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第三話 ナイス! なネーミング?

「ねーねー、亀さん達、名前付けて貰ったの?」

 翌日の昼下がりのこと。

 隣の水槽の住人、オカヤドカリ一座は五匹いて、その中の一番大きい目の覚めるような青とオレンジのストライプ模様の貝殻の人が、興味津々で私に聞いて来た。

「まだだけど?」

「そうなんだー」と、何故か妙に含みのあるニヤニヤ笑いをする。

 飛び出しているひょうきんな目が、くるくると回って、見ているこっちが目が回りそうになる。

「僕の名前、『一郎君』って言うんだ」

「宜しくね。一郎君」

 これから同じ屋根の下に住むんだから、一応ご挨拶はしておかないとね。

「宜しく。それで、左から順番に、次郎君。三郎君。四朗君。五郎君」

 んあっ?

 思わず、ぽかんと大口を開いてしまった私を実に楽しそうに見やり、一郎君が続ける。

「それで、隣の金魚軍団、10匹居るんだけど、大きい方から、あーちゃん。いーちゃん。うーちゃん。えーちゃ……」

「分かった! 良く分かりました」

 思わず、話の腰を折ってしまった。

 しかし、何というネーミングセンスだ……。

 この分だと、私たちの名前もあまり期待が出来ないなぁ。

「さあ! 亀さん達の名前、決めたわよ!」

 昼食の後、美智子お母さんが、張り切りボイスで、高らかにそう宣言した。

 普通、ペットの名前って、子供に付けさせると思うんだけど、伊藤さんちでは違った。

 そう、あの素晴らしいネーミングセンスの持ち主は、何を隠そう『美智子お母さん』だったのだ。

「じゃ〜〜ん!」

 緑のクレヨンで名前が書かれた広告の裏を、『えっへん』と、お母さんが子供達に掲げて見せる。 

「さあ、みーちゃん。読めるかな?」

「うん!」

 嬉しそうに、みーちゃんが読み上げる――。

「大きい亀さんが『でかでか』ちゃん! 小さい亀さんが『ちびちび』ちゃん!」

「はい。良く読めました! これからは、名前で呼んであげようね」

 って、小さい私は『ちびちび』ってこと!?

 ちっょ、ちょっと待ってよ美智子お母さん! んじゃ私、大きくなっても、『ちびちび』って呼ばれるの!?

 めい一杯、抗議の声を上げるけど、悲しいかな、亀には発声器官が無いから、届く筈もない。 

 亀吉とか亀太郎とかガメラとか、その辺を予想していたんだけど、見事に外れた。

 だってまさか、亀に『ちび』とか『でか』とか付けるなんて、普通思わないよ?

 とほほ……。

 

 

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