第二十一話……自分と子どものために
「私だよ。全部、私の責任」
「……」
「しっかり『身体検査』をしておけば、今みたいな心配もしなくて済んだのに、当時の私は、システム構築のみを重視して、そこまで人を疑うことをしなかった。
『メガミバースト』みたいな善良な子達がいるんだから、世の中捨てたもんじゃないなと思って……。もちろん、彼女達のせいにするつもりはないけど。
さらに、学園の卒業生もノーマークだったから、『イービル』のトップや幹部の検討が付かなくなった。
天才スキル冒険者だと持て囃されて、若くして世界有数の冒険者学園のトップに抜擢されたけど、蓋を開けてみれば無能の極みだよ」
「……。バアちゃんは変わらないな。俺がいくら言っても自分を責め続けている。俺達のさっきの話、スキルで聞いてただろ? 試してみたいことがあるんだよ。バアちゃんに」
「『あの言葉』って言ってたね」
「ああ。まず前提として、バアちゃんは俺のこと嫌いか?」
「そんなわけないさ」
「じゃあ、好きか?」
「……。なんでそんなことを聞くんだい?」
「その前に、俺の質問に答えてくれよ。そもそも、それを今から説明するんだから」
「……。分からない……」
「怖いか?」
「っ……!」
「自分の気持ちや考えがどうなるか分からないから怖い。これは正しいか?」
「……。分からない……」
「じゃあ、これだけ。本当は俺のことを好きでいたい、愛したい。俺が勝手にそう思っていてもいいか?」
「……いいよ。でも、それだけは間違いなく言える。勝手じゃない」
「じゃあ、言ってくれ」
「……。私に言う資格なんてないでしょ。レツを見殺しにしようとした私に」
「間違いなく言えるんじゃないのかよ。支離滅裂だろ。だったら、俺が資格を与えてやるよ!」
「私だって……私だってレツを愛したいよ……。でも、無理なんだよ……。分かるでしょ……?」
「……。質問に答えてくれてありがとう、バアちゃん。でもさぁ、やっぱり衰えてるよ、思考が。人は経験を積めば積むほど、柔軟に考えられなくなる。新しい発想ができなくなる。成功体験、失敗体験に縛られるから。
でも、そう考えるとおかしくないか? 俺がおっぱいを吸っていた頃がピークのはずなのに、その時点でその衰えた思考になって、ママを辞めたなんて。
じゃあ、なぜか。自分のためではなく、俺のためを思って、ママを辞めたからだ。人として、子どものためを思うことこそが、最高の状態だと考えたんだ。それは半分正しい」
「……」
「バアちゃんは半分不老不死の体を手に入れた。それがずっと続けば、そのことが周囲に分かって、なぜそうなったのかを必ず調べられる。そして、その理由が俺であると分かってしまうと、俺の身が危険に晒されると考えたんだ。だから、自分から身を引いた。自分を理由にして。それがもう半分の間違っている方。
いや、当時は正しかった。でも、今では間違っている。その当時の考えを変えられないから衰えていると俺は言ったんだ」
「……」
「子どもは成長するんだよ。そして、当時から今に至るまで、俺には三人の女神がついていたし、ついている。どんな困難でも切り抜けられる能力を持つ愛すべき仲間がいて、俺は危機管理含めて、その能力を最大限に発揮できる。そんな俺達を誰が相手にできるんだよ。
つまり、子どものためと考えていたことが、もう子どものためではなくなっていた。余計な心配だったということだ。
そういう意味では、バアちゃんはずっと俺のママだったんだ。いつまで経っても俺を子ども扱いするママだ」
「確かにそうかもしれないね……。自分でもよく分からなかったんだ……。自分の気持ちが、感情が、考えが……。でも、具体的にどうすれば……」
「まず、子どもの心配をすることは頭からなくす。その心配と不安が、子どもを不安にさせるし、子どものためにもならないからだ」
「子どもの心配をしないママなんて、ママじゃないんじゃ……って言うのは、頭が固いのか……」
「ああ。別に心配するなとは言っていない。それは、あとから付いてくる、と言うとおかしいかもしれないが、まずは子どもを信じるんだよ。すくすく成長してね、してるねって。バアちゃんが最初にやっていた通りに」
「レツも言っていた通り、初心忘るべからずか……」
「次に、自分の心配事もなくさなければいけない。これがミソだ。自分よりも子どもの心配をすることを頭からなくすのは、このためだ。同じように、子どもがママの心配をしてしまうから。ママの態度に現れなくてもな。
実際そうでなくても、そう考えることが大事だと思う。それが回り回って子どものためになるんだ。同じようなことを言ってるんじゃないかと思うかもしれないが、微妙に違うんだよ。言わば、『自分のためが子どものため』。それが分かれば、お互い幸せになれる」
「そうか……。『自分のため』には、二種類あったってことか……。私が挙げた『意識してはいけない』四つのことは、私利私欲のことだけど、子どものためであれば、そこには当てはまらない。それを混同させてしまっていたのか」
「そう。例えば、『異性として意識してはいけない』は、正確ではなく、異性として意識した結果、子どもとして考えられず、子どものためにならないのであればダメだけど、ハッキリ意識したことによって、自分の不安な気持ちがサッパリ晴れて、それが子どものためになると考えられれば、それでいいんだ。それが各項目の両立に繋がる。この場合、結果論ではなく、過程の気持ちの話だな。つまり、気持ちの切り替えの天才じゃなくてもできることだ。
とは言え、『特定の利益』は普通に意識してはいけないと思う。例えば、子どものためと言って、スキルで大金を手に入れようとしてはダメ。でも、最高状態を保つことにより、いつでも健康で綺麗で、かわいいママを子どもに見せることができると考えられるなら問題ない。ただ、『そのためにレツのスキルを利用する』までハッキリと踏み込んではいけない。片足程度なら問題ない」
「『リトルヴィーナス』は、それが区別できていたから、異性としての愛情をレツに思い切り注げているわけか……。私よりずっと上手で、私が教えられた側だ。若さ故の、私の、ママの師匠だね」
「みんな試行錯誤だよ。正解があったりなかったりするのが子育てなんだから」
「ありがとう、レツ。本当にできた子だよ……。よし! レツ、私のおっぱいを吸って! 上手く行くまで、何度だって挑戦してみせる! 私もレツを思いっ切り愛したいから!」
「待ってたぜ、バアちゃん!」
俺は全裸のバアちゃんの胸に飛び込み、そのまま左のおっぱいを吸った。
「ん……久しぶりだよ、この感覚……。頭が空っぽになっちゃうぐらい気持ち良い……。はぁ……はぁ……ん……! でも……前とは違う……。とても清々しい気分だ……。レツのおかげだね、ありがとう。私のかわいい大好きなレツ……」
もう何も心配する必要はない。
バアちゃんが俺を、俺がバアちゃんを……。
お互いの愛が心配も不安も消し去るのだから……。
俺の頭を撫でるバアちゃんと撫でられる俺の目からは、離れ離れだった親子の長い時間と距離を繋ぐように、一筋の涙が溢れていた。
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