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アルステナの箱庭~仮想世界で自由に~  作者: 神楽 弓楽
一章 始まりの4日間
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20話 「当分ソロ行動」


 その後、ユリは落ち着いたルカと共に先に進んでいたタクとランの2人に合流した。

 合流する前にルカとユリの2人は、剣と弓と杖持ちの3体のゴブリンと戦うことになったが、ユリが前衛としてルカの壁になることで、なんなく勝つことが出来た。

 タクとランのコンビも合流するまで二回ほど戦ったそうだが、そこまで苦戦はしなかったようだ。ゴブリン程度の敵ならば4人とも問題はなかった。


 合流した後は、ユリは再び後衛で【投】スキルをこつこつと上げた。

 奥まで進むと、出現するモンスターが連携を行う上に若干強くなった精鋭ゴブリンに変わった。

 ゴブリンの装備もまたグレードアップしていた。

 汚い腰布だけだったのが革鎧やローブを着るようになり、持っている武器も錆びたものからきちんと手入れされたものへと性能が向上していた。

 一度に遭遇する数も一度に2~5体だったのが4~6体に変わり、他のゴブリンのPTが乱入することも増えたことで、一つの戦闘が長引くようになった。


 結局、ユリ達はボスにたどり着けないまま予め決めていた時間が迫って来たので、探索を中断して街に戻ってログアウトした。



◆◇◆◇◆◇◆



――東野家のダイニングルーム


 ログアウトした4人は夕食を食べた。勿論夕食もカレーだった。

 生卵をカレーに入れたり、納豆を投下したりとランとタクヤの2人はそれぞれカレーにトッピングして食べた。トウリとカオルの2人は特に何もせずそのまま食べた。


 食べ終わった後は、片付けをカオルとトウリの2人でして、全員歯磨き&お風呂を済ませた後、コンビニの箱入りのアイス棒を食べながら今日のことを話し合った。

 歯磨きした後なのだが全員気にせず食べていた。


「トウリ、お前ってPTの連携が壊滅的にダメだな」


 食べ終えたアイスの棒を口に咥えたままタクヤは笑いながらトウリをダメ出しした。


「うっせい。VRとかオンラインゲームとか初めてなんだから、そんな簡単にできるわけないだろ」


 元々オンラインゲームの経験がなく、VRMMO暦が2日のトウリに連携云々をしろと言うのが、かなりの無茶だった。


「大丈夫よ。初めてにしては上手くできていたわよ」


「うん。弓の牽制とか上手くできてたしね」


 カオルとランがフォローを入れる。カオルに至ってはトウリの頭を撫でながらタクヤを睨んでいた。慣れきってるタクヤはその視線を受けても態度を変えなかった。


「まっ。それは解決案が上手くいっただけで、トウリ本来の戦闘だとPTとの連携はぜんぜんダメだな。ってかトウリの戦闘方法がソロプレイに偏りすぎているからな」


 1対1なら肉体を使った超接近戦で戦い、1対複数なら石を投げたりモンスターを投げたりして牽制しながら各個撃破していく方法は、息が合わなければ仲間との連携は難しかった。

 拳や蹴りなどの肉体を使った攻撃は、剣よりも敵に接近する必要がある為、味方の攻撃がモンスターごと当たりやすく味方との息が合わないと誤爆を起こしやすい戦闘スタイルだった。誤爆を恐れれば味方は敵に迂闊に攻撃も出来ないので、力を十全に発揮することは出来なくなる。


 仲間との意思疎通は、重要だった。


 つまり、初心者のトウリに本来の戦い方でPTを組むことは今のままでは厳しかった。


 そうタクヤにさんざん言われたトウリは、決断した。


「…………わかった。俺、当分はソロプレイで行く」


「それがいいな」


「えー……残念」


「非常に非常に(・・・)っ残念だけど、トウリちゃんが決めたことなら私はそれでいいと思うわ」


 トウリの決断にランはあからさまに残念がっていたし、カオルはトウリの意見を尊重しようとしつつ本心が漏れていたが、3人ともトウリがソロプレイすることに理解を示して励ましてくれた。


「まぁ当分はソロで森や湖辺りで頑張ることにするけど、たまにならまた一緒にやってもいいぞ」


「やった! 」


トウリの言葉に残念そうにしていたランの表情が一瞬で明るくなった。両手に2本のバニラとチョコの棒アイスを持ったまま可愛らしくガッツポーズをした。


 それを見たトウリは、食い意地だけは張っているな思う。ランはカレーの時も必ず2杯は食っていた。

 あの小柄な体にどうしてそんなに入るのかとトウリはわりとどうでもいいことを思考する。

 そして、何故そんなに食べてるのに小さいままなのかとも思った。


 何がとは言わない。色々とだ。


「ランちゃんもいいなら、私もたまにならトウリちゃんと一緒に行動してもいいわよね? また一緒にルルルの防具屋に行きたいわ」


 トウリがランを見てそんなことを考えているとランに便乗してカオルがそんなことを言ってきた。


「あ、うん。機会があったらね。機会が(・・・)


トウリは機会があればと強調しながら答えた。その視線はちょっと泳いでいた。


「そう。じゃあ今度ルルルに色々頼んでみるわ。ふふふふ……ユリちゃんには色々着てもらいたいモノがあるのよ」


 カオルは紅潮した頬に手を当てうっとりした様子で虚空を見つめた。

 美女のカオルがやっているととても色っぽいが、トウリは冷や汗を流しながら斜め前にいるタクヤに目でSOSの合図を送るが、タクヤはあからさまに視線を逸らしあさっての方を見ながら口笛なんかを吹き出した。


「じゃ、じゃあ俺はそろそろ上に行くよ。タクとランはちゃんとゴミはゴミ箱に捨てろよ。後、ランももうそれ以上食べるなよ。おなかを壊すぞ」


 ちょっと噛みながらもトウリはそう言って席を立ち、アイスの棒を捨てて二階に上がった。


 同時にタクヤも席を立って階段を上がっていくトウリに近づき耳元でささやいた。


「……言っとくが、俺にああなった姉ちゃんは止められないからな。頼むから俺を巻き込もうとすんなよ」


「……わかった。とりあえず、裏切り者のお前には、ルルルさんにお前が着る女装服の用意を頼んどくことにするわ」


 助けてくれないタクヤにトウリは自分と同じ思いをあわせることを心に決めた。


「はぁ!? ちょっ、お前それ誰得だよ! 」


「嫌がるお前の顔を見ると俺の気分がとても爽やかになる」


「お前いい趣味してるな! 」


 タクヤをからかって幾分落ち着いたトウリはトイレをすませて、疲労もあってそのままベッドに入って目を閉じた。


 タクヤは、この後もSMOをする気のようだった。

 SMOで2日続けて、運動不足のトウリはそろそろリアルで体を動かしておこうかなと明日の予定を立てながら眠りについた。



14/8/11 17/04/02


改稿しました。

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