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ケモノと私  作者: 鵺琉
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03.食堂にて

「ほら、食べろ」


テーブルの上には、所狭しと皿が並んでいます。


昼時を少し過ぎた時間の様で、食堂はそれほど混んではいませんでした。


家を出る前に、軽く食べただけだったので、確かに私はお腹が空いていました。


だけど。


「名前も知らない人に食べ物を出されて、貴方は素直に食べれるのですか?」


私は、男を説得する方法を少し変えてみる事にしました。


隙を見て逃げ出そうとは思いましたが、如何せん男には隙がなく、ここまでズルズルと来てしまいました。


何だかんだ言いながら、一応助けられた訳ですし、やはり出来れば、平和的にお別れしたいのです。


「食べれるモノは有り難く頂くぞ。それに…」続く言葉に、私は絶句しました。


「知らない奴が、俺に食べ物をくれるのは、しょっちゅうだしな。勿体無いから、毒以外は、すべて食べる」


どうやら、作戦は失敗したようです。


敵は、私とは置かれてきた環境が、全く違うようです。


それもそうか…と納得の麗しのお顔。


サラサラの長めの短髪は、黒みがかった銀で無駄にキューテクル溢れてますし。


美形に有りがちな、中性的な容姿は、鋭い眼差しが緩和してます。


瞳の色は、珍しい紫色で、それが彼を神秘的に魅せます。


唇は紅く、たまに覗く八重歯は真珠のようです。



手足はスラリと長く、かつ軟弱ではないしなやかさを誇り…あ、今気付きましたが、彼は剣士の様ですね。


頑丈そうな手に、剣ダコと剣士の証である腕輪を見つけました。


「はぁ…」


私は様々な意味で、ため息をつきます。


確かに、彼の容姿なら、マワリが放っておくハズが有りません。


対する私はというと。


瞳の色こそ、珍しい緑色ではありますが。


肩につく程度に切り揃えられた髪は、有りがちな紅茶色。


パッと見は、少年の様な、メリハリの無い体つき。


指先は、ほぼ毎日薬草をいじっているせいで、斑に染まってしまっています。


薬師の証の腕輪にも、斑のシミが跳ねており、くすんだ腕輪はまるで私そのもので…。


あ…凹んできました…。


「ほら、あーん」


唐突に、口元に野菜の肉巻きの刺さったフォークが突き付けられました。


私が凹んでる間に焦れたのか、男は私に食べ物を食べさせようと、行動を始めたようです。


「お前、沢山食べた方が良いぞ」


私は再びため息をつき、自分の手元のフォークを持ちました。


「解りました、食べます。でも、あーんはしません」


宣言した私に、男はガッカリしたように手を下げ呟きました。


「俺が食べさせてやりたかったのに…」


私はなんだか、胃が痛くなってきました。

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