短編集① 透明マント
「よし。ついに完成したぞ。わしの人生の半分を費やした大発明、透明マントじゃ」
天才発明家•新発田博士は、自身の研究室で一人大声をあげ透明マントをつくりあげた喜びに浸っていた。
「しかし材料集めが大変じゃった。だが東奔西走、どんな珍しい材料も全て揃えたおかげで完全に透明になるはずじゃ。足りないものなど無いはず。早速明日試してみよう」
博士は、何をしてやろうかと考えるだけでも楽しくなって、フフフと笑いがこぼれた。
翌日、博士は意気揚々と自らの大発明をかぶり家を出た。
「フフフ。わしの姿は誰にも見えないはずじゃ。まず何をするかのう・・・」などと考えているうちに街についた。だが、街の反応は博士が思っていたものとは違った。
「キャー!!」女性の悲鳴。
「何だあれは!」サラリーマンも博士を指差し叫んだ。いや、彼らだけではない。街の全員、電線に止まるカラスでさえも、見えないはずの博士に視線をそそいでいた。
(どういうことじゃ!?)
マントの中、博士は滝のような汗をかいていた。
(み、見えておるのか!?何故じゃ?材料を間違ったか?いやそれは無い。不足もあり得ない・・・)
博士がその天才的な頭脳をフル回転させて原因を求めていた時、一人の女の子が言った。
「足首が、歩いてる!!」
そう。足りない材料などなく、博士の発明はほぼ完璧であった。しかし唯一足りなかったのは、マントの長さだったのだ。