第四十四話……邪悪さの代償
「どうだ? 俺の『遠隔打撃スキル』を味わった気分は? 不意打ちだから、軽めにしておいてやったぞ」
「ぐっ……! こ、この野郎……! 最初からそのつもりだったのか!」
時が動き出し、師匠の打撃を食らったメンバー達は、一斉に腹を抑えてうずくまった。
その中でも、セインはすぐに立ち上がり、師匠に真っ向から反抗するつもりでいる。
「俺は奴隷の存在を否定しない。そこに保証と正当性があるならな。俺は奴隷を持ちたいが、奴隷と一緒に幸せになりたいんだよ」
「奴隷が幸せなんて感じるわけないだろ! 全部自分の幸せのためだろ!」
「一理ある。しかし、奴隷を理不尽に傷付けていい理由にはならない」
「奴隷は所有物だ! 商品として売買だってされている! 何したっていいんだよ!」
「お前達は売買して、奴隷を手に入れたのか? そんな話はしてなかっただろ。勝手に奴隷と名付けて、勝手に自分の物にして、勝手に傷付けてるだろ」
「はっ! 何をバカなことを! 自分から望んで奴隷になる奴なんていないだろ! お前だって、勝手に奴隷を手に入れようとしてただろ!」
「そうだ。最初はそれでも仕方がない。だが、俺は奴隷にこう聞きたい。『お前は俺の所有物だ。いいな?』と。そして、お互いのやるべきことが分かり、少し経った頃、『お前は俺の所有物だが、このままでもいいか?』と。その時に笑顔を見せて、『はい!』と答えてくれるように、俺は関係を築いて行きたいんだ」
「だから何だってんだよ! それこそ勝手にやってろよ、バカが! 俺達に押し付けるなよ!」
「お前達も奴隷に押し付けてるだろ。自分の負の感情と理不尽な暴力を。だったら、俺も勝手にやらせてもらおうか」
「はぁ?」
俺はミレイに合図をして、時を止めてもらい、急いで同様にみぞおちを思い切り蹴飛ばして行った。
そして、すぐに時間を解除してもらった。一人当たり五秒ぐらいだったので、連続で停止できる時間は半分以上残っている。
「うぐっ……! うううう……ぅぅぅぅ……! う……げええええぇぇぇぇ!」
セインを始め、ほとんどのメンバーがその苦しみに耐えかね、嘔吐した。
「今から、お前達は俺の所有物だ。いいな?」
「なっ……! ま……待……」
再び時間を停止し、次はうずくまって地面を向いていた顔面を思い切り蹴り上げて行った。
そして、時間切れとなり、全員の上半身が大きく仰け反った。そのまま待っていても、ピクピクと全身を痙攣させて、起き上がれない者もいる。
「あ……あ……」
「どうした? 回復魔法をかけていいんだぞ。待っていてやるから。もしくは、スキルや魔法を使って攻撃してきても。ただし、お前達なら奴隷がご主人様に反抗した時にはどうなるか、分かっているな? どうせ、命令をすぐに聞かなかっただけでも、理不尽なお仕置きをしていたんだろ?
勝手だよなぁ。でも、いいんだよな、勝手で。お前がそう言ったんだもんな。もし言われなかったら、そんな酷いこと率先してできないぞ、俺は。
優しいな、お前。ちゃんと俺のためを思って言ってくれてたんだな。そうか、これが愛なんだな!」
「ち、違……」
「じゃあ、俺もしっかり愛を返すからな! 愛の鞭だっけ? 回復はしなくていいんだな? もう一度、腹に行くからな? そのまま横になってたら、もしかしたら、内臓が損傷するかもしれないけど、いいよな? 俺の勝手だもんな? やっぱり、奴隷は最高だな! 何したっていいんだから!」
「い、嫌ああああぁぁぁぁ! 許してええええぇぇぇぇ!」
「た、助けてください! お願いします!」
俺は一分の時間稼ぎが終わったことを確認し、ミレイに時間を停止してもらった。
そして、全員がガードしている腹の両腕の隙間から、俺は剣を差し込んで行った。
「ぎゃああああぁぁぁぁ!」
時間が動き出すと、意識が朦朧としていた者も含め、全員が大きな悲鳴を上げた。
「ああ、悪い悪い。言い忘れてた。『遠隔斬撃スキル』も使えるんだったわ、俺。ほら、早く回復魔法をかけろよ。出血で意識失って、そのまま死ぬぞ? 俺は奴隷を大切に扱いたいからさ。死んじゃったら悲しいだろ?」
「うぅ……許して……ください……」
「……。なぁ、セイン。俺がこれまでに言った言葉。お前達も奴隷に対して絶対に言ってただろ。そして、お前達の言葉。奴隷達もお前らに対して絶対に言ってただろ。そのあと、お前達はどうした? こうしただろ!」
「⁉️」
時間停止の残り時間を使って、俺はそれぞれの剣を差し込んだ傷口を思い切り踏んづけて行った。
「ああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!」
時間が動き出し、痛みでジタバタと手足を動かす面々。
「お前らは奴隷の命も尊厳も踏みにじってきた。こんなちっぽけな痛みじゃないんだよ! お前達が勝手に『奴隷』と名付けて、痛め付けてきた『人間』が感じてきた本当の痛みは!」
「……許してぇぇ……許してぇぇ……!」
「……。分かった、許してやる。ただし、今から言うことをやったらな。全員全裸になり、吐瀉物の上に脱糞し、それらを一欠片残さず全て食え。そして、『美味しかったです! ご主人様! 明日はご主人様のゲロうんち、お腹いっぱい食べさせてくださいね! 私は一生ご主人様の奴隷ですから!』と、とびきりの笑顔で言え。一欠片でも残したヤツ、一言一句同じセリフを言えなかったヤツ、とびきりの笑顔じゃなかったヤツは、強制帰還まで今まで以上に痛め付ける。今から、五分以内に全て行え。一分以内に全裸にならなかったヤツは、問答無用で痛め付け、さらに吐瀉物を土ごと掬って食わせる」
「あ……あ……。お……おい……お前達……」
セインが膝立ちになり、メンバーに声をかけた。
この流れは、『ギアインフィニティ』と同じだ。玉砕覚悟で立ち向かうか、逃げるかのどちらかだ。
とすれば、例の口上を言うタイミングだ。
「バカな奴隷のお前達に、素晴らしいご主人様が良いことを教えてやろう。『リトルヴィーナス』は生きている。なぜなら、彼女達は七百階、七百一階のクリア記録を大幅に更新し、ダブルAランクを確定させた実力の持ち主達だからだ。あのモンスターの群れを難なく突破した」
「っ……!」
「なぜ今そんなことを言うのか、バカな奴隷達ならそう思うだろ? 俺がなぜ『師匠』なのか、疑問に思わないか? そのダブルAランク確定パーティー、『リトルヴィーナス』から師匠と呼ばれているからだ。つまり、俺の方が遥かに強いんだよ。その俺に楯突こうって言うのか? これだけ実力差を見せつけられても、まだ俺の命令に素直に従わないのか? お前達のスキルなんて全く効かないんだよ!」
「あ……あ……」
バイスンが言っていたように、『ウィズペイン』も『ギアインフィニティ』には及ばないが、スキルの多様性がある。
その中には、やはり同じく視認デバフ系スキル所持者がいて、それこそ幻スキルを持つヤツもいる。
しかし、当然のことながら幻の師匠には効かない。
仮に魔法を撃たれても、そのまますり抜けさせればいい。こうなっては、その実体がどこにあるかなど、メンバー達には気にする余裕もないからだ。
とは言え、実際に戦闘になると面倒なので、天下の印籠のごとく口上を言っているというわけだ。
「はい、一分経った。誰も全裸になっていないな。キッツいキッツいお仕置き決定だ。普通の人間から見たら、可哀想だよなぁ。でも、仕方がないよな。俺のかわいいかわいい奴隷達なんだから。俺のお仕置きは、お前達にとってはご褒美なんだから。愛という名のご褒美をいっぱい受け取ってくれよな!」
『うわああああぁぁぁぁ!』
『ギアインフィニティ』と同じように、まるで化物から逃げ惑う『ウィズペイン』のメンバー達。
そして、ミレイによって時間が停止された。
「ガチでキツすぎるだろ……。レツの……師匠のご褒美……」
「あそこまで行ったら、もう悪魔でしょ……。もし、私がここに入っていたらと思うと……」
「レッくんじゃなくて、師匠が言ってるから、まだ冷静に見られるよね……」
「これでもヌルい方だよ。師匠は明らかに正義感から来る制裁目的だけど、コイツらは別の目的で人間の闇を奴隷に見せつけたようなものだからな。絶望のレベルが違う。しかも、手足の自由と反逆の意志を徹底的に奪われた閉鎖空間で」
俺は三人と話しながら、逃げ出そうとするメンバー達に打撃を加えつつ、中心に戻して行った。
また、スイにはこのような状況になった場合、別の幻を全員に見せてもらうことにしていたので、この停止解除後がベストタイミングだろうとも俺は考えていた。
さて、どうなるか……。
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