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第十話……宣戦布告

「ふぅぅぅ……。てめぇら! 次こそはしっかりやれよ! さもないと、ぶっ殺すぞ!」 

「は、はいっ!」

「……」


 こちらから様子を見ていると、バイスンが俺達に気付いたようだ。


「あ? おい……『リトルベビー』はともかく、なんでてめぇがいるんだよ。変態くんよぉ」

「……。みんな、行こうぜ」

「あ、ああ……」


「待ちやがれ! ナツ、どういうことだ!」

「バイスンは、ナツにご執心だったな。一見、相性は良さそうだが、生憎、お前みたいなタイプは大嫌いなんだよ」

「いいのかよ、そんな喧嘩を売るようなことして。さっきと言ってることが……。私でさえ、適当にあしらってたのに」


 ナツが俺に小声で話しかけている間、バイスン達が距離を詰めてきた。

 周囲には他のパーティーもいて、こちらの様子を気にしている。


「『俺が男として、お前ら全員に女の幸せを教えてやる』って言ったら、『リトルヴィーナスには絶対に男を入れないし、近づかせない』って言ってたよなぁ!」

「……悪いな。考えが変わった。女にはよくあることだろ? お前が言っていたセリフだ。女を穴としか見ていないクズのお前が」

「俺は彼女達をDランクから必ず脱却させるって約束したんだ。お前達がBランクで足踏みしていたのを助けたようにな。これまでの『リトルヴィーナス』は、一階クリアできれば調子が良かった方だったらしいんだけど、今日は四階分もクリアしたんだぜ。

 お前達はどうだった? 七百五階。昨日も一昨日も七百五階だったよな? 俺を除け者にして」


「だーっはっはっは! 何をDランク階層ごときで調子に乗ってるんだよ! わ、笑わせるなよ! あーはっはっはっ……! は、腹いてー! はぁ……はぁ……はぁぁぁぁ……おい、ムリエ。説明してやれよ。このマヌケ無能どもに」

「……」


 バイスンの命令で、パーティー内新人教育係のムリエが前に出た。


「はぁ……。変態野郎には、とっくに教えたんだけどね。私のおっぱいのことしか考えてなかったバカだから、もう忘れちゃったんだ?

 Aランク階層は、そんな子ども向け階層と違って、一歩間違えば死に至る悪魔の巣窟。特に、七百階層前半は、攻略情報が十分にあっても時間がかかりまくるって有名。二十九人大所帯の私達なら、特に慎重に進まないと簡単にメンバーを失う。

 昔は少人数パーティーだったから、進みやすくてクリアも早かったらしいけど、時代も状況も違うからね。そこをすっ飛ばして別パーティーの金魚の糞になっていた変態糞ハシゴくんには、実感が湧かないだろうけど」

「それは言い訳だな。お前達はメンバーを失うことなんか、どうだっていいと思っていたはずだろ。『役立たずは死ね!』と言って、負傷して動けなくなった奴を回復魔法もかけずに平気で殺して、『モンスターに殺されました』と虚偽報告していたような連中なんだから」

「捏造も大概にしろよ、変態。この場で殺されてぇのか?」


「やっぱり、私の言った通りじゃん。コイツ、ダンジョン内でやかましすぎだったから、モンスターの餌にしておけば良かったんだよ」

「それはそうだろ。モンスターが迫っていることに全く気が付かないマヌケ集団なんだから。七百三階までは俺の警告でどうにかなってたけど、自分達の実力を勘違いしてリストラだもんな。他のAランクパーティーでも、そこまでじゃなかったのに。バカの極み、『トップオブバカ』だよ」

「……。おい、変態。明日は何階を攻略する予定なんだ? 負け犬の超遠吠えなんて聞こえねぇからよぉ」


 やっぱりバカだわ、コイツ。俺の誘いにまんまと乗ってきた。


 しかし、ここはあえて斜め上に少し『外す』。


「朝十時から七百五階。『トップオブトップ』の代わりに、『リトルヴィーナス』がクリアしてやるよ」

「……」


 俺の堂々宣言に、バイスン達はお互いの顔を見合わせ、少しの間を置いて爆笑した。

 他のパーティーも笑いを堪えきれずに爆笑していた。


「お、おい……やめろ……は、腹痛すぎ……ひぃぃぃぃ……! そうか、それが作戦か! 俺達の腹を捩れさせるっていう……」

「や、やめてバイスン……これ以上笑わせないで……死ぬぅぅ……笑い死ぬぅぅぅぅ……!」

「そんなに面白かったか? 彼女達には、俺の作戦を使っての戦い方にも慣れてもらったし、Aランク階層もやることやって行けば、そんなに変わらないだろうし」


「追い打ち来たぁぁぁぁ!」

「バイスン! パーティーを崩壊させる気⁉️ こんなに笑わせてくれるなら、お笑い担当で残しておけば良かったね! いや、ダメだ! みんな入院しちゃう! 殺戮ショーが始まっちゃうぅぅぅぅ!」

「……」


「ムリエ! お前も良いセンスしてるな! 流石、俺の女だ!」

「あ、そうだ! 今日は早く戻りたかったんだ。バイスンといっぱいエッチしたいから! ねぇ、早く戻ろうよー。明日は朝から忙しいでしょ?」


「よっしゃ! 今日はご褒美にいつもより長く時間を取ってやる。他のヤツらも、ムリエみたいに俺を楽しませればご褒美をやるから、覚えておけよ!」

『はーい』


 バイスンが振り返ってパーティー内の他のハーレム要員に声をかけると、みんな笑顔で手を挙げて返事をした。


 バイスンは毎日代わる代わる女を抱いており、パーティー内の男が成果を上げた場合は、その内の適当な女を当てがってくれるので、それ目当てで加入する者も少なくない。

 逆に女は、ほとんど股だけ開いていればよく、バイスンの『オス』らしさや、麻薬を使用した上での男達との複数プレイ目的、つまり怠惰と快楽目当てで加入する。

 もちろん、麻薬は世界的には違法なので、『イービル』から仕入れた物に間違いないだろうが、学園はこのパーティーをずっと放置してきたのが実情だ。


 当然、俺は女を当てがわれたことはないが、ナツがもし、『トップオブトップ』に引き抜かれていたらと考えると、ゾッとする。


 ……。


 それだけ、俺にとってナツが『大切な人』になったということか……。


「それじゃあ、醜い日系人の面汚しパーティー、『リトルベビーナス』がかわいい赤ん坊のまま無事であることを祈ってるぜ。俺の『エクスカリバー』で貫くまで死ぬんじゃねぇぞ!」

「あ~ん。バイスンの太くて大きいガチガチの剣、早く欲しいよぉ。いっぱい、イかせてほしいよぉ~」

「……」


 そして、『トップオブトップ』は爆笑しながら去って行った。

「面白かった!」「つまらん……」

「続きが気になる!」「次回作に期待!」


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最後に、本話をお読みいただき、ありがとうございました!


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