第四十三話……第三粛清開始
ガサッ!
「っ……! だ、誰だ、お前は!」
「今の話、本当か?」
師匠が木々の影から音を立てて姿を現すと、『ウィズペイン』の全員が彼に釘付けになった。
「……は? 何の話だ?」
「奴隷の話だ。俺も奴隷が欲しかったんだよ。よかったら、どういう目的でどうやって手に入れたのか聞かせてくれないか? 参考にしたいんだ。俺もストレス解消したい。めちゃくちゃにしたい」
「……いかれてるな。幻聴でも聞こえたんだろう。早くどっかに行け」
「……」
コイツらは、奴隷の存在を隠すことにも楽しみを覚えているどうしようもない奴らだ。パーティー外の誰かに教えれば、必ずそこから漏れると踏んでいるのだ。
しかし、穴はある。俺やスパイのように、パーティーの出入りは許しているから、さっきのレイルズの話ではないが、バレるかもしれないというスリルも楽しんでいる。
「お、お願いだ! お前達のパーティーに入ればいいのか? だったら入れてくれ! 命令ならなんでも聞くから! この通り! 奴隷を持つことが俺の夢なんだ!」
「……」
必死に土下座する師匠を見て、連中は顔を見合わせた。
そして、全員が頷き、セインに行く末を任せたようだ。
「それなら、誠意を行動で示してみろ。まずは裸になって、武器を隠し持っていないかどうか、お願いする相手に確認してもらうことぐらい考えてほしいものだな」
「そうだな、分かった!」
躊躇いもなくすぐに師匠が全裸になると、その鍛え抜かれた身体と逞しい股間のモノを見た女子達の全員が息を呑んだり、舌舐めずりをしたりしていた。
さらに、それは女子だけではなかった。
「ケツの穴も開いてじっくり見せろ」
「分かった!」
仰向けになって足を開き、全てを曝け出した師匠の痴態に、セインはニヤけながら目を輝かせている。
「このセインってヤツ、男好きなのか⁉️」
「正確には両刀使いだな。男十人の内、三人がそうだ」
「へぇ、あんまりそうは見えないけどね。端正な顔立ちはしてるけど、どちらかと言うと悪ガキに見えるし」
「それもしっかり隠してるってことなんだね」
俺達が話していると、セインがゆっくりと立ち上がって、メンバーの方を見た。
「俺はコイツを入れたいと思った。ただ、定員はいっぱいだ。奴隷を削るかこの中から削るか、どちらが良いか多数決を取る。奴隷を削るべきだと思う者!」
「……」
「この結果は珍しいな……。満場一致だ。増やしたばかりだが仕方がない。奴隷を削るか。そこで、一つ確認したい。自分が失踪者扱いされてもいいか? 俺達のパーティーは簡単にメンバーを加入できないんだ。失踪者が多すぎて」
「ああ、かまわない。夢を叶えられるなら、なんだっていい。ちなみに、どうやって増やしたんだ?」
「何か悩みを持っていそうで、かつ、奴隷の素質がありそうな奴を見つけて、相談相手になる。そのあと、部屋でゆっくり話を聞きたいと言って、奴隷部屋に監禁する。それだけだ。同じように、『こっち側』の人間を誘うこともあるが、今はほとんどないな。『リトルヴィーナス』の秀才ぐらいだが、手を焼いている」
「すごいな。その素質を見抜けるなんて。俺にはできない」
「別にスキルなんて必要ない。ただ、匂いで分かるんだよ。経験で分かるとでも言うべきか。あ、コイツはこっち側だな、コイツは奴隷側だなっていうのが。でも、そこにこだわっているわけでもない。役立たずで奴隷堕ち、なんてこれまでにもあったからな」
「今の俺はどっち側に見えるものなんだ?」
「正直に言うと、どっちにも見える。ただし、奴隷は奴隷でも、ストレス解消目的ではなく、性奴隷の素質の方だ。その境界が曖昧だからこそ、心を奪われる。『一体どうすればいいんだ、自分は!』と迷いながらも、流れに身を任せたくなる。だから、魅力だな。安心してくれ。誇っていいと思う」
「安心した。意外と優しいんだな」
「こっち側の素質を持つ人間には、な。志を同じくし、痛みを分かち合い、秘密を共有できる大切な仲間だから。俺達は、そういう愛で繋がっているんだ。だから、お前もそう思ってほしい。
そう言えば、名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
「……。俺は……師匠だ……」
「……え? 師匠?」
「ああ……。悪党に正しい教えを説き、時には鉄槌を下す『正義の使者ぅ』だ!」
そして、絶好のタイミングで、ミレイが時間を止めてくれた。
「おい、レツ! こういう場面で、微妙なダジャレなんていらないだろ!」
「ごめん……。流石の俺も、コイツらが愛で繋がってるとかいうシュールギャグを聞いたら、戸惑っちゃって……」
「レッくん、面白かったよ。ちょっとだけ和んだ!」
「確かに、二面性がすごいよね。だからこそ、奴隷をいじめて、より気持ち良くなれるんだろうけど」
それから俺達は、『ウィズペイン』のメンバー全員の腹を、挨拶代わりに蹴飛ばして行った。
「面白かった!」「つまらん……」
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