第四十一話……身勝手の代償、そして第二粛清完了
「がはっ……!」
「うぐっ……うううう……」
俺達、いや、整合性により師匠の『遠隔打撃』を受け、男は後ろに倒れ、女は腹を押さえてうずくまった。
「な……なんてことを……」
「ど、どっちがクズなのよぉぉ! 妊婦のお腹に攻撃するなんて!」
「……。やっぱりそうか。お前達は、都合が良い時だけ胎児を利用するんだな。同じ『物』だったはずだろ?」
「だからなんだと言うんだ! 何も変わっていないだろう!」
「自分のためならいいでしょ!」
「自分のため、利益のため、それ自体は否定しない。ただ、お前達はそのために他者を貶め、罠にハメ、利用している。だから、クズなんだ。
愛は恩。その側面はあるから否定しない。ただ、恩を売っても相手を貶める必要はない。お前達は、ハッキリ貶めてるんだよ。胎児の存在を否定し、文字通り潰し、亡き者にした。後輩を唆して、騙して、自分達の沼に引き摺り込んだ。
お前は親子の例を挙げたな。親が子どもを愛する時、子どもを沼に沈めようとするか? その頭を踏んづけて、自分が沈まないようにするか? ただし、無理心中をする時は、一緒に沼に沈もうとするだろう。
それは明らかな自己満足だが、自己満足にも八種類あるんだよ。それを相手のためと考えるかどうか、それを相手に押し付けるかどうか、それが実際に相手の利益不利益になるかどうか、その組み合わせで八種類。
自分の考えを押し付けた結果、相手の不利益になるのは、問答無用でクズの所業だ。親の場合は、クズ親。
お前達が堕胎する時、胎児のためではもちろんなく、胎児に全て押し付け、胎児の不利益、つまり存在を抹消する。後輩の場合、後輩のためと仮に考えたとしても、後輩を騙すことでその考えを押し付け、後輩の将来を台無しにした。それでもお前達は、それが胎児や後輩にとっての幸せのはずだと言うだろう。一理ある。ただし、物言えないことと自己責任を盾にして、利用してさえいなければな。そもそも、それは未来の本人にしか分からないことなんだよ。傲慢以外の何物でもない。
次にお前達は、『自分の物なんだから、他人が口出しするな』と言うだろう。傲慢なことは置いておいても、その通りだ。でも、物じゃないんだよ、子どもは、人は。
本当にすまないと思っているのならまだしも、全く悪びれもせずに、自分の快楽のために堕胎し、後輩を堕落させ、挙げ句の果てに、学園から与えられた権利まで主張して利用する。これがクズじゃなかったら、世の中のクズは大量殺人犯以外に存在しないだろ」
「なら、お前がその考えを押し付けて我々を殺そうとしているのは、一体なんなんだ? お前の論理で言うなら、傲慢、紛れもなくクズの所業だろ」
「解散、即ち改心すれば殺さないと言ったが、その様子だと聞く耳持たないようだな……。
それじゃあ、世間知らずで究極のバカどもであるお前達に教えてやるよ。これは『俺のため』ではない……。『世の中のため』なんだよ!」
そして再度、時間が止まり、今度は一発だけではなく、全員をボコボコにする作業に入った。
「『世の中のため』理論は、流石に強引じゃなかったか?」
「主語が突然大きくなったと感じるか? まぁ、それは否定しないけど、社会を壊す存在は社会から排除される。死刑が存在する理由だ。すでにコイツらは未成年を除いて社会の一員であり、少なくとも学園の生徒なんだから、属しているコミュニティがどういうものなのかを自覚してほしいね。もう、手遅れだけど」
「社会の秩序を乱すことで、社会で暮らす人々に不利益が被ってはいけないってことだよね」
「その原因は社会によって排除されるけど、その手段をどれだけ批判しても、どうしようもないもんね。でも、今回は生徒同士のいざこざにしておかないといけないから、今言ったことは全部、この人達には言えないと」
そして時が動き出すと、『ギアインフィニティ』の面々は、一斉に地面に倒れ込んだ。
「解散すると約束しろ。さもなくば、これがずっと続く。お前達が動けなくなれば、モンスターの餌になるだけだ。解散するか、ここで死ぬかの二択だ」
「う……うぅ……か……解ひゃんひたって、ほのあとどうふれふぁいいんだよぉ!」
『解散したって、そのあとどうすればいいんだよ!』と言っているのだろう。
「各メンバーはリーダーになれないし、二度と同じパーティーで組めなくなるから、後輩を含めたどこかのパーティーに入れてもらうか、自主退学するしかないな。言っておくが、お前達が騙した後輩パーティーには入るなよ?
分かったか? これが自己責任だ。他者を利用した者の末路だ。どうだ? 二度目の後悔は?」
「っ……! おい、おふぁえたひ! やるひかないんだほ!」
『おい、お前達! やるしかないんだぞ!』とメンバー達に言っているのだろう。
一か八か、全軍突撃をするしかないという選択は、この状況では正しいが、命よりも日常を取ったのは、コイツららしい思考だ。そういう意味では、本能でコイツらは生きていない。生存本能でもなく、繁殖本能でもなく、性欲に支配されている『色欲魔』だろう。
レイルズの煽りを聞いて、倒れていたメンバーが上半身をなんとか起こそうとしているが、体を鍛えていないのでヨロヨロだ。
「いいぞ。起き上がるまで待ってやる。その方が一度にたくさん色々な所に打撃を加えやすいからな」
「怯ふな! やるんだ! ほれひかふぃふぃはないんだ!」
俺の言葉に、ビクッと反応して立ち上がるのを止めたメンバーに対して、『怯むな! やるんだ! それしか道はないんだ!』と言って、全員が立ち上がるのを待つレイルズ。
「ああ、そうだ。お前達知ってるか? 『リトルヴィーナス』は、七百階と七百一階の記録を大幅更新して、ダブルAランク確定だそうだ」
「はぁ⁉️」
「しかし、この階は『トップオブトップ』の影響で状況が大きく変わっているらしく、一箇所にモンスターが大量に集まっている。その余波でモンスターの密度が変化、『リトルヴィーナス』さえ苦戦してしまったというわけだ」
「……」
「なぜこんな話をしているのかと思うだろ? バカなお前達は忘れているだろうから、説明してやる。俺がその『リトルヴィーナス』を助けた話をしたな。つまり、俺は『リトルヴィーナス』より遥かに強いってことだ。だから、『師匠』なんだよ。
実力を隠していたなんてことは漫画やアニメではよくある話だろ? お前達、いつトリプルAランク相当になったんだ? それとも、実力を隠しているのか?」
「あ……あ……う……うほだ……」
「おっと、すまん。俺はゴリラを相手にしていたか。いや、猿だった気がするぞ。交尾のことしか考えていないオス猿とメス猿。
もちろん、嘘じゃない。俺が嘘を言うように見えるか? つまり、解散しなければお前達を殺すっていう話も本当だ。聞いてみろよ、お得意の二択で。嘘を見破れるスキルを持ってるヤツがいるんだろ? それだけは俺に効くから。一流はそういった洞察力も持ち合わせているものだ」
「……。こ、こんなの……ゆふぇだ……」
「夢でもなんでもいいから、早くしてくれよ。もうそろそろパーティーに戻りたいから。それとも、それを狙った時間稼ぎか? なら、結構効果的だな。じゃあ、あと十秒で来なかったら、俺から行くから。はい、十、九、八……」
「う、うわああああぁぁぁぁ!」
「レ、レイルズ⁉️ に、逃げるのか⁉️ う……うわああああぁぁぁぁ!」
「ま、待ってええええぇぇぇぇ!」
レイルズが大声を上げてその場から逃げ出すと、他のメンバーもバラバラに逃げ出し始めた。
そこで、俺はミレイに合図して、時間を止めてもらった。
「これ、解散しないってことなのかな?」
「でも、もうトラウマレベルだからなぁ」
「レツ、どうするの?」
「さらにボコボコにしつつ、一ヶ所に固める。あとは、モンスター次第にしようか。生き残ってもいいように、師匠を召喚したんだし」
俺達が直接手を下した場合、それを相手から学園に報告されると、ランク判定の評価時に面倒なことになるため、どこにも存在しない師匠を幻として見せることにしたのだ。師匠がいないと、相手を皆殺しにする必要が出てくる。これは、『ウィズペイン』の時にもやるつもりだ。今のところは。
それから俺達は、『ギアインフィニティ』に更なる制裁を加え、その場を後にした。
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