第三話……学園の秩序と粛清
「あ、もしかして、さっき言ってた学園内の秩序のこと?」
「話が早くて助かるねぇ。流石、座学成績はパーティー平均トップの『リトルヴィーナス』だ」
「う……。どうせ、座学成績『だけ』ですよ……」
「じゃあ、レツから説明を頼む。アンタがどこまで『把握』しているか聞いてみたいから」
「現時点でAランクパーティーは六つ。そのどれもがクズの集まりだ。ダテに追放され続けていたわけじゃなく、内部調査も兼ねていたってことだな。何も考えずに追放されていたら、ただのバカだし。
それらのパーティーを下から順番に全て粛清していく。なぜ下から順番なのかは、ダンジョン階層で出会うタイミングで実行するからだ。それ以外のタイミングでは、色々な意味で実行しづらい」
俺の説明を聞いて、ミレイが再度不安そうな表情を見せた。
「粛清って……殺しちゃうの?」
「しない。痛め付けはするかも。完膚なきまでに自信を喪失させる」
「それもどうかと思うけど、とりあえずホッとしたよ……」
「ただし、例外がある。例の悪の組織、俺達は『イービルレジェンド』、通称『イービル』と呼んでいるが、ソイツらと繋がっているメンバーがいた場合、拷問して情報を吐かせた上で殺す。さっきの連中は、ミレイの能力だけでは、安全に確保する時間も拷問する時間もなかったから、被害を最小限に抑える目的で、幹部だけをすぐに殺した」
「ちなみに、幹部と判断した根拠は? 本人が告白するほどマヌケじゃないだろ?」
バアちゃんが、尤もな質問をしてきた。
「銃をその場で具現化したから。機能と物理的な力まで精密に具現化できるスキルは貴重だ。平や中間管理職の器じゃない。単に現場が好きな奴もいるだろうけど、それなら部下を数人も連れて来ない。拘束具をいくらでも具現化すればいいんだから。それだけ重要な任務だったわけだ。具現化できるのは一つだけとか、幹部候補だったっていう可能性はあるけど、まぁ誤差だろう」
「なるほどね。続きをどうぞ」
「六つのパーティーの内、『イービル』と繋がっている可能性があるのは現時点で三つ。その内、決定的と言ってもいいパーティーが一つある。俺が最後に所属した『トップオブトップ』。少なくとも、そのリーダーであるバイスンと取り巻きの一人であるムリエが、おそらく『イービル』の信奉者だ。たまに学園外に二人でデートに行っているが、ついでに情報漏洩しているっていう手口だ。以前はもう一人、女を連れていたが、失踪者になり、おそらく売られた。
コイツらを最初のターゲットとする。丁度Aランクになったばかりで、『ボトムオブボトム』だからな。Bランクの頃から、態度だけは『トップオブトップ』だったが」
「三つか……。意外に多かったね。Bランク以下も普通にいそうだ」
「神代くん、すごい……。どうして分かったの?」
「アイツらはバカだから、分かりやすい所に特徴的な『悪魔』のタトゥーを入れていたんだよ。もちろん、『イービル』のシンボル。バイスンは左肩甲骨辺り、ムリエは右太腿付け根付近の内側」
「言うほど分かりやすい所かね?」
「そうなるように仕向けないと見えない所ですよね……。しかも、見たことをバレずに……」
「そもそも、『イービル』の中枢はタトゥーなんて入れないんだよ。下っ端だけに『入れさせる』んだ。それこそ、隠れ蓑にしたり、トカゲの尻尾切りができたりするように。そこに尤もな理由を付けて反論してきた有能だけを管理職以上に採用する。もちろん、スキルは必須。つまり、バイスン達は学園生徒とダンジョンの情報だけ吸い上げられて、いつか切り捨てられる未来が確実だった。その前に俺が殺すけど」
「まぁ、それを調べるだけでも相当の犠牲を払ったけどね。生徒の中には、失踪者だけでなく、薬物中毒者という名の被害者も少なくない」
「わ、私達、Aランクのパーティー全部から現在進行系で誘われてるけど、犯罪に加担していた可能性もあるってことだよね……」
「しかも、別のママが見つかっていた場合、俺に粛清されるのは確実で、トラウマになって冒険者を辞めていたかもしれない」
「結果オーライだよ」
「はははは……。良かった……のかな。実は、『リトルヴィーナス』の解散も考えていたんです。約一年半、ずっとDランクで、後輩にも簡単に追い抜かされて、『セトルDランク』とか『リトルDナス』とか『リトルベビーナス』とか言われてバカにされて、冒険者の才能なんて欠片もなかったから……。
『メガミバースト』の名前に少しでも傷を付けるぐらいなら、いっそ『リトルヴィーナス』はなかったことにして、それぞれが他のパーティーで再出発した方が良いんじゃないかって……。それも驕りなんだけどね……。私達にそんな価値なんてないことは分かってる。お飾りにしかならないんだから……」
ミレイは泣きそうだった。複雑な感情を抱いているに違いない。
「そんな悲しい顔をするなよ、ミレイ。俺は君の笑った顔も怒った顔も驚いた顔も呆れた顔も焦った顔も好きだけど、悲しむ顔だけは見たくない。そもそも、才能がなかったわけじゃないなんだ。みんな立派なスキルを持っているし、知識もある。その『使い方』の問題なんだ。
安心してくれ。俺が『リトルヴィーナス』を『覚醒した真の女神』、『リ・トゥルーヴィーナス』にするから。
いや、『俺達で』するんだ! 伝説になろう! なれるんだから!」
「神代くん……。ありがとう……。この短い時間だけで、あなたのイメージがガラッと変わっちゃった。やっぱり、ちゃんと向き合って話さないとダメだね……」
ミレイは、軽く笑って目の端に溜まった涙を拭いた。
「嬉し泣きの顔も好きになったよ」
「ふふふっ。やっぱり、私が期待していた言葉を言ってくれたね……。あの時も今も……。じゃあ、神代くんに……『レッくん』に期待してもいいよね?」
「おう! この『学園一の変態』に任せておけ!」
「その二つ名、気に入ってるんだ……。あははは! 面白いね!」
とびきりのかわいい笑顔を見せたミレイ。
やっぱり、これが一番好きな顔だ。
ママに会えただけではない。
女神に会えただけでもない。
一緒に歩いて行ける『大切な人』に出会えたのかもしれないという期待が、俺の頬を自然と緩ませた。
ママ……俺はもう、大丈夫だから……。
ありがとう……。大好きなママでいてくれて……。
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