7話 「門の近くでゴミ採集」
――『始まりの町』
『始まりの町』中央の噴水広場
そこは、この街にログインしたプレイヤーが出てくる場所である。
噴水から水に紛れて現れる光の球が弾ければ、そこにログインしたプレイヤーが現れる仕組みだった。
噴水から吐き出される光の球が、ログインしたプレイヤー1人1人であり、光の球は個人によって色彩が異なりそれらが宙を漂う噴水はとても綺麗である。
それは夜になるととても幻想的な光景で、SMOのHPのPVに使われていたりした。ただ、SMOには夜がまだ実装されていないので、実際に見ることができないのが残念だった。
とはいえ、それはHPをまだ見てないトウリが知らないことだった。
そんな噴水広場にログインしたばかりのトウリの姿があった。
「おっ。でたでた。……SMOは昼間なんだ」
青く輝く光球が弾けると飛び散った青く輝く粒子が人の姿を形作り、そこからトウリが現れた。
「えーっと、残りのスキルは何から確かめてようかな? 」
トウリが確認してないスキルは【泳ぎ】と【発見】の2つだった。
悩んでいると、ふと『スクール水着』という単語がトウリの頭を過ぎった。
「………うん。【泳ぎ】は最後でいいか。泳ぐ場所もわからないし」
トウリは、そう自分を納得させ【発見】スキルから確認することにした。決してスクール水着を着たくないなぁと思ったからではない。
「って言っても【発見】に関しては、どうやればいいのかわかんねーんだよなー」
その辺で落ちてるアイテムも簡単に見つけれるかな? と思い安易に取ったスキルだったが、そもそもどうやってアイテムを発見をしてくれるのかトウリには分からなかった。
ゴブリン戦やウサギ狩りの際に使った丸い石は、後で探して見たのだが探すのが下手だったのか結局見つけることが出来なかった。
「うーん。見つかれ~見つかれ~って念じれば見つかるのか? 」
断じてそんなことはないと聞いていたプレイヤーがいれば突っ込むだろうことを考えるトウリ。
「…………アイテムをきちんと認識しないとわからないとかか? 」
それは最早【発見】スキルは必要ないと思うがそれを突っ込む者が近くにはいなかった。
トウリの見当違いな思考を突っ込む者が誰もいないまま、トウリは1人悩み続けた……
◆◇◆◇◆◇◆
結局メニューにあるスキル欄から確認できるのではないのか? という結論に至るまで、トウリは15分弱かかった。
トウリは早速スキル欄を開いて確認してみた。
「確か、スキル欄は……っとこれか」
スキル
【拳LV7】【脚LV8】【投LV5】【関節LV3】
【調理LV3】【泳ぎLV1】【発見LV1】
控え
なし
称号
【無謀な拳闘家】【ラビットキラー】【見習い料理人】
「おっ! スキルが上がってる! 」
以前セットし忘れてたせいで全てLV1だったが、いくつかのスキルが上がっていた。スキルのLVが上がってることがトウリは妙に嬉しかった。
LVが上がったことを少し喜んだ後、未だにLV1の【発見】の詳細を見た。
・【発見LV1】
パッシブスキル
視界内にアイテム、罠があるとそれが赤く点滅する。
しかし【隠蔽】などで巧妙に隠されたアイテムや罠は見抜けない。
当然隠し扉や隠し部屋なども分からない。
手に入れたアイテムを簡易ながらも鑑定できる。
※現在OFFになってます。ONにしますか?Y/N
「……どうして俺はこんな初歩的なことが分からなかったんだ」
OFFと書かれた文字を見て思わず右手で額を押さえながら天を仰ぐトウリ。
すぐに操作して【発見】をONにした。
画面を閉じたトウリは、石造りの街をぐるりと見回した。
「……何も変わらないぞ? 」
トウリの目には、先ほどと変わらない光景が映った。
赤で点滅している物はどこにも見当たらなかった。
「……何で? 」
思わず首をかしげるトウリだった。
◆◇◆◇◆◇◆
――『始まりの町』西門付近
『始まりの町』の西門の前にトウリはいた。
初期装備の布の服に籠手と具足をつけただけで革鎧も身に着けていないトウリは、傍から見れば外に出るには些か軽装過ぎる装備のままだった。トウリの防御力が低いのも偏に装備の問題であると言ってもよかった。
当の本人はそんなものかと現状を受け入れているせいで問題視をしていなかったが、西門で門番を務めている衛兵は門を潜って危険な外へと出ていくトウリの軽装過ぎる格好に眉を潜めていた。
ここの西門から続く戦闘エリアの名は【豊かな森】
名前の通り自然豊かな森のエリアで、木材、木の枝、薬草、木の実などエリアには採取できるアイテムが豊富にあり、出現するモンスターも森ならではの獣系や植物系が多かった。遭遇率は【ゴブリンの草原】よりも高くて、戦闘中に乱入してくることも多々あり、モンスターの数も種類も多彩なエリアだった。
その危険度は【ゴブリンの草原】よりも高かった。
そんなところに何故トウリがいるかというと
「北門以外はどんなエリアと繋がっているんだろ。楽しみだなー」
やはり何となくだった。
街で【発見】の効果が出ないのは落ちているアイテムがないと考えたトウリは、街に出て確かめてみることにした。そして、それならどうせフィールドエリアに出るなら他の門から出てみようと考えたのが西門に来た理由だった。
【ゴブリンの草原】と【初心者の草原】を一緒にしたままでいるトウリに【豊かな森】がどういう所なのか当然、知るわけがなかった。
◆◇◆◇◆◇◆
――【豊かな森】の西門付近
「うぉおおお! 赤く点滅してるのがたくさんある! 」
トウリの考えは間違ってなかったようで、西門から一歩外に出ると至る所が赤く点滅していた。
それにトウリは、興奮気味に叫びながら周囲の赤く点滅しているアイテムを片っ端から拾ってアイテムボックスに収納していった。
門の近くで地面に四つん這いになってフィールドエリアの石や草を拾っているトウリの姿はなかなかシュールだった。
もしも、この時に門の近くをプレイヤーが行き来していたら怪しい目で見られること確実だろうが、幸いプレイヤーの多くは北門に集中していて、トウリがアイテムを集めるのに夢中になっている間にプレイヤーが西門を通ることはなかった。
ただ、西門の門番であったNPCの衛兵から終始訝しげな表情で見られていたことに、トウリは最後まで気づくことはなかった。
「さてと……結構集めれたな」
周囲に赤く点滅するものが一つ残らず無くなった頃になって、ようやくトウリは作業を止めた。周囲で点滅していたアイテムは全てトウリのアイテムボックスに収納されてしまっていた。
トウリは、早速アイテム欄で入手したアイテムを確認してみた。
・古びた布の服(装備中)
・古びた革靴(装備中)
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・石ころ(小)×26
・丸い石ころ×14
・木の枝×5
・宝石の原石(小)×6
・薬草×8
・草×4
・毒草×18
・鉄鉱石(小)×4
「おっ!? 宝石の原石なんかもある。石ころもあるし、そこそこ使えそうなのが集めれたな」
他の人から見ればゴミアイテムだが、トウリにとったら投げれるのなら何でもいいので有用なアイテムを採集できて満足気だった。
トウリは未だに森に入っていなかった。
感想待ってます。
3/4スキルLVを修正しました
2014/3/16 14/8/09 17/03/29
改稿しました。