名前(ラグルside)
『食堂にて(2)』のラグルsideです。
書けば書くほど、ラグルさんが根暗の変態さんになっていきます。まさに但しイケメンに限る状態…
早くリズちゃんsideに戻りたい…
暫く無言での食事が続いた後、フォークを置いたソレに声をかける。
俺から見ると、少なすぎるが、食べる前よりソレの雰囲気がほんの少しやわらかくなっていて、俺は満足して目を細めた。
ソレは、食べる速度も俺より遅かったので、ほぼ同じ位に、俺も倍の量を食べ終わった。
店員に頼んだ茶が届く頃、ふと気付く。
ソレが、俺の探していたモノであった狂喜で浮かれ、特に今まで気にしていなかったのだが。
名前が呼べたら、もっと俺のモノだという感じになるだろう。
むしろ、どうして今まで気付かなかったのか。
結局、ソレ…リズに、名前を付ける事は出来なかった。
残念だが、すでに有るものは仕方無い。俺も名を名乗ると、後ろの名前で呼ばれた。
なんだか、面白くない。
「ラグルだ。ラグルと呼べ、リズ」
「えーと、ラグルさん」
小首を傾げながら、呼び掛けられた。
…ドクン。
俺の心臓が大きく跳ね、鼻血が出そうな気分になり、思わず顔を手で覆う。
たまらない気分になり、思わずリズから目を反らした。
なんだよ、これ。
何でこうなるんだ?
ただ、名前を呼ばれただけ…なのに。
叫び出したくなる。
泣きたくなる。
大声で、笑いたくなる。
暖かいモノが、胸に溢れる。
暴走しそうな感情で、指先まで、甘く痺れた。
俺は動揺を隠すため、リズを散歩に誘った。
我ながら誘い方が唐突だったが、そこまで気を配ることは出来なかった。