04.食堂にて(2)
満腹になった私は、フォークを置きました。
「なんだ、もう良いのか?」
「はい、お腹いっぱいです」
男は満足そうに、目を細めました。
それから、男は、店員さんに食後のお茶を頼みました。
満腹時特有の、マッタリした時間が流れます。
「そう言えば、お前に名前をつけて無かったな」
いやいや、名前有りますから。
「つけていただかなくても、名前は有ります」
「そうか…何て言うんだ?」
「リズ・トリッシュです。」
「リズ…か。短くて呼びやすい、良い名前だ」
実は、本質を表す名前は別にあって、それはとても長くて…いや、今は良いでしょう。
ようやく、人間らしい会話になってきています。
誉め方が微妙な所には、目を瞑りましょう。
「貴方の名前は?」
「ああ、俺はラグル。ラグル・グローリア。リズより少し長いな。覚えられるか?」
ヒトを何だと思ってるのですかね、この人は。
「グローリアさん…」
試しに呼び掛けると、男は不満そうな顔をしました。
「ラグルだ。ラグルと呼べ、リズ。」
初対面で呼び捨てですか…と思いつつも、彼が私に敬称つきで呼び掛ける様など想像すら出来ません。
「えーと、ラグルさん」
小首をかしげながら、呼び掛けました。
何故か、ラグルさんは手で顔を覆い、私から少し瞳を反らします。
どうしたのでしょうか?
不思議そうに見ていると、しばらくしてラグルさんは、手を顔からとり、代わりにお茶へと手を伸ばします。
「あ…。じゃあ、その辺を散歩でもするか」
何が、『じゃあ』なのかよくわかりませんが、どうやらラグルさんは、まだ私を解放してくれるつもりは無さそうです。




