表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルステナの箱庭~仮想世界で自由に~  作者: 神楽 弓楽
一章 始まりの4日間
9/138

8話 「リスを餌付け」


 門の近くで満足のいくまで収集したトウリは、今度は森の中に入ることにした。



「森の中にはどんなアイテムあるかな? 楽しみだな」


 森の中に入ると視界が先程よりも暗くなった。


「……森の木々が光を妨げてんのか」


 上を見上げると、青く生い茂った木々が形成した濃い緑の天幕が空から降り注ぐ陽射しを遮っているのがトウリの目に映った。

 その光景にトウリは驚いた。


「すげぇ森だな、なんか良い素材が手に入りそうだ。……おっ? 木の実発見! 」


 トウリが地面へと視線を落とすと、ちょうど足元に木の実が落ちていた。

 早速アイテムボックスに入れて、アイテム欄で確認してみた。


・木の実

調理すれば食べれそうな木の実

畑に植えることが可能

何の実かは芽が出るまで分からない


「へぇー木の実も調理できるんだ。今度作ってみるかな? つか畑で育てれるのか? このゲーム、畑まであるのか」


 説明欄を読んだトウリの頭の中にはいくつか疑問が湧いたが、取りあえず今は新アイテムの入手を喜んで、この調子でどんどん視界に表示される赤く点滅するアイテムをアイテムボックスに入れていくことにした



――ガサガサ



「ん? 」


「きゅう? 」


 トウリが地面に落ちたアイテムの採集に夢中になっていると気づけば近くの草むらから茶色いリスが出てきていた。

 こちらを見て首を傾げる仕草が愛嬌があってとても可愛らしいリスだった。


「栗鼠か。何か愛くるしいな。ちょっと触っていいか? 」


 そう言ってトウリがリスに話しかけながら、普通より大きめのリスのフワフワとした体を触ろうとした。


「きゅ! 」


 しかし、触ろうとするとその手を尻尾で振り払われた。もう一度触ろうとすると、また振り払われた。そんなやり取りを何度も繰り返しているとトウリは、何としてでも触りたくなった。


「うーん……どうすりゃ触らせてくれるんだ? 」


 悩むトウリの傍で、リスは逃げる素振りを見せずに地面の上で何かを探すような行動をとっていた。


「あ、もしかして……」


 トウリはアイテム欄から木の実を取り出した。

 掌に現れた木の実にリスが耳と鼻をぴくぴくとさせながら振り向いた。


「ほら、食うか? 」


「きゅ」


 トウリが木の実を乗せた掌をリスにそっと差し出すと、すぐさま掌から木の実を奪い取って齧り出した。その隙にトウリはリスの体を触ろうとしたが、リスに気付かれてまたもや尻尾で振り払われた。


「きゅ! 」


「ちぇ……少しぐらい触らせろよ」


 そんなことを不満そうに呟いているとリスが食べていた木の実がなくなる。


「ほら、もう一個やるよ」


 再びアイテム欄から出した木の実を渡す。


「きゅ」


 それをリスが取る。


 そんなやり取りがトウリのアイテム欄から木の実が消えるまでしばらく繰り返された。




「お前どんだけ食べるんだよ……」


「きゅ! 」


 最後の方は一度に木の実を2、3個出して渡していたが、リスはそれでも一気に口に含んで豪快に食べていた。そこそこ大きめの木の実を20個は確実に食べていた。


 それなのに未だにトウリはリスの体を一度も触らせて貰っていなかった。



 生殺しである。



「いつ触らせてくれんだよ」


「きゅ! 」


 口に含んでいた木の実を食べ終えたリスが早く出せとばかりに鳴いてトウリを見つめてきた。


「いや、もうないからな」


 その図々しさに苦笑しながらトウリは、手をひらひらとさせて意思表示する。


「きゅ? 」


 トウリの言ってることがわからないのかリスは首を傾げた。



「きゅ! 」


 しばらく首を傾げていたリスが何かを理解したかのように一声鳴くと、なんと自らトウリの右腕に飛びついてきた。



「は? え、触らせてくれるのか? 」


「きゅ! 」


 YESとばかりにリスは鳴いた。



「よっしゃ! それじゃ遠慮無く。……うおおぉぉ! すげぇフワフワだ! 触り心地抜群だな! 」


 リスの背中は、サラサラフワフワで触り心地がとてもよかった。もっと固くモコモコしているのかと思えば予想以上の柔らかさだった。それに触れる掌にはしっかりとした温かさがあったことにトウリは驚いた。最新のVR技術を駆使したSMOは既にここまで忠実に再現していた。

 

 それが如何にすごいことであり、既存の常識を打ち崩すものなのかトウリには漠然としか伝わってなく、VRすげぇなとしか思っていなかった。



 しばらくトウリがリスの触り心地を堪能していると、空中に突然文章が書かれた画面が現れた。




『モンスター「ククトリス」との友好値が一定値を超えました。テイムしますか?Y/N 』



「は? テイム? 何だそれ? 」


聞いたことのない単語にトウリは首を傾げた。


「うーん……。友好値が関係しているってことは仲間になりたいってこと……なのか? お前、そうなのか……? 」


 腕にいるリスにトウリは直接聞いてみた。


「きゅ! きゅ! 」


 リスはYESとばかりに鳴いた。


「そうか……じゃあ、よろしくな! 」


 そんなリスの頭を優しく撫でながらトウリは、YESを押した。



『「ククトリス」のテイムに成功しました!名前を付けてください』



「名前……リスでいいかな? 」


「ぎゅ! 」


――ガブッ!


 却下とばかりにリスに撫でていた指に噛みつかれた。


「いた! ちょっ、噛むなって! 悪かったってごめんごめん」


 トウリが謝るとリスは、指を齧るのをやめてくれた。

 トウリのHPは噛まれたことで僅かに減っていた。


「じゃあ栗鼠だからクリスってどうだ? 」


 しばらくリスが首を傾げて


「きゅ! 」


 一声鳴いた。気に入ったようだ。


「それじゃあKURISUっと。じゃ改めてよろしくなクリス! 」


「きゅ♪ 」


 こうしてトウリは新たにテイムモンスター『クリス』を手に入れた。

 トウリは、クリスを肩に乗せると機嫌良さげに森の奥へと入っていった。





 この時、トウリのメニュー欄には新たに「テイムモンスター」の項目が追加された。




ククトリスというモンスターは、ノンアクティブモンスターです。

ノンアクティブモンスターをテイムする方法は主に


・モンスターによって変わるが餌を与えて友好値を上げる。一定まで上がると触らせてくれます。

逆に無理やり触ると友好値が大幅に下がり稀に攻撃してくるときもある


・特殊条件を満たした状態でテイムする。※【調教】が必須

・テイムするモンスターの上位種をすでにテイムしている場合※高確率になるだけで必ずテイムできるわけではない


そして一定値まで達するとウィンドが表示されテイムが可能になるがYESを押しても失敗することもある。



アクティブモンスターの場合

・一撃でレッドゾーンまで持っていくと稀に服従する

・一定時間で既定の数のモンスターを討伐すると、そのモンスターの成功率が大幅に上がる。イエローゾーンでも稀に服従するようになる。

・特殊条件を満たした状態で勝てば、可能になることがある※【調教】必須

・テイムするモンスターの上位種をすでにテイムしている場合、一撃でイエローゾーンまで持っていけば服従することがある。


確率で言えば、ノンアクティブの方が高めです。【調教】を持ってない場合アクティブモンスターをテイムできる可能性は限りなく低い


なおこの情報は、プレイヤーはまだ知らないため【調教】スキルは不遇です。


【調教】

テイム成功率に補正

テイムモンスターの精密な指示が可能

テイムモンスターの能力値に微補正


そして、友好値はテイムした後も上下します。

一定まで友好値が下がるとテイムモンスターが命令無視をするようになったり、攻撃して来たり、最悪仲間ではなくなります。※服従したモンスターは起こらないが、命令されたことしかしなくなります。


14/8/09 


17/03/29

改稿しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ