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アルステナの箱庭~仮想世界で自由に~  作者: 神楽 弓楽
一章 始まりの4日間
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31話 「モンスターのことなら組合」

――【深底海湖】の桟橋


 桟橋の縁に老人が座っていた。釣竿を手に持ち、釣糸を湖の水面へと垂らしていた。その横では、もこもことした茶色い毛並みのクリスが銀色の魚に齧りついて食べていた。



 桟橋の近くの水面に小さな気泡が生まれたかと思うと水面からユリが姿を現した。


「クーリースー! サメ倒してきたぞ! ――って爺さん、また来てたのか」


 桟橋に上がったユリは、老人に気付くと少し驚いた顔をした。


「さっきぶりじゃの。そうか、この『ククトリス』は娘のテイムモンスターだったのか。なるほどのぅ」

 

「きゅ! 」


「そうかそうか。やはりそうじゃったか」

 

 ユリとクリスを交互に見て老人は納得したように頷いた。

 クリスも鳴き声をあげて老人の言葉に応えていた。何故か老人とクリスの間で会話が成立していた。


「いつの間に仲良くなったんだ? 」


 ユリは、知らない間に仲良くなっている老人とクリスを見ながら不思議そうに首を傾げるのだった。




◆◇◆◇◆◇◆



 再び顔を合わせた老人にユリは、桟橋の縁に腰かけて上機嫌にサメを倒すまでの経緯を老人に話していた。その様子は、孫が祖父にその日の楽しかった事を話す光景とどこか似ていた。


「ほう! 既に2体もブラッドシャークを倒したのか!? なかなかやりおるのぅ」


 ユリがサメを倒したと聞いて老人が驚いたように声を上げた。


「ブラッドシャーク? 」


 恐らくサメを指したであろう老人の言葉にユリは首を傾げた。



 SMOでは、戦闘に入ると敵のHPがバーとなって視認できるようになっているが、MPと敵の名前は適したスキルを持っていないと知ることができなかった。


 モンスターを倒した時のドロップアイテムに『~~の毛皮』というようにモンスターの名前が書かれているが、それも正式名称ではなく略称で書かれていることが多かった。


 正式名称はドロップアイテムの説明文に書かれていることが多く。もしくはスキルで確認するか、NPCに聞けば知ることができた。しかし、わざわざそんなことを気にするプレイヤーは少ないので、SMOの掲示板にはドロップアイテムに書かれている略称や見た目から名前が付けられていた。


 因みに、ユリが戦ったサメの正式名称は『ブラッドシャーク』で、略称は『血鮫』だった。βテスト時代にサメ型のモンスターが一種しか確認されていないかったので掲示板では『サメ』というだけで通じる。



 勿論、ユリはサメの正式名称など知らないのだからこの反応だった。


「なんだ娘、あのモンスターのことも知らずに戦っておったのか。よく生きていたのぅ」


 自分の倒したモンスターの名前も知らないユリに老人は呆れ顔になる。


ブラッドシャーク(血鮫)はこの湖に住むサメの姿をしたモンスターのことじゃよ。泳ぎが速くて、あの鋭い牙と噛みつきが強力で凶悪なモンスターのことじゃ。

 あのモンスターの厄介な特徴は血に敏感なことじゃ。水中で深手を負ったり、同じ場所でモンスターを狩りすぎると水中に漂う血の匂いを辿って襲ってくる。

 湖で狩りをする場合それに注意せねば、底から現れたブラッドシャークに襲われることになるの。他にあるとすれば、あのモンスターは陸での活動も可能じゃ。陸に逃げたことで安心していた者が水中から飛び出してきたブラッドシャークに喰われるといったことも何度かある。

 しかし、うまく避けることができれば、好機でもあるのぅ。陸に上がったあのモンスターは尾びれや噛みつきに気を付けていれば安全に倒すことができる。陸に上がってしまえば離れたところから攻撃を加えるのが有用じゃなろう。実際、あのモンスターを倒す方法の多くは陸に上げることが多い。

 娘が水中で倒せたというのは運がよかったというべきか、娘の粘り勝ちと褒めればよいのか微妙じゃの」


 老人が、ブラッドシャーク(血鮫)の説明をユリにした。その話をユリは時折頷きながら耳を傾けた。


「うんうん……なるほど。それでサメが突然来たわけだ。サメが空を飛んできたときなんかは心臓止まるかと思ったよ。爺さんは物知りだな」


 あれは怖かった、と思い返してるユリに老人は心底呆れる。


「……娘よ、ほんとにそんなことも知らずに襲われてよう生きていられたのう。冒険者互助組合に行けばこれくらい教えてもらえるぞ」


「まぁ俺も死なずにすんだのは運がよかったと思うな。ところで冒険者互助組合って何? 」


「な、何と!? 冒険者互助組合すら知らんのか!? 娘、冒険者じゃないのか? 」


「いや、別に冒険者じゃないぞ? 多分」


「……これは驚いた。てっきり冒険者互助組合に入っているとばかり思っておったが……なるほど、それならば無知なのも納得じゃのう」


「無知って……爺さんそれは言いすぎじゃないか? 」


「何を言っておる。普通自分の戦うモンスターぐらいは把握しておかんと危険に決まっておるじゃろう! 命がかかっておるのじゃぞ! 」


「ご、ごもっともです。それで、冒険者互助組合って結局なんなの? モンスターの情報はそこでわかるのか? 」


 老人の気迫に押されユリは、素直に引き下がって老人に尋ねる。

 あまりゲームをやらない上に、RPGはやったことのないユリには冒険者組合というのが今一わからなかった。


「まぁよい……冒険者互助組合というのは、主にモンスター討伐等の依頼を冒険者に斡旋している組合じゃ。冒険者はそこで依頼を受けて、依頼を達成すれば約束されていた報酬が支払われる。報酬は金だったり、アイテムだったり、依頼によって変わるがの。冒険者は、組合に登録して依頼を受ける者を指した言葉じゃ。

依頼の他に冒険者互助組合は、仕事柄モンスターに関してはかなり詳しい。特定のモンスターの生息地域や特徴といった生態や特定エリアにいるモンスターのことなど聞けば教えてくれるぞ。

じゃから『始まりの町』にある組合支部に一度行ってみれば………」


 そこで饒舌に喋っていた老人の言葉が途切れた。


「ん? 急にどうしたんだ? 」


「……ああ。いや、すまんすまん。そう言えば3年ほど前に組合はなくなったっとたのを忘れておった」


「はあ!? 組合なくなったのか!? 」


 ここまで話しておいてまさかの発言にユリが驚く。


「まぁ、落ち着け。『始まりの町』の組合支部がなくなっただけじゃ。まだ他の街に行けばあるじゃろう。北門から続く草原を抜ければ確か街があったはずじゃ。そこに行けば取りあえず組合支部があると思うぞ」


「なんだ。びっくりした。北門の草原を抜けた先の街に組合があるんだな? 」


「そうじゃ。気が向いたら行ってみるべきじゃと思うぞ。まぁこの湖ぐらいならば、ワシでも答えれるがの」


「そっか。でもまぁ当分ここにいると思うから、爺さんいろいろ教えてくれよ」


「ほっほっほ。答えれる範囲ならいくらでも答えてやるわい」


「ありがと爺さん早速だけど―――サメを簡単に陸におびき寄せることってできるか? 」


「そんなもの簡単なことじゃ。ブラッドシャークを一本釣りじゃ! 」


 老人は活き活きとした表情で釣竿を上げる振りをしながらユリの質問に答えた。



冒険者互助組合

第二の街以降から登場する重要施設です。

主にプレイヤーが任意で受けられるクエスト(依頼)の管理をしているところ


『始まりの町』にはないが、条件をクリアすれば設置が可能になる。


あまり有名ではないが、依頼以外にもモンスターの情報が多く集まっているので詳しく知ることができる場所でもある。


因みにギルド設立も組合で行うことができる(ある条件が未達成の為、現在は設立不可)



14/8/13 17/05/19

改稿しました。

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