第八話……ママの経験
「どうだった? Aランクモンスターを討伐した感想は」
俺は、その感想を『ナツとスイ』に求めた。
「す、すげぇよ……。ホントに『レツの指示』があれば……あんなモンスターでも簡単に倒せるんだな……」
「うん、すごい経験になった……。ああやって倒せばいいんだね。次も指示は欲しいけど、その次からは同じモンスターなら、自分達だけでも行けるんじゃない?」
「あっ……! そういうことか……」
二人に何が起こったかをミレイが察して、すぐにその独り言は小声になった。
そう、時間停止の前後で『整合性が取れた』のだ。モンスターを討伐していないのに、討伐したことになり、どのように討伐したか、体を動かしたのかも経験として刻まれる。
二人の経験値効率が格段に上がった瞬間だった。
もちろん、俺が本当に指示することもあるが、ミレイがいるのでその必要はない。また、今回のように言葉を発することができない状況でも、何らかの指示が適切なタイミングで存在したことになる。
この場合、具体的な討伐方法や判断力、運動神経に関する経験値の観点では、ミレイだけが取り残されることになるが、時間停止スキルをどう扱うかの経験さえあれば、今後も問題になることはない。
幸い、『経験値』なる数値は、この世界に存在しないので、バレることもない。
「ミレイ、安心してくれ。また次で説明するから」
「うん、大丈夫だよ。レッくんを信じてるから」
ミレイは女神のような優しい表情で、俺に笑顔をくれた。
久しぶりだな……この感情は。これまで以上にやる気が出てきた。
「よし、この調子で進もう。あと、三十分でこの階をクリアするぞ! 油断は禁物だがな!」
「マジかっ! でも、やれる気がしてるぜ!」
「ええ! また合図お願いね、レツ!」
「ふふふっ。こんな『リトルヴィーナス』、久しぶりだよ! 本当に嬉しい! ありがとう、レッくん!」
そして俺達は、七百階の最奥に、予定より二分以上早く辿り着き、クリア記録をクリスタルに刻んだ。
「さて、良いこと教えようか。この七百階、クリア時間が比較的長くなる階と言われていて、これまでの最短記録が二時間二十一分なんだ。それでも当時は抜群に早かった。何を隠そう、当時の『メガミバースト』の記録だ」
「えぇ⁉️ 私達が三十三分だから……と、とんでもない大幅更新だよ!」
「お、おい……ってことは……」
「ランク判定規則では……その階層に満たないランクのパーティーがそこで最短記録を更新した場合、問答無用でパーティランクがその階層ランクに上書きされる……だったよね……」
「さらに、その記録を大幅に更新した場合、ダブルランクまたはトリプルランクが学園ランク判定審議会で検討される。トリプルランクが当該ランク低階層で付くことはないから、ダブルランク。
おめでとう、ダブルAランク確定パーティー『リトルヴィーナス』。
な、簡単だったろ?」
「あ……あ……」
「嘘だろ……? 夢なんだろ……? C、Bをあっさり飛び越して……。しかも、ダブルって……」
「し、信じられない……。まだ……まだ信じちゃダメ……! 夢だよ、絶対! ずっとDランクなんだよ、私達は! 起きよう! ほら、みんな起きて! 私も起きるから!」
スイがミレイの肩を揺さぶり、ナツに思いっ切りビンタをして、さらに腹パンを加えた。
「い、いてぇよ……スイ……。ホントに痛くて吐きそうだ……ろっ!」
「うっ……!」
その仕返しに、ナツがスイに腹パンし、彼女達は二人共、重なるように地面に倒れ込んだ。
「あ……草の地面、冷たい……。水滴とか、匂いもある……」
「スイのほっぺた、温かいなぁ……。久しぶりに、お風呂一緒に入ろうよ。私もレツみたいに童心に帰りたいんだー」
「うん、いいよ。洗っこしよ!」
「やったー! 楽しみー!」
「大丈夫か、コイツら……。かわいいけども」
「現実逃避しちゃった……。ナッちゃん、スーちゃん、次の階に行くよー」
ミレイは、ママのように二人の頭を撫でながら声をかけた。
「ママー、おっぱい吸いたいよー」
「私もー」
「えぇ⁉️ レッくん、助けてぇ……」
「……。俺に影響されたのか? しかし、これはチャンスと捉えるべきか……。ミレイママ、かわいい子ども達だ。今まで悩んできた反動だろう。その分、甘えさせてあげた方が良い」
「パパ、好きー!」
「私もー!」
「いつの間にか、おままごとになってる……。ええい、ママよ!」
「そのセリフ、言ってみたかったのか……ったく、おもしれー女」
「……。レッくんも言ってみたかっただけだよね?」
俺にツッコミながらも、再び胸をさらけ出したミレイ。二人の前では、躊躇いや恥じらいもないようだ。
「はい、二人の大好きなおっぱいだよー」
「やったー! チュパチュパ……」
「ママ、大好きー! チュパチュパ……」
「ママのおっぱい、美味しいか? ナツ、スイ。俺のかわいい娘達」
俺もパパとして、とりあえず参加することにした。
『うん、美味しいー!』
二人の返事を聞いて、今しがた考えた作戦を実行することにした。
喉の調子を整えて、少し高い声が出るようにして……。
「じゃあ、次はナツがママの役な! いつもパパの役ばっかりだったよな、恥ずかしがって。俺、ナツのおっぱい吸いたい! ミレイもスイもそう思うだろ?」
「わ、私なんて無理だよー」
「私、ナツのママ見たい! ずっと言ってた!」
「すごい……。わ、私だって見たいよ! ナッちゃん!」
想定していた通りの良い流れになった。
「ナツは自然体が一番。でも、何にだってなれるんだ。だから、自然体なんだろ? 今までは、『ナツはそのまま、男勝りでもかわいいよ』って言われてきたと思う。それはそう。でも、俺は『色々なナツ』を見てみたいんだ。『ナツのママ』が見たいんだよ!」
「レツ……。スイ……ミレイ……」
泣きそうな表情をしているナツは、俺達の真剣な眼差しを見て、決意が固まったようだ。
「私……ママになる! レツ、来て!」
「ママ、大好きだぁぁ!」
「私もー!」
「あ……じゃあ、私はパパかな……。ナツ、そろそろおっぱいの時間じゃないか?」
声を低くしたミレイの素晴らしいアシストで、ナツが時間に気付いたような素振りを見せた。
「ありがとう、パパ。愛してる。レツ、スイ、おっぱいの時間だよー」
『やったー!』
思っていた以上に、ナツのママは優しくおおらかで、愛に溢れ、普段とのギャップがその魅力を際立たせていた。
そして、はだけた胸も想像以上にボリュームがあり、俺の口は自然とそこに吸い込まれて行った。
ナツママ、ありがとう。紛うことなき女神だよ。
「あ……はぁ……ん……! ……。スイ……? どうしたの? おっぱい嫌だった? え……パパ……ミレイ? なんで動かないの? い、嫌だよ……! 二人ともどうしちゃったの⁉️」
「ナツ、大丈夫だ。落ち着いて聞いてくれ……」
俺はおっぱいを吸っていた体を起こして、ナツの目を見つめ、彼女の身に何が起こっているかを四十秒に早口でまとめ、説明した。
その過程で、ナツの精神状態は正常に戻ることができた。
「そ、そんなことが……あるのかよ……」
「まだ夢だと思ってもらってかまわない。すぐにハッキリするから。ただし、ダブルAランクに認定されるのは、少しだけ先延ばしにする。理由はこれから説明する。おっぱいを戻して。時間が動きだすぞ」
そして、時が動き出した。
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