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第四十二話……無邪気な邪悪

「あ、『ウィズペイン』が転移口の方に向かってる!」

「予定通りだな。幻が切れて全員で様子を見に行ったか」


 ミレイに索敵してもらい、『ウィズペイン』が想定通りの動きをしていることを確認すると、俺達も予定通り、ヤツらの先回りをすることにした。

 ただし、この場合の先回りとは、ヤツらがモンスターの大群を見て、恐れ慄いて元の場所に戻ってくることを見越したものだ。

 こうすれば、俺達が幻を再度見せるために行ったり来たりして、余計な体力と時間を消費する必要がない。

 一方、俺達が先回りしなければ、ヤツらにとっては不測の事態だから、モンスターが少ない内にそのまま階をクリアする戦略を取るだろう。しかし、そうはさせないということだ。


 俺達は、ヤツらの位置を都度確認しながら、そこと記録装置の中間地点を目指し、歩みを進めた。

 ちなみに、転移口に『人間』はいなくなっていたとのことだ。


◆ ◇ ◇ ◇


「なぁ、『セイン』。そろそろ分かったか? どうして、『あんなこと』になっていたのか」

「ああ、大体見えてきた。『トップオブトップ』と『リトルヴィーナス』が長い間、交渉でもしていたんだろうな。『リトルヴィーナス』が、『トップオブトップ』とその取り巻きパーティーの連合軍を見て白旗を挙げた格好だ。

 モンスターは人間の大群に寄って来やすいし、モンスターもバカじゃないから、自分達の数が集まるまで待っていたら、予想以上に早く集まったというわけだ。当然、その場の全パーティーは即壊滅。

 こうなれば、漁夫の利は成り立たない。『ギアインフィニティ』よりも先にクリアを目指し、記録装置付近でしばらく様子見、ヤツらの消耗が激しければ討ち、そうでなければ退散する戦略を取ることが最良の選択肢となる。

 なあに、この七百五階なら、確か三時間程度でクリアしたはずだから、出遅れることはないはずだ」


 道中の単独モンスターを討伐したのだろう。そのあとに少し休憩していた『ウィズペイン』に、俺達が透明化したまま近づくと、俺の想定通り、リーダーのセインが全く見当外れの推察をしていて、笑ってしまった。


「流石、セインだね! でも、ムカつくよねー」

「くっそー! このぶつけようのない怒りを早くアイツらにぶつけてぇぜ!」

「うんうん。私、今日生理だから余計にイライラしてるんだよね。前みたいにおしっこ飲ませちゃお! めっちゃスッキリするんだよね。私のオススメ! 飛び散って汚れちゃったら、『お前のせいで汚れただろ!』って理不尽に怒れば、『す、すみません!』って言って床を舐め出すから、一石二鳥だよ!」

「おおー、いいなそれ。お手軽で。自分のうんこを食べさせたことはあったけど、俺の方もスッキリしたいなぁと思ったんだよな。しかも、回復魔法をかけないと死ぬから面倒なんだよ。でもそれ、奴隷がお前のこと好きになったからじゃね? 底知れぬ愛の鞭に気付いたんだよ、きっと」

「あっはっは! そうだよ、絶対! ご褒美になってるじゃん! なら、いっぱいご褒美あげないとね! 私達のために全身全霊を尽くしてくれる、かわいいかわいい奴隷ちゃん達に」


 そして、すぐにその邪悪さに真顔にさせられた。


「……。なぁ、レツ。コイツらに同じことをしてやりたいと思うのは、『悪』なのかな?」

「いや……。もしそうなら、『目には目を、歯には歯を』なんて言葉は存在しないし、死刑なんて存在しない。ただし、楽しめば完全に悪だ」

「……。無邪気な邪悪か……。本当に反吐が出そうになるね」

「……。うん……。ホントだね……。こんなにも人は……悪に染まれるんだね……」


 ミレイは静かに涙を流していた。見知らぬ奴隷に同情しているのだろう。本当に優しい子だ。


「大丈夫だ。今日で終わりにさせてやろう。不運な奴隷生活も、コイツらのクソご主人様生活も」

『了解!』


 それから俺達は、ヤツらに師匠の幻を見せるため、例のごとく準備をしていった。

「面白かった!」「つまらん……」

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最後に、本話をお読みいただき、ありがとうございました!


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