第三十三話……傲慢さの代償
「おやおや、俺達の親分バイスンさん。みっともない姿、晒しちゃって。ぷっ! がーっはっはっは! 思った以上に笑えるわ! 流石、お笑い界の頂点。『トップオブバカ』のバイスンさんだ!」
「……。てめぇ、どういうことだ……。俺を裏切るつもりじゃねぇだろうなぁ!」
『トップオブトップ』に近づいてきた二つのパーティー、その内の子分リーダーがバイスンと話している。
「やっぱ、バカだわ。この状況でそんなこと聞くマヌケはお前だけだよ。モンスターの餌にしてやるから、感謝しておけ」
「ありがたいよな、バイスン。お前、いつも言ってたもんな。俺をボコボコにした時も、俺の仲間を殺した時も、『愛の鞭だからありがたく思え!』とか『これは救済だから死んでも感謝しておけ!』とか言ってよぉ……。
俺も本当にありがたく思ってるよ。ようやく、貰った愛を返せるんだからなぁ!」
恨みパーティーのリーダーもバイスンに恨み節を吐きに来た。つまり、完全に漁夫の利が成り立つ形になった。
普通の場合なら。
「ちょっと待て、お前達。バイスンとムリエには手を出すな。その二人は俺の獲物だ」
「アンタの実力は認めるよ。まさか、あっさりこんな展開になるなんてな。ただ、バイスンだけは俺達にくれねぇか? 直接痛い目に遭わせて殺さなきゃ気が済まねぇんだ」
恨みリーダーが当然の希望を言ってきた。
「じゃあ、俺達は殺さないから、まず俺達にやらせてくれ。それから、思う存分やってくれ。ただし、その間はここから離れてくれ」
「……。どうする?」
「……。なぜ離れる必要があるんだ? 別にここで見ていてもいいだろ?」
「お前達が死にたいのなら話は別だ。いいから、とっとと離れろ。最後の警告だ」
「……。おい……」
「ああ……」
二人のリーダーがニヤつきながら、顎をクイっと動かすと、そのパーティー全員が俺達を囲い始めた。
「くっくっく、流石にこの人数で一斉にかかられたら無理だろ? バイスン達は舐めプするからバカなんだよ」
「俺達は、お前みたいなスカしたヤツが大っ嫌いなんだよ!」
「……。あー、良かった。お前達がバカで。手間が省けたわ」
「ほざきやがれ!」
「やれぇ!」
その瞬間、時が止まった。前回から余裕で一分経過しているので、停止は五分間フルにできる。
「ありがとう、ミレイ。六十人だから、さっさとやって行かないとな」
「コイツらの方が舐めプだよな。なんで自らスキルを使えない状況を作るのか分からないぞ」
「バカだからとしか言えないよね。モンスターを相手にする時は現実感ないからとか?」
「実は優しい人達……はないんだよね……」
三人が話している間に、俺はまず最内の奴らの顔に、同じく剣の鞘で打撃を加え、その後は体を引っ張って適当に転がし、もう一つ外の輪へ。それを最外まで繰り返した。その過程で踏み台にした奴もいる。
ミレイ達にもソイツらを踏み台にして、円の外側に出てもらった。
なぜ三人に打撃を協力してもらわないかと言うと、ダメージが均一にならない可能性があり、あまりに軽傷だと、普通に動かれてしまう場合があることを嫌ったためだ。
そして時間が動き出し、転がった全員が呻き声を上げていた。
「ぐぁっ……! て、てめぇら、何マヌケなことやってやがるんだ!」
「お前もだろ?」
整合性さんは、コイツらが勢い余って転んだことにしたらしい。想定通りだ。
整合性さん、大好きだよ。
「次に襲いかかろうとしたら、バイスンみたいに歩けなくするからな」
そのバイスンは、忠実な女に回復魔法をかけられている。
「いいか、お前ら。なぜこんなにも実力差があるか教えてやるよ。お前らは知らないだろうがなぁ、俺達は昨日、七百階、七百一階の記録を大幅更新し、ダブルAランクの資格を得た。Bランク階層やAランク階層序盤を苦労してクリアしているお前らとは、天と地ほどの差があるんだよ」
「なっ……! そんなことあるわけねぇ! てめぇお得意の捏造だろ!」
「そうだ!」
「嘘も大概にしろ!」
「バイスン、いい加減、目を覚ませよ。それに、お前ら。バイスンを裏切ったんなら、そこに乗っかるなよ。いいか? 七百階のこれまでの記録は、『メガミバースト』の二時間二十一分だった。俺達は三十三分。何分の更新だ? お前らのバカな脳みそで考えてみろよ。答えは出してやらないけどな。俺はお前らのママじゃないから。
じゃあ次の問題。『トップオブトップ』、お前達は俺がいて何分だった? 腰を振ることだけしか考えてないお前らなら忘れただろうから、教えてやるよ。四時間二十九分。下から数えた方が早い記録だ。
つまり、お前らには一生無理。トリプルAランク確実とか言ってたよな? それもバカなお前達に教えてやろうか。一生無理だよ。俺なら恥ずかしくて冒険者辞めてるね。『学園一の変態』『リトルベビーナス』と呼ばれるより恥ずかしいよ。それを呼んでいる側なら、言わずもがな。
そんなパーティーを、徒党を組んで漁夫の利でしか壊滅させられないパーティー。しかも、遥かに格下なのにアウトローを気取ってイキりまくり。俺もご覧の通りイキってるけどさぁ、実力を伴わないイキりほど悲しいことはないよ。哀れだよなぁ。
まぁ、そんなことも気にならないほど面の皮が厚いから、こんなダサいことやってるんだろうけど、哀れだよなぁ。
ああ、悪い。哀れすぎて二回言っちゃったわ。でもやっぱり、哀れだよなぁ」
そして、ミレイ達にもアイコンタクトをした。
「レツ、そこまでにしてやれよ。哀れすぎるだろ?」
「哀れすぎて、こっちが泣きたくなっちゃう」
「う、うん……。かわいそうだよね……。ごめんね」
三人の追い打ちも決まったところで、俺の一分間の『時間稼ぎ』はとうに終わり、ミレイが再びフルで時間停止できるようになった。
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