第四話……ママは難しい
「さて、レツのママになるに当たって、私の経験からミレイに注意点を共有しておく」
「は、はい」
「さっきの無償の愛は難しいっていう話だけど、意識しては『いけない』ことがいくつかある。これを伝えることによって意識させてしまうんじゃないかと考えたこともあるけど、メイコの場合は大丈夫だったから、それに倣ってってことで」
「大丈夫かな……?」
「ミレイなら大丈夫だよ」
「じゃあ、一つ目。レツを異性として意識しないこと。
二つ目、スキルを発動させるためにレツを利用しないこと。
三つ目、特定の利益を得ようとしてレツを利用しないこと。
四つ目、快感を得ようとしてレツを利用しないこと。
二つ目以降は似てるけど、あえて細分化した。
ただし、ほんの少しだけなら、どれであっても意識してかまわないし、おっぱいを吸われる時に限り、無償の愛と両立できることもある」
「学園長が本当の親でも無理だって言っていたのは、三つ目の『特定の利益』のことでしょうか」
「半分正解。そもそも、子どもは自分のために産むものだ。たとえ、自国や持続可能な社会のためと言っても、自己満足を否定できない。母親にとっては、自分を癒してくれる存在であり、子どもが成長することによって達成感と満足感を得られる。自分が老いれば、介護も期待できる。
異性の場合は、『小さい彼氏』と認識している母親もいる。もちろん、無意識でも。それが男として十分に意識できるまで成長し、自分に最大限甘えてきたらどうなるか」
「母性が変化する可能性が高い……」
「それは何故か。自分にとってメリットしかないから。周囲の記憶はなく、世間体を気にする必要もない二人だけの世界になるんだからね。つまり、挙げた一つ一つが、四つ全てに関わってくることなんだよ」
「……」
「私は無理だった。『メガミバースト』のプロデュースを考えてしまった時点で。修正や再挑戦は、いくらでもできるらしいんだけどね。
しかも、四つ目の快感もヤバイ。スキルの発動自体が快感になるんだ。そして、快感を求めて、レツがいないと生きられない身体になる……かもしれないって話」
「……。ほ、本当に私にできるのかな……。だって、もうレッくんにレジェンドランクにしてもらおうと思ってるのに……」
「俺がさっき言った通り、一緒にレジェンドランクになろうとする意識が重要なんじゃないかな。あとはこれまで通り、俺のためを思っておっぱいをあげる気持ちとか。初心が大事だよ、きっと」
「軽く言ってるけど、『ママ』になるのは簡単じゃないんだよねぇ。吸ってる方は、まさに赤ちゃんみたいに何も考えてないだろうけどさ。頭を撫でてあげたり、赤ちゃん言葉を使う工夫だってするんだよ」
「そうだよ。ママの気持ちも考えるべきだよ」
「まぁ、おっしゃる通りでございます。でも、余計なことを考えたら、スキルを発動できないからな」
「そういう意味じゃないんだけど……。まぁ、いいや。おっぱいを吸われる時だけ達観できるなら、それに越したことはないからね。その意識の下、訓練をする選択肢もある。
話は以上。本当は話していない情報がまだいくつかあるんだけど、その時が来たらってことで。頭がパンクしちゃうからね」
「ナッちゃんとスーちゃんには、ここで話したことをどう説明すればいいですか?」
「普通に、一年半Dランクの前代未聞パーティーのリーダーに、学園側から解決策を提示したってことでいいんじゃないか? ミレイが納得するまで時間がかかったってことで」
「流石、レツ。それで行こう。レツがAランクパーティーを続々輩出したことを学園が評価したっていうのだけは話してかまわないから。それ以外は全て秘密。他の二人もママになった時は、それぞれに話していい」
「分かりま……。えぇ⁉️ 他の二人もママに⁉️」
「『メガミバースト』は、『全員』が俺のママだったんだよ。俺からお願いしたんだ。そうすれば、無傷生還を果たせる確率が圧倒的に高くなるからって。お互い誰も傷付いてほしくないのは当たり前だからさ」
「想定外のことが突然起きたら、取り返しが付かないこともあるかもしれないからね」
「二人が行方不明になったのは、その想定外が……?」
「いや、それは別の理由だ。情報が錯綜しているから、ここで話しても意味がないんだ」
「……。それじゃあ、あとは若い者同士で」
「学園長のイメージも変わりました。良い意味で」
「入学式の時は、めちゃくちゃ厳しそうな挨拶だったからな。静かにならなかったら、『お前達、幼稚園児か? 今すぐ死体にしてやろうか? そしたら喋りたくても喋れないだろう。代わりに、ここが死体焼却場になるが』とか言ってたし」
「あれを聞いてるのに、学園内でイキる連中は何者なんだろうね。『痴れ者』だろうけど」
「上には上がいるのに、見えているのに見えていないフリをしているということでしょうか」
「『洞窟のイドラ』、『井の中の蛙』にもなれてないんだよなぁ。『認知的不協和』か」
「二人みたいに優秀な生徒もいるのにねぇ。問題児だけど」
「あ、私もそうなんだ……」
「色々な意味で、な」
そして、俺とミレイは学園長室を出た。
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