コイゴコロ
あなたはなんて言ったら私を好きになってくれるの?
「どうしたの?」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、そこにはやはり、私の悩みの種である美和子が微笑んで立っていた。
「いや、何でもないよ。」
「本当に?」
美和子が私の顔を覗き込んでくる。
か、かかか顔が近い。やばい顔があつい。あう~
赤くなったのがバレないように少し顔を逸らしてしまう。
美和子はそのまま私の横顔を見続け、私から全く目を離してくれない。
束の間の沈黙。
・・・・・だ、駄目だ耐えられない。
「もう駄目。言うから。白状するから。何も言わずに見つめないで。」
無言の圧力に負けて私は言う。
「ふふっ、私の勝ちね。さて、澄夏の悩み、聞かせてもらおうかしら?」
彼女は悪戯っ子の様な無邪気な笑顔を浮かべた。その笑顔にドキッとしきてしまう自分がいる。
「う、うん」
あぁ、どうしよう。
美和子に本当のことを言うわけにはいかないけど、嘘をついてもきっとばれてしまう。
あぁ、本当にどうしよう。
またもや沈黙
「あぁ、もう、じれったい!!さっさと白状しちゃいなさいよ。白状するまで帰さないからね?」
「えっ、ちょ、そんな、困るよ」
なんて言ってみるけど、本当は、美和子とずっと一緒にいれるならこのまま黙っていようかなーなんて思ってしまう。
「困るんだったら早く言っちゃいなさいよ。」
言いたくない。てか言えないよ。あぁ、でも言わないと美和子の機嫌が悪くなっちゃうしなー。
「ほらほら早く言っちゃいなよ。」
もうこうなりゃやけだ。
「わ、私ね。好きな人がいるの。」
「えっ、ウソ!?ホントに?私それ初耳なんだけど。」
「う、うん。誰にも言ったことなっかたからね。」
やばい。どうしよ。まじどうしよ。このまま話し続けるしかないよね?うわー
「ねぇ、それ誰?誰なの?私の知ってる人?」
目が・・・目がキラッキラしてるよ。この子。やっぱり女の子だなぁ。可愛いなぁ。・・・・じゃなくて!!
「ああぁっと、うーんっとね。多分知らない人だよ。」
「そっかぁ、そうなんだ。ねぇ、どんな人なの?」
「か、可愛くて、明るくて、多少強引なとこもあるけど、すっごく優しい人。」
恥ず過ぎる。本人に本人のこと言うとか。つらい。恥ずかしすぎてつらい。
「へぇ、年下?年上?」
「タメだよ。」
「おっ、じゃあ、私の知らない人だから他校の人だね。」
「う・・・ん。」
「ははっ、ごめんごめん。じゃあ、澄夏が悩んでるのってその人のことについてなの?」
「う、うん。まぁね。」
「どんなこと?」
「いやーね。どうしたらその人に好きになってもらえるのかなーって思って・・・・」
「へぇー」
「うっうん・・・美和子はどうすればいいと思う?」
「そうねぇ・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
えっ何この沈黙。急に何が起きたの?まさか私以外のもの全ての時間が止まったとか?わー私すごい。・・・って、そんな現実逃避してちゃだめだ。取り敢えず話しかけてみよう。そうしよう。
「そんなに真剣に考えなくてもいいよ。」
「ん?うん。でも、ちゃんとした返答したいしさ。」
「そ、そうなの?そっかぁ・・・」
「だってねぇ・・・澄香の為だもの。」
ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
やばいよ。まじやばい。不意打ちキターーーー!!そんな聖母の様な微笑みでその台詞はやばいよ。死ぬ。死んでしまう。この天然たらしめっ!!
「な、何恥ずかしいこと言ってんの。まぁ・・・ありがと・・・」
「どういたしまして。ふふっ、澄香すっごく顔真っ赤。」
優しい奴め。惚れちまうだろ!!・・・もうベタ惚れだけど。
「もう・・・美和子の所為だかんね。」
「はい、はい。でも、こんなに可愛い澄香が私の知らない人のものになっちゃうかもしんないのかぁ・・・それは嫌かもなぁ。」
「っ!?」
可愛いって・・・あぁ、もうっ!!バカ!!何なんだ!!私が他の人のものになるのが嫌って!!何なんだよ!!恥ずかしすぎるだろ!!
「・・・よくそんな台詞言えるよね。」
「だって本当のことだもの。仕方ないじゃない?」
「うぅー。じゃあいいよ!!もう絶対こういう話は美和子にしないからね!!」
「別にいいわよ?私は気にしないから。」
この余裕ありますよって顔なんかイラッてする。
「美和子のバカ!!天然たらし!!鈍感!!」
「バカでも、たらしでも、鈍感でも結構。さてと、私はそろそろ帰ろうかな。」
美和子は少し早足になって少し先へ行ってしまう。
「えっ?あっ!!待ってよ。私も帰るー!!」
私は美和子を追いかける。
「・・・まったく、鈍感はどっちよ・・・」
「えっ?何か言った?」
「何でもない。ただの独り言よ。気にしないで。」
美和子は首を横に振りながら答える。
「そっそう?なら、いいや。」
はぁ、私の恋はこの先どうなるんだろ?
まぁ、今はまだ、彼女の傍にいられればいっかな。
おまけ~美和子宅より~
「何で澄香ってあんなに鈍いのかしら?」
部屋着に着替えながらぽつりと呟く。
「はぁ・・・」
つい出てしまう溜め息。
それも澄香の所為だ。あそこまで言って全く気付かないなんて。
これ以上どうやってアピールしろと言うのか?
「告白かな・・・」
確かに告白という手もあるが彼女に告白させたい。別に告白してもいいのだが、彼女が顔を真っ赤にさせて告白して来るのが堪らなく見たい。
こんなこと考えている私はダメなのかもしれない。
でもいつか、この恋は成就させる。
それにもしもの時は私から告白するしね。