次の街のゲートも開いてきました」

「・・・マジか?」

「マジです」

「マジか...。あのStrとVitが馬鹿みたいに高いストーンゴーレムを、二人で倒したのか...」


あのゴーレムって、けっこう強かったのか。ステータスは高かったんだろうけど、攻撃は単純だったから割とやり易い相手だと思ったんだけど...。


「ダートはどうだった?強かったか?」

「うん、強かった・・・でも、いいサンドバックになりそう」


サンドバックって...。まあ、ダートに取って骨のある敵は、そんなにいないからな。ゴーレムと殴り合うのは、楽しかったんだろう。


「素材はどんなものが出たんだ?やっぱり岩か?」

「そうですね、ゴーレムの岩ばっかりです。あと、鉱石系かな」


多分、ゴーレムの中に入ってたんだろ。鉄とか鋼、銀もある。


「鉱石か、何があるんだ?」

「鉄、鋼、銀ですかね。要りますか?」

「ああ、まだ銀はあまり出回ってないから、ぜひとも欲しいな。えっと、こんくらいでいいか?」


天火さんが金額を提示してくる。相場は知らんし、天火さんが嘘をつく必要ない。その金額でいいな。


「はい、それでいいですよ」

「うし、交渉成立だ。ほら、送ってくれ」


鉱石とエルを交換する。矢とポーションを買っても、余裕でおつりが来るぞ。やったね!


「そういえば、ゴーレムはお前たちが初撃破だったな。報酬は何だったんだ?」

「ゴーレムの石剣・・・今、装備する」


剣を二つともしまって、石剣を装備するダート。背中に大きな剣が出てきたのだが、


「でっけえなぁ...。2m以上はあるな。持てるのか?」

「・・・両手なら、なんとか」

「いや、両手でもすごいって。それ、βじゃ誰も持てなかったんだ」


巨大な石剣を構えるダート。やっぱりStr極振りは派手だな。


「テルは何かないのか?どうせ今回も、弱点をねちっこく撃ち続けてたんだろ」

「敵の弱い所を狙うのは、兵法の基本ですよ。俺は、ゴーレムのコアってやつがでました」

「ゴーレムのコアか...。ゴーレムを作る時に使いそうだな。どうだ、作ってみるか?」

「え、出来るんですか?」

「ああ、出来るぞ。武器を作る時に、そのコアを混ぜればいいだけだしな」


そうなのか、いやでも。


「でも、今作るより後で作った方が、武器の性能はいいですよね?スキルレベルとか、素材とか」

「ああ。だから、コアだけ取り外せるようにする。良い武器があったら、それに変えればいい」

「そんなことできるんですか...。それなら問題ないです。あ、ならこれも使ってください」


エルダーエントの光眼を、天火さんに渡す。


「取っておくんじゃないのか?」

「一つだけで使うより、二つあわせて使う方がいいかなって。せっかくの機会ですし」

「そうか、ならありがたく使わせてもらおうか。そんな武器にする?」

「えっと、ゴーレムってのは勝手に動いて戦ってくれるんですよね?」

「そうだぞ、お前のステータスは関係ないな」

「なら、大剣にしてください。ダートのやつぐらい大きな」

「分かった。とりあえず、また明日来てくれ。そのころになら、出来てると思う」

「了解です。楽しみにしてますね」






「噂の義兄妹を見に来たぞー!」

「何言ってんのよ、恥ずかしい」


急に家に行きたいといわれて、何事かと思っていたら...。こんなことなら、ログアウトしなきゃ良かった。


「そんなことのために、わざわざCNWをプレイしてた二人を呼び戻すなんて...。はあ...」

「いいだろ、どうせ会うことになるんだから。それに、CNWの話も出来るからな!」

「私たちとすればいいじゃない。確かに気にはなるけど、わざわざ待っててもらうほどじゃないわ」

「もう待ってるからいいよ。早く入ってくれ」


リビングに二人を連れて行く。入ってきた二人を見た兄貴と仁美は、


「こんにちはー、ってクライドさん!?」

「・・・アルン?」

「ん、クレイか?」

「セイレンさん?どうしてここに?」

「あれ、知り合いだった?」

「「「「知り合いも何も、CNWじゃ同じパーティーだし」」」」


ああ、そうだったのか。世界は狭いな、どんな偶然だよ。


「いやー、まさかクライドさんが孝昭の兄だったとは...」

「アルンがアキの妹だったとはね...。想像もしてなかったわ」

「俺も、クレイが来るとは思ってなかったな。テルが言ってた知り合いは、クレイのことだったのか」

「そうみたいだね。すごい偶然」


ふう、つまんなくないかなーっと心配してたが、どうやら必要ないみたいだな。よかったよかった。






「そういえば、孝昭はどこで何をしてるんだ?」


皆でCNWのことを話していると、礼二が急にそんなことを言い出した。そういえば、礼二と義子には何も話してなかったな。説明しとくか。


「じゃあ、武器が出来上がった後から説明するな」

「おう」

「まずは、蹴りの道場に行って新しいアーツを習得しました」

「道場なんてあるのか。新しいアーツってのは、どういったもんだ?」

「今度見せるよ。その後は北の森の攻略を開始して、パーティーを組んでくれる人が見つかったんだ」

「え、パーティー組んでくれる人が見つかったの!?Dex極振りで、よく見つかったわね...」

「まあ、世の中には色んな人がいるのさ。そのまま、北の森を進んでってボスに挑んだよ」


ボスという単語に、全員が反応する。やはり、ドロップとかが気になるのだろう。


「北のボスっていうと、エルダーエントか!?どうだった、強かったか!?」

「強かったよ。やっぱり、そこらへんの雑魚とは違うねぇ」

「それで、ボスは倒せたんですか?」

「ああ、倒せたぞ。次の街にも行ったし」

「へー、その後は?」

「一通り街を見終わったら、クレセントに戻った。武器の修復とアイテム補給にな。それが済んだら、今度は東の山に向かった」

「東の?鉱石でも取りにいったのか?」

「いや、またボスを倒しに行った」


今度は全員が固まる。やっぱ、あのゴーレムは強敵なんだな...。


「え、は、ちょま!?あのゴーレムとやったのか!?」

「あ、兄貴も挑んだんだ。ってことは、礼二も?」

「ああ。あいつはやべえ。全然攻撃が通じなくて、ほとんどアーツで攻めてたようなもんだからな。負けたけど」

「そうなのか。俺は勝ったけどな」ドヤァ

「え、マジでか!よく倒せたな...」

「まだ見たことがないのだけど、そんなに強いの?」

「らしいですよ。魔法を使える人がいなければ、絶対に勝てないって言われてますね。二〜三人でゴーレムを止めて、残りの人が魔法を撃ち続けるって感じらしいです」

「二人で倒せましたけどねぇ...。魔法なんて使ってませんし」


さらに皆が固まる。今の話を聞いてた限り、俺たちはけっこう常識はずれなことを仕出かしたみたいだ。兄貴たちならいいけど、他の人にバレたら大変だな...。


「え、二人?パーティっていっても、コンビなの?」

「そうだけど...。あれ、兄貴たちには言ってなかったけ?」

「いや、聞いたけど...。まさか、ゴーレムを倒すなんてなぁ...」

「そ、そうですよ!二人でゴーレムを倒すって・・・どういうことですか!?」

「どういうことって...。頑張って倒したんだけどなー。今度紹介するから、この話はその時までお預けってことで」

「俺はそれでいいけど...。仁美はどうだ?」

「私もそれでいいよ。その人にも会ってみたいし」

「聞こうと思えば、いつでも聞けるからな。俺は孝昭が好きなときでいいぞ」

「アキのことなんだから、アキの好きにしなさい」

「そうするよ。あ、スキルのことで相談したいことがあるんだけど...」


こうして、意外な所にあった彼らの関係を知ることが出来た。ダートにも話しとかないとな...。


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