第三十一話……決戦直前
「バイスンさん、ちっす! 八時半から見てますが、皆さん以外は転移してきてません!」
「おう、お疲れさん! そんじゃあ、俺のやり方、よく見とけよ!」
時間は午前九時四十五分。転移口を監視していた子分が、転移してきたバイスンに挨拶と報告をした。
それに対してバイスンは、子分を労うと、転移口手前の壁の方に数歩だけ歩き、ジャングル側にくるりと向いた。
そして、剣で突撃する構えを取った。
つまり、俺達が転移してきた瞬間、背後から俺だけを突き刺して仕留めるつもりだ。
もう転移してきてるけど。
「バ、バイスンさん⁉️ さ、流石すぎて涙が出てきました! あっはっはっは! こりゃあ、最高だ! バイスンさんには誰も敵わねぇ!」
「バイスン、面白すぎぃ! 味方のお腹捩れさせてどうするの!」
「兎を狩るのも全力よぉ。俺達は百獣の王なんかじゃねぇ。全生物のトップ、叡智の『人間』なんだからなぁ」
子分とムリエが冗談かと持ち上げても、バイスンは真面目な顔で返した。
「バイスンさん……。一生付いて行きやす!」
「まさに、『トップオブトップ』の名言だぁ……。バイスンのこと、もっと好きになった!」
「がっはっはっは! いいぜ! どんどん付いて来い!」
「……。このやり取りだけ見ると、結構好きなんだけどな」
俺は、バイスンの右斜め後ろで、変わらず透明状態で座りながら、三人に感想を言った。
「バイスンが親分気質なのは知ってるけど、めちゃくちゃなことに変わりはないからなぁ」
「なんか不思議な感覚だね。私達を陥れようとしている人達を間近で見て、冷静に感想を言い合ってるの」
「しかも、レツの解説のおかげで、子分の企みも分かってる上でね。神視点みたいで、茶番感あるよね」
すると、ジャングルから子分パーティーの一人がやって来て、子分リーダーに何かを耳打ちした。
「……分かった。持ち場に戻っていいぞ。バイスンさん、俺達から三百メートルほど離れた所に、それぞれ左右に分かれて二つのパーティーがこちらの様子を伺っているそうです。漁夫パーティーっすね」
「ああ? そんなの成り立つわけねぇだろ。この作戦はそのためでもあるんだからな。バカな奴らだぜ」
「流石、バイスン! 一石二鳥だ! 頭良いー!」
バカなのはお前達なんだけどな。それが幻とも知らずに。
漁夫パーティーがそんなに簡単に姿を見せるわけないだろ。ここでも牽制状態、均衡を保たせてるんだよ。
俺達は『トップオブトップ』が来る前に、『プラチナセレピーズ』を除く全てのパーティーに対して、簡単にはその場から動けないようにするため、遠くの他のパーティーの姿を見せる幻を仕込んでいったのだ。
さらにその奥に本物の人影がいた場合は、その手前に同じ風景の幻を見せれば、幻と本物で二重に見えることもない。
時間停止しながらの移動を基本にすると、幻の制限時間もそれほど消費されないから、最初の子分パーティーでも一時間以上、幻を見せることができる。もちろん、それまでに肩は付く。
「さて、そろそろ行こうか。ナツ、頼む」
「ああ!」
ナツが俺達を一人一人抱き締め、完全防御を付与した。
実際に使うことはない。念のためだ。
それから俺達は透明のまま、転移口の中央にミレイを除いてジャングル側に向かって立った。ミレイはバイスンの方を見て、俺はバイスンの希望通り、そのままヤツの正面に移動した。
バイスンの子分は、『トップオブトップ』と自分のパーティーの中間地点まで進んで行き、転移口の周辺はバイスンと数人のメンバー、さらにその周りを残りのメンバーで固めていた。
そして、午前十時五秒前。ついにその時が来た。
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