22話 「湖で焼肉」
――【深底海湖】の桟橋
正式稼働3日目にも関わらず、南の湖には相変わらず人気がなかった。
そんな場所に青い燕尾服を着こなした青髪の美少女がいた。
下には、スパッツのような紺色のホットパンツを履いていて肌にぴったりと密着するホットパンツは、桃のような少女のお尻の輪郭をはっきりとさせていた。つきたての白い餅のようにむっちりとした太ももは半ばから晒されて、それよりも下は膝丈まである紺色のニーソによって覆い隠されていた。
あまりにも可愛らしく露出の高いその服装はまるでコスプレのようだった。
そんな人目を引きそうな格好をしたプレイヤーは桟橋の上に正座して、茶色い毛並みの栗鼠の前で屈みこんで両手を合わせて謝っていた。
「クリス、昨日は忘れててほんとゴメン! 」
「きゅ」
桟橋の上にいるユリは、昨日の午後に一度も呼び出していなかったことをクリスに謝罪していた。自らの従魔であるクリスに対して平身低頭で謝るユリは、本当に申し訳なさそうにしていた。
ユリに手を合わせられて謝られたクリスは、プイッと横を向いて頬を膨らませていた。
許してませんとアピールをしているかのようだった。
しかし、視線はちらちらとクリスの前に山積みされた木の実に向けられていた。
「追加で3個出すから。なっ、許してくれないか? 」
「きゅきゅう」
「え? これでもだめか? よし、じゃあ……あと2つでどうだ? 」
「きゅう」
追加で木の実の山の上に木の実を5つ置くと、クリは許してやるよとばかりに一声鳴いて、20個以上はあった木の実を瞬く間に口に詰め込んで正座しているユリの膝から肩へとよじ登った。
「そっか。許してくれるか。ありがとう」
クリスが謝罪を受け取ってくれたことにユリは、ほっとして体を起こした。
木の実を詰め込んで頬袋がパンパンに膨れあがっていたクリスは、ユリの肩までよじ登っている間に飲み込みまれて空っぽになっていた。代わりにぽっこりとしていたお腹もしばらくすると元へと戻った。
「あの木の実の山は、一気に食べれる量じゃなかったと思うんだけどな……」
そう疑問に思いながら、ユリはクリスの頭を撫でた。
「きゅ~♪ 」
撫でられたクリスは気持ちよさそうに甘えた鳴き声を上げた。
しばらくクリスを愛でて癒されたユリは、「よし」と小さく頷いてから正座した状態から立ち上がった。
「泳ぐのもいいけど、その前に料理のリベンジをしてみるかな! 」
初日で挑戦した苦戦した『料理』
ユリは、それに再びやってみることにした。
◆◇◆◇◆◇◆
早速ユリは、桟橋の上にタックから貰った『調味料セット』と『初級料理セット』をアイテムボックスから出した。
調味料セットは、塩と胡椒と砂糖が入った3つの小瓶が小さな木箱に入っているもので、初級料理セットはガスコンロらしきものを含めてフライパンや鍋といった調理道具が入っていた。
「あれ? おかしいな。包丁がないぞ……? あ、包丁は別で貰ってたか」
料理セットに包丁がなくて首を傾げたユリだったが、別で貰っていたことを思い出してアイテムボックスの中から探し出して取り出した。
どうやら最後に受け取った『初級料理セット』から『見習い包丁』との間に失敗した串焼きがずらりと羅列されていたことで見落としてしまっていたようだった。
「ついでに『見習いエプロン』も着とくか……」
『見習い包丁』を装備するついでにすぐ上に記載されていたエプロンも取り出して、青い燕尾服の上に白いエプロンを身に着けた。
「あ、しまった。おっさんから『木の串』を買うの忘れてた。……まぁ串焼きじゃなくてもいいか」
ユリは、もう一度角兎の串焼きに挑戦するつもりだっだが、串を買い忘れていたので変更を余儀なくされた。
「うーん。焼肉、でいいかな……? いや、ステーキの方がいいかな? 」
何を作ろうか頭を悩ませるユリは、チラリと肩に乗っているクリスに視線を向けて料理を決めた。
「よし、クリスが食べやすいように小さめに切った焼肉にするか。その方が回数も熟せるだろうし……うん、そうしよう! 」
作るものを決めたユリは、初級料理セットの箱を変形させた簡易調理台の上にまな板を置き、アイテムボックスから角兎の肉塊を10個取り出した。
「さて、張り切ってやってみるか! 」
気合を入れたユリは、ブロック状の角兎の肉塊を手ごろな大きさに薄く切りだしていった。
その間ユリの肩から降りたクリスは、料理をするユリの周りをチョロチョロと動き回っていた。
クリスにとってユリが料理をしている間は、暇なようだった。
◆◇◆◇◆◇◆
「ふぅー、終わった。……よく考えれば串焼きでも切った肉を6切れは使って兎肉1個当たり3本作れたんだから、単純に考えて焼肉にすれば1個で18枚、10個で180枚か……。一度に10枚以上焼いていけばそうでもないか。次は、塩コショウを振って味付けだな」
ユリは、まな板の隅に山積みされた肉切れの山の中から1枚1枚丁寧に肉切れをトレイへと移して、その肉切れに塩コショウを振っていった。
たかが味付けでもいい加減にすると成功率は下がってしまうので、ユリは慎重に振った。
「……パッパッパっと、これぐらいで充分かな? それじゃ、コンロに火をつけてフライパンを上に乗っけてっと」
しばらくフライパンを温めた後に、フライパンの上に一枚一枚重ならないように素早く肉を置いていく。9枚入れたとこで隙間が無くなったので一旦止めた。
「……そろそろかな? 」
裏返すタイミングを見極めて、置いていった順に手早く肉を裏返していく。焼け色は程よい狐色でちょうどよさそうだったが、最後の数枚は、間に合わなかったのか少し焦げ目がついてしまった。
「うーん、ちょっと失敗したな」
しかし、初めてだし、仕方ないかとすぐに割り切った。
「…………ん、もう良いな」
串焼きで培われた勘を働かせて、コンロの火を切って皿に焼肉を手早く移していき、全部皿に移し終えたところで、1枚1枚の焼肉の出来栄えを表示して確認した。
角兎の焼肉
食べやすい大きさに切られたホーンラビットの焼肉
塩コショウが程よく利いている
評価3
角兎の肉
食べやすい大きさに切られたホーンラビットの焼肉
塩コショウが程よく利いているが、少し焦げてしまっている。
評価2
評価2の焼肉が6枚、評価3が3枚できた。
ユリは評価3が出た焼肉を1枚口に運んだ。
「うん……まぁ普通においしいかな? 初めてにしては上々だな。完全な失敗が出なかったのは、串焼きでの経験が上手く活かされたからかな? ほら、クリスも食べてみるか? 」
ユリが評価2の焼肉も食べていると、いつの間にかユリが手に持っていた皿の真下にいたクリスが、真上の皿か漂ってくる焼肉の香りに立ち上がって鼻をひくひくととさせていた。
それに気づいたがユリが皿を近づけて促してみると、クリスはそのまま皿に近づいて残った焼肉を頬張った。それも一瞬で残りの焼肉を全て口の中に収めてしまった。
「……お前、相変わらずの早食いだな」
空になった皿とクリスを交互に見てユリは呆れた表情になる。
「きゅう、きゅきゅ」
そんなユリに、クリスはもっとくれというように鳴き声を上げて追加を催促した。
どうやらさっきの焼肉はクリスのお気に召したようだ。
「はいはい。すぐに作るから待っとけよ。この食いしん坊め」
「きゅ! 」
ユリはちょっと嬉しそうに笑いながらクリスの為に次の準備を始めた。
その間クリスは、ユリの肩に乗って料理ができるのを大人しく待っていた。
◆◇◆◇◆◇◆
人気のない湖の桟橋で一人のプレイヤーと一匹のモンスターが鼻歌を歌いながら桟橋で焼肉をしていた。湖に響く心地いい鼻歌は、他にプレイヤーのいない湖に静かに響いていた。
「…………歌かの? 」
そう他のプレイヤーは、いなかった。
「……ふむ。桟橋の上で何かやってるようじゃの。ちょっといって見るかのぅ」
スキル
【拳LV12】1up♪【脚LV12】【投LV13】6up♪【関節LV3】
【調理LV6】3up♪【泳ぎLV4】3up♪【発見LV8】4up♪
控え
なし
称号
【無謀な拳闘家】【ラビットキラー】【見習い料理人】【見習いテイマー】
14/8/11 17/04/05
改稿しました




