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第四話 お日様は、命の糧

 今日は、とても良いお天気。

 まだ午前九時くらいだから、そんなに日差しも強くないし、気温も高すぎない。

 吹き抜ける風がとても心地よい。

「さあ、甲羅干しをしようねー」と、美智子お母さんが南向きのベランダに、私たち2匹を出してくれたので、今は本物のお日様を満喫しているところ。

「ああ、やっぱり本物のお日様での甲羅干しは気持ちいいね〜。ちびちびちゃん!」

 相棒の、大きい方の亀さんこと『でかでか』ちゃんが、性格と同じのんびりした声を上げる。

「そうね。やっぱりいくら紫外線の出るライトでも、お日様の紫外線量にはかなわないわね」

「え? そうなのー?」

「うん、そう。曇りの日の紫外線量より少ないんだって、お母さんがぼやいてたから」

「へー。ライト、高いのにねぇ」

 その通り。

 ホームセンターのペット用品売り場の前で、お母さんを金縛り状態にした、とても高価な『紫外線ライト』。実は、『無いよりはまし』程度の効用しか無いの。

 私たち亀族の甲羅は、人間で言う『骨』。

 だから、その主成分はカルシウムなんだけど、このカルシウムを吸収するのに『ビタミンD3』が必要なの。

 で、私たちはこのビタミンD3を、お日様から出ている紫外線、『UVB』を浴びることで身体の中で作っている。

 自分の身体で作っちゃうのよ? これって凄くない?

 だから、もしこのUVBを全く浴びられない環境で飼育されると、亀は病気になっちゃう。

 骨や甲羅がグニャグニャに柔らかくなって、最悪死に繋がる病気、『クル病』。

――ぶるる。これもあまり良い死に方じゃないな。あ、私の希望はもちろん、『老衰』ね。

 それと、お日様での甲羅干しには、身体のばい菌や寄生虫を殺す作用があるから、やっぱり甲羅干しは、私たちの美容と健康の源ってわけ。

 ほら、人間だって海とかで身体を干すじゃない?

 きっと、似たようなものだと思うの。亀は、色黒になったりしないけど。

「でもなんで、プラケースじゃなくて、洗面器で甲羅干しなのー?」

「それは、プラスチックやガラス越しじゃ、UVBが届かないからよ」

 色々突き詰めるタイプのお母さんは、とある亀の飼育サイトでこのことを知ってから、こうして紫外線量の多い午前中に甲羅干しをさせてくれる。

 でも、気を付けないとこの『ベランダで甲羅干し』って、危険が一杯なのよね。例えば……。

「カァー!」

 そう、カラス――。

 えっ!?

「カァー!」

 ちょっ、ちょっと待ってよ、ホントにカラス!?

「でかでかちゃんっ! 隅に寄って! 甲羅に隠れてっ!」

「え? ええー?」

 んもうっ! のんびりしてたら、食べられちゃうよっ!

 私は慌てて、でかでかちゃんの甲羅を隅っこに向かって押した。でも所詮、狭い洗面器の中、小さな私たちに逃げる術は無い――。

 お母さん! 美智子お母さん、助けて!

「こらーっ!! しっしっしっ! この馬鹿ガラスっ!!」

 お、お母さん〜〜。

 間一髪! 異変に気付いたお母さんが慌ててカラスを追い払う。

 思わず涙目になっちゃった。

 茹で亀もクル病も嫌だけど、『カラスにつっつかれて甲羅だけ』は、もっと嫌ー!

 くすん。


 その後、用心深くなったお母さんは、洗面器に百円ショップで買ってきたバーベキュー網を乗せ、更にレンガで重しをし、更に、洗面器の隣で見張っている事にした。

 私たちにすれば、だれも居ないところでのんびり甲羅干しが理想なんだけど、身の安全には替えられないしね……。 

 でも、お母さんも大変じゃないのかな?

『亀の甲羅干し姿は癒し系』だって、ニコニコしてるから、ま、いっか。


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