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魔法階梯  作者: 雨ヒヨコ
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1話 始まり

夜明け前の街。

深い静けさに包まれる中、一人の少年が壁と向かい合っていた。


「……まだまだだな。もう少し。」


そう呟いた声に反応するように、地面が波打ち、土から生まれた人形が踊り出す。

少年――ルシアンは、その動きに合わせて手を軽く動かしていた。


その魔法は、岩属性に分類される通常の魔法とは明らかに異質。

洗練されすぎた動作と構造。誰が見ても“只者ではない”と分かる精度だった。



「《独創》 土創成魔法・レベル15《土人形の踊り》」



しかし、ルシアンは満足していなかった。


「……やっぱり、まだ精度が悪いな。」


小さく呟くと、彼は再び詠唱を始める――

その背後から、小さな足音が近づいてきた。


「ルー、おはよ〜。」


大きなあくびとともに姿を現したのは、隣人で幼なじみの少女――アイ。

寝癖のついた髪をそのままに、早朝の空気に飛び込んできた。


「こんな朝早くから魔法の練習?……もしかして、不安とか?」


「不安か……そういうわけじゃない。と思うけどな。」


「絶対気にしてるじゃん、ふふっ。まあ無理もないよね。

だって今年の入試、あの王子様とお姫様も一緒なんでしょ?」


その言葉に、ルシアンはふと問い返す。


「……アイはどうなんだ?ついてこれるか?」


アイはニコッと笑い、迷いのない声で言った。


「なに言ってるの。私とルーはずっと一緒だよ。」


「……フフッ。」


二人は、まだぼんやりと白む空の下で静かに笑った。


「ねぇ、ルー。さっきの見せてよ。私の好きなやつ。」


「……一回だけだぞ。」


ルシアンは目を閉じ、前に手を差し出す。

すると地面が柔らかく脈動し、複雑な魔法陣が刻まれるように、土人形が次々と生成される。


「《独創》 土創成魔法・レベル15《土人形の踊り》」




舞う土人形たち。まるで命を宿しているかのように、柔らかく、しなやかに舞い踊る。

アイは目を輝かせながら、その光景に見入っていた。


「やっぱりルーって、天才だよ。

今年の首席入学は王子様でもお姫様でもなく――ルーに決まりだね。」


その言葉に、ルシアンは魔法を止め、静かに微笑むだけだった。


数日後に迫る、国立学園の入学試験――

それが、世界に名を残す“伝説”の始まりとなることを、

このときの二人は、まだ知る由もなかった。



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― 新着の感想 ―
これからが楽しみになるような内容ですごく引き込まれました。 会話以外での表現がすごいと思いました。
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