11.木漏れ日の部屋にて
ぼんやりと、モヤのかかった意識に、暖かな陽射しが起床を促します。
それでも、私はまだ、夢の残りを手放せずに居ました。
柔らかい声が、密やかに私の耳へと届きました。
「薬師さん、なかなか目を覚まさないね」
「そうね。それにしても、あんな所で倒れていたのは…薬草を採るため…だったとしても…」
「うん、この辺では見かけないヒト…だよね。荷物も、あのずっと握ってる石だけ…だよね」
「でも、良かったと言えば良かったわよ。」
「だよね。今、薬師さんが来たのは、とても…」
カチャ…。
話を遮るように鳴ったのは、ドアの音でした。
「ほらほら、貴女達、こんな所でお喋りしてないで、教室に戻りなさい。」
最初に交わされていた会話の声より、年配の女性の声。
「「はーい」」
バタバタと去って行く、二人分の足音。
「全く、もう…」
しょうがないな…と言いたげな声です。
その声が、今は亡き師匠の様で、私はホワリと胸が暖かくなる気持ちがしました。
少しヒンヤリとした手が、私の瞼にかかっていた髪を払い、離れていきます。
「…う…ん?」
その感触にひかれる様に、私はようやく、目を開いたのでした。
目覚めるリズちゃん。
ラグルさんの登場は、しばらく有りません。